1ヵ月後に予定されている自民党総裁選に、石破茂氏が出馬すると表明した。そのための準備として、自らの主張を伝えるサイトも立ち上げている(http://www.ishiba.com/sousaisen/)。なかなかの出来映えであり、石破氏の意気込みが伝わってくる。
総裁選に出るにあたって、石破氏は特に安倍総理の憲法発言を牽制している。安倍総理が、「次の国会に自民党の憲法改正案を提出できるように、党内議論を加速させたい」と発言したのに対して、石破氏は「ありえない」「スケジュールありきで、民主主義の現場を理解していないとしか思えない」と述べた。
これをみると、まるで護憲派の一部野党のような反論なのが気になってしまう。石破氏は2012年の自民党の改憲草案作りに関わっているが、いつまで「議論」を続けるのか、あるいは、実は議論をしたくないのだろうか、と思ってしまう。
安倍総理は、憲法について述べるうえで、国民投票などには一切言及していない。同じ与党の公明党は憲法改正に慎重なので、来年の参院選までは触れたくないだろう。当然、安倍総理もそれを承知しているからこそ、「とりあえずは自民党内の議論を進めたい」と言っているわけだ。6年前の改憲草案作りに関わりながら、いまさら「議論が必要」というとは、ひょっとしたら石破氏は「隠れ護憲派」なのではないか、とさえ疑ってしまう。
憲法改正について、「9条2項削除」という伝統的保守案を公言している石破氏なら、「9条2項堅持、3項で自衛隊明記」という安倍総理の改憲案と、正々堂々と議論してはどうか。
石破氏の言い方は、一部野党の護憲派には好都合だが、憲法改正を党是とする自民党の党員には響かないのではないか。……と思っていたら、27日発売の「週刊プレイボーイ」誌上において、石破氏は、「I am not ABE」で有名な古賀茂明氏と対談するようだ。これは、どのような立場の人とも対話するというメッセージだろうが、これも自民党員の眼にはどのように見えるだろうか。
政治家が多種多様な人と対話するのはもちろん重要なことだが、一方で、政治家の行動にはいかなる場合でも政治的なメッセージが伴うわけだ。まさか石橋が、古賀氏と「反安倍」で同調するわけにもいかないだろう。
石破氏が自らのサイトで、今回の総裁選について、「正直、公正、石破茂」というキャッチフレーズを掲げているのは、穿った見方をするときついギャグに見えてくる。まず、安倍総理も「正直、公平」である。筆者は小泉政権以来、そうでないと思ったことはない。
たしかに、石破氏は外見も内面も「正直」なのだろう。石破氏の周辺には筆者の知り合いも多い。そうした人たちが石破氏に、筆者から経済のレクを受けたらどうかと言ってくれている。しかし、正直者の石破氏は、筆者からのレクによって、財政緊縮路線から脱してしまうと、旧来の財務省関係者などを裏切ってしまうことを恐れるのか、なかなか筆者との対面機会は実現しなかった。
いまでも、石破氏は「緊縮路線」を堅持しているようだ。本コラム読者であれば周知であろうが、筆者が国会の場で「財政再建はすでに終わってる」という陳述をしたときも、それについて石破氏は批判的であった。
要するに石破氏は、「消費税率10%では不十分であり、さらなる引き上げが必要だ」と考えているようだ。石破氏の経済政策については、1年前の7月10日付け本コラム「「安倍降ろし」で石破総理が誕生すれば、日本経済は大失速間違いナシ ~失われた20年の再来を予言しておこう」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)を参照してほしい。