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「折れないメンタル」をつくるために取り入れたい4つの方法

「折れないメンタル」をつくるために取り入れたい4つの方法
Photo: 印南敦史

人間は誰しも弱い部分を持ち合わせているものなのだから、「自分は精神的に強い」と自信を持って言える人はひと握り。しかも、やり方次第で、自分の心を強くすることは可能。

そう断言するのは、『ビジネスパーソンのための折れないメンタルのつくり方』(相場 聖著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者。5万人以上のビジネスパーソンを支援してきた実績を持つというメンタルトレーナーです。

心は、自分で強くすることができます。心の強さ、すなわち「メンタルフルネス」と言われるものは、自分の思考をちょっと変えたり、自分のちょっとした行動次第で、強くすることが可能なのです。もちろん先天的な心の強さというものはありますが、後天的に自分の心の強さを変えていくことはできるのです。(「はじめに」より)

重要なポイントは、「心の強さ(メンタルフルネス)と仕事のパフォーマンスは、大きく関係している」ということ。経営者にしても一般社員にしても、仕事で高い成果を挙げているハイパフォーマンスな人々は「メンタルフルネス度が高い」、すなわち折れないメンタルを持っているというのです。

メンタルフルネス度が高いとは、「自分の感情を上手にコントロールしている」「大きなストレスがあっても耐えられる」「物事を柔軟にとらえ、柔軟に対応している」「自分自身でモチベーションを意図的に高めることができている」ということ。加えて、「自分なりのセルフコントロール術を持ち合わせている」といったことも重要だといいます。

そこで本書において著者は、次の3つのメリットを提供したいと考えているのだとか。

①自分の心を強くするヒントをつかむ

②自分なりのメンタルフル(心の強さを高めるための方法)を見つける

③心を強くすることにより、仕事のパフォーマンスを高める

(「はじめに」より)

紹介されているのは、折れないメンタルをつくるためのさまざまな方法。そして、最も意識したのは、「誰でも日常生活で実践できるような方法」であることだそうです。

第2部「実践編」Part 4「折れないメンタルをつくる27の方法」のなかから、4つをピックアップしてみましょう。

物事のとらえ方を変える「ビリーフチェンジ」

仕事でミスをしたとき、「なんで失敗しちゃったんだろう」「あのとき、こうしておけばよかった」「俺はダメなやつだ」「終わった…」などと感じる人がいるかもしれません。しかしその一方には、「過ぎてしまったことは仕方ない。次にミスをしないようにがんばろう」「勉強になった。これも自分にとって必要な学びだったんだ」と考える人もいます。

これは、すなわち思考の違い。自分のなかにある「コア・ビリーフ(中核の信念)」といわれるものの違いなのだそうです。コア・ビリーフとは、「考え方の癖」。つまり、自分の心の深い部分にある“自分のなかの判断基準”のようなもの。

コア・ビリーフがポジティブな人は、ほとんどのことに対してポジティブな見方をするということ。そして逆にコア・ビリーフがネガティブな人は、物事をネガティブに見がちであるわけです。そこで著者は、コア・ビリーフをポジティブに変えていくための方法である「ビリーフチェンジ」を紹介しています。

①紙の中央に縦に1本線を引く

②その日の終わりに、1日の出来事を紙の左側に書き出す(細かくなくてOK)

③その中で、自分にとって少しでもネガティブな体験・出来事があれば○をする

④その○をした出来事の右側に、ポジティブなとらえ方を考え書き出す

(86ページより)

自分の心を変えたり、強く保っていくためには、少なくとも最初のうちは日々のトレーニングが必要。そして、日々繰り返すことによって習慣化できれば、やがて紙に書き出す必要はなくなってくるのだとか。自然と、ポジティブな考えが頭のなかに浮かんでくるようになるというのです。

大切なのは、「苦しい」「悲しい」「つらい」「うれしい」というような自分の感情とまず向き合うこと。そのうえで、さまざまな視点によって物事をとらえてみるべきだというのです。しかし、ネガティブな考え方を無理やりポジティブに変えたり、消し去ろうとする必要はなし。ネガティブな見方だけでなく、「いろいろな視点から物事をとらえられるようになる」ことが重要であるわけです。(86ページより)

ストレスを顕在化させる「ストレス抽出法」

人は、自分の抱える悩みや不安感を客観的にとらえることができたときに初めて、そのひとつひとつの問題に向き合えるもの。問題に向き合えて初めて、そこから解決への道を探っていくことができるわけです。

逆に言えば、悩みがあるのにそのことから目を背けていると、いつまでたっても解決しないということになります。そこで、そんなときに効果的なのが、ストレスを顕在化させる「ストレス抽出法」なのだそうです。

