ゲームを遊んで実況する。
言葉にするとただこれだけのことなのに、続けていくのは難しい。それはきっとゲーム実況という文化が世に認知され広がったからだろう。
手を出しやすいからこそ、自分だけの強みを考えて思い悩む。そんな数多くの配信者たちがしのぎを削るゲーム実況界隈で、NEOGEO miniとともに絶叫スタイルで駆け抜けるアマリリス組のみるくぷりんについて本記事では語りたいと思う。
みるくぷりんとは?
みるくぷりんとは、個性的で可憐な集団を目指すアマリリス組に所属するVtuberである。プロフィールは下の画像を参考にして欲しい。
一人称が「ウチ」の中学二年生で、みるくぷりんはハンドルネーム(本名は秘密)
創作について語っている姿はあまり見ないが、小説はよく読んでいる印象がある。ちなみに最近彼女が話題にしたのはイギリスのSF作家イアン・マクドナルドのサイバラバード・デイズ。小説で鍛えた語彙センスは、彼女の活動の多くを占めるラジオ形式の配信でいかんなく発揮されている。
そう、普段の彼女の顔は柔らかい雰囲気で語るラジオ番組のパーソナリティなのだ。決して叫び声が濁点だらけの汚い三森すずこではない。なかったのだが……
いったい何が彼女を変えてしまったのか、その後どう歩んできたのか、順に追っていきたいと思う。
始まりは狂った大阪
すべてはアマリリス組のうち数人が、企業案件としてNEOGEO miniのゲーム実況を行ったことから始まる。
NEOGEO miniはNEOGEOのゲームが40タイトル収録されたゲーム機なのだが、その中でみるくぷりんがまっさきに始めた作品がこのバーニングファイトだった。
バーニングファイトとは
である。
詳細はバーニングファイト攻略大全をご覧いただきたい。
「大阪ってウチが知らない間にこんな街になってたんですか?」など、パワーワード頻出の回なので第一回もオススメなのだが、配信環境のトラブルでゲーム音が入っておらず、彼女の声と操作音のみになっている。
そのため、ビギナーはまず第二回の方を先に視聴した方がいいかもしれない。NEOGEOのストーリーは酢豚に入っているパイナップルのようなもの(みるくぷりん談)なので、三面からでも楽しめるだろう。
ゲームが始まってから30秒も経たないうちに元気な叫び声が聞けるので安心して欲しい。
・バーニングファイト実況(第一回/第二回<下の動画>/最終回/準備体操)
彼女のゲームスタイルは「お母さんにコントローラーを渡すとこうなる」といった感じのものなので、基本的にゲームの腕には期待できない。
ではなにを楽しむのかというと、ずばり「叫び声と語彙センス」だ。とにかく叫び声が濁点だらけで汚い。しかし声質は可愛らしいので、汚いけど可愛いのだ。
例を挙げると「やめてってう゛ぁー!」「あばばば!」「あばっ!」「え゛っ゛!?」など。当たり前のように「あばばば!」と叫ぶ子がいるとは思いもしなかったので、初めて聞いた時は衝撃を受けた。
語彙センスにも定評があり、言葉ひとつひとつのパワーが強い。三面の中ボスと戦っている最中、途中で沸いて邪魔してくる鎖マンに「鎖ィ!」と叫ぶ姿が強烈で、筆者もただ笑うしかなかった。
以下、第二回バーニングファイト実況でのみるくぷりんの発言の一例。
「大阪名物ビール瓶!」
「ちょっと略奪してきますね」
「はたらくくるまなんだからちゃんと働いてください!」
「日雇礼子さんの配信でよく見る感じの街並み」
「ウチが強くなる速度よりも鎖マンが進化する速度の方が速い」
「大阪にはこんな人がいるんですね」(二刀で斬りかかる袴姿の男を見て)
(画像はバーニングファイト実況最終回のものだが、まさに語彙センスの暴力である)
そんな台風のような彼女も最初からこうではなