いかに仕事を効率化し、早く帰るか――政府も提唱する「働き方改革」を引き合いにだすまでもなく、誰もが意識していることだろう。生産性の向上を図る上で、人間の業務内容をコンピュータに代行させるAI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)に注目が集まっている。
しかし、AIやRPAをうまく活用している企業もあれば、社内にノウハウがなかったり、意思疎通がうまくできなかったりしてプロジェクトが失敗に終わるケースも少なくない(関連記事)。
AIが人間の仕事を奪うといわれる一方で、PCの入力作業やメール送信といった定型業務を自動化するRPAは、銀行や生命保険会社などが伝票や請求書データの入力などに使っている。
そんな中、「約40人の経理部署でRPAを導入し、年間で8500時間もの工数削減に成功した」と話すのは、リクルートテクノロジーズの赤塚諭さん(ITエンジニアリング本部 データイノベーション推進部 データマネジメントグループ)。
経理の現場から「業務の負荷を軽減できないか」と相談を受け、リクルートグループ約40社の経理業務を担う部署で2016年10月にRPAを導入。これまで人間が行っていた膨大な量の事務作業をロボットに代行させることで作業時間は減り、生産性の高い業務に時間を割けるようになったという。
赤塚さんは「導入自体はスムーズだった」と振り返るが、ツールの選定や業務側とのコミュニケーションは慎重に進めた。
「RPAは魔法のツールじゃない」と念を押す赤塚さんは、ロボットに向いている業務を把握することが大事と強調する。リクルートはロボットにどんな業務を代行させているのか。
赤塚さんが所属するリクルートテクノロジーズは、ITを活用してリクルートグループ全体の業務を効率化する縁の下の力持ちのような存在。グループ全体の成長を考える上で、バックオフィスの効率化は欠かせない。
リクルートでは、顧客からの入金が月数十万件ほどあり、顧客からの銀行振り込みを社内の会計システムの債権とぶつける「入金の消し込み」に追われていた。これを自動化することで、現場の負担を大きく減らせたという。税金の計算など決算処理に関わる業務も任せている。
RPAツールは、複数のソフトウェアやシステムを連携できる「UiPath」(ユーアイパス)を利用。入金の消し込みはさまざまなシステムにまたがってチェックする必要があったが、これをボタン1つで一括判定できるようにした。
ロボットと相性が良いのは「マニュアル化できるルーティン業務」(赤塚さん)で、入金の消し込みや税金計算などはその典型例。さらに、「ロボットを疑うと意味がないので、疑いの余地がないものが対象業務になる」と続けた。
また、ツール導入や保守運用などの費用対効果を考えると、ロボットに代替させる業務にはある程度の規模感が求められる。リクルートでは「年間300時間行う業務で、2~3年間は内容が変わらないもの」を条件にした。
会社で新しいITツールを大規模に導入するにあたり、現場の混乱はなかったのか。
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