① 自分のストレスをすべて書き出す

悩んでいること、不安なこと、モヤモヤすること、嫌だと思っていること、恐ろしいことなど、小さなこともすべて書いてください。

② それらをカテゴリー分けする

それぞれに「○○ストレス」などと、カテゴリー名をつけてみましょう。

③ 自分の「ストレス傾向」を客観的に見つめる

たとえば、「こうやって出してみると、A社の仕事に関するストレスが多いな」とか、「上司のBさんに関するストレスがほとんどだな」とか、自分の傾向が見えてきます。

(90ページより)

もちろん、自分が抱えるストレスを顕在化し、傾向を把握したからといって、問題がいきなり解決するわけではないでしょう。しかし自分の心のうちにあるものを顕在化し、傾向を見ることによって、「心のなかの整理」が可能に。「自分はどんなことに悩んでいるのか」「それはどんなものなのか」「どんな傾向があるのか」などがわかるだけでも、心が軽くなるということ。

心を強く保つためには、自分自身のことを把握する「自己認識・自己理解」が重要な要素になるのだといいます。それはつまり、「現状把握」。「ストレス抽出法」によって心のなか(頭のなか)に抱えている形の見えない悩み・ストレスを言語化して書き出すことにより、自らの現状把握を強化できるわけです。

なお「ストレス抽出法」は、半年や1年に1回など、自分の心の棚卸しのつもりで定期的に行ってみるとさらによいそうです。(90ページより)

考えの中心軸を持つ「SFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)」

人は悩んだり、迷ったりしたとき、自分にとっての判断基準、すなわち自分なりの「軸」があると解決に向かいやすいもの。とはいえ、いきなりそれを持つのは簡単なことではありません。そこで著者は、シンプルに取り入れることのできる、心理療法のひとつをベースにした「軸」となる考え方を紹介しています。

この軸を成り立たせているのは、以下の3つのシンプルなルール。

ルール1:もしうまくいっていないのなら、(なんでもいいから)違うことをせよ

ルール2:もしうまくいっているのなら、変えようとするな

ルール3:もし一度うまくいったのなら、またそれをせよ

(94ページより)

著者によればこれは、「SFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)」という心理療法の中心哲学というべき考え方。問題に焦点を当てる「問題思考」ではなく、「解決思考」といわれているのだとか。そして著者は普段、ルール2とルール3をさらにシンプルにカスタマイズし、次のように紹介しているのだそうです。

ルール1:もしうまくいっていないのなら、(なんでもいいから)違うことをせよ

ルール2:もし一度やってうまくいったのなら、またそれをせよ

ルール3:もしうまくいっているのであれば、さらによい方法を試してみよ

(95ページより)

現状にとどまったままの考えでいると、いつかそれがうまくいかなくなることもあるもの。しかし、常に「さらに」よい方法を探っていれば、そこから前進するエネルギーが生まれます。だからこそ、自分にとってのなんらかの「軸」を持つことは、悩んだとき、行き詰まったときの助けになるというのです。(94ページより)

よいサイクルを自分でつくる「ルーティーン法」

メンタルトレーニングでよく出てくる「ルーティーン」とは、自分のモチベーションを上げたり、気持ちの切り替えができるような行動を、なにかの前に必ず行うというサイクルをつくること。著者はここで、一般のビジネスパーソンでも簡単に行うことができる「ルーティーン」を紹介しています。

① 自分が元気になったり、やる気が出たり、うれしくなったりすることを考えて、すべて書き出す。小さなことでOK

例:上司にほめられること/仕事中のコーヒーブレイク/おいしいものを食べること/愛車をいじること/音楽を聴くこと

② それを、「仕事」と「プライベート」で分類する

③ さらに、「自分1人ではどうにもならないこと」と「自分1人でどうにかなること」で分類する

例:上司にほめられること→「自分ではどうにもならないこと」

仕事中のコーヒーブレイク/おいしいものを食べること/愛車をいじること/音楽を聴くこと→「自分1人でどうにかなること」

④「自分1人でどうにかなること」の中で、仕事とプライベートのそれぞれで実践することを決め、その行動を「定期的に」かつ「意識的に」行う

(98ページより)

つまりは自分にとって心地よいこと、元気になれることを見つけ、意識して、定期的に実践していくということ。心地よくなれること、元気になれることを、自分の日常生活の一部に組み込んでしまうということです。これらをサイクル化していけば、心地よい状態を自分で意識的につくることができるというわけです。(98ページより)




本書の目的は、広く「ストレスをコントロールする」という考え方に触れること。そして著者は、なにかひとつでも自分に合いそうな方法を見つけて実践し、習慣にすることを勧めています。

最初は小さな変化だったとしても、それがやがて自分自身にとっての大きな力になるはずだからです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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