学校で教えない経済学

脱現金社会の影~プライバシーや財産保全にリスクも

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 政府が現金を使わない決済の比率を2025年までに40%に高める目標を掲げ、日本経済のキャッシュレス(脱現金)化を後押ししています。6月に閣議決定した18年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、中小企業を対象に「IT・決済端末の導入やポイント制・キャッシュレス決済普及を促進する」と明記。経済産業省は8月末にまとめる19年度予算案の概算要求までに、制度や予算規模などの詳細を詰める予定です。

 主要国でクレジットカードや電子マネーなどで支払う非現金決済の比率が5割を超える中、日本は2割にとどまるそうです。日本は「キャッシュレス後進国」だという表現もメディアで目立ってきました。

 先行する北欧諸国などを手本に、キャッシュレス化を推進しようとの声が高まっているのは日本だけではありません。国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストの経験もある米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は著書『現金の呪い』などで、高額紙幣の廃止を唱えます。

 キャッシュレスはたしかに便利です。1枚のカードで電車や地下鉄、バスに乗れるだけでなく、飲食店やコンビニエンスストアで支払いもできるのは重宝しますし、財布が小銭で重くならないのも助かります。市場経済の自然な流れとしてキャッシュレス化が広がるのであれば、大いに歓迎です。

強引にキャッシュレス化を進めるのは注意が必要

 ただし、政府の後押しで強引にキャッシュレス化を進めることには注意が必要です。キャッシュレスはメリットだけでなく、リスクもはらむからです。

 キャッシュレスで個人がさらされるおもなリスクには次のようなものがあります。

 第1にプライバシー侵害の恐れです。キャッシュレス決済で現在主流のクレジットカードなどは現金と違い、第三者の仲介を必要とするため、取引内容を特定される恐れがあります。最近注目を集める仮想通貨も、取引量の多いビットコインなどに比べ匿名性が高いとされるモネロ、ダッシュ、ジーキャッシュなどは犯罪に悪用されかねないと金融庁が問題視。一般の個人は利用しにくい面があります。

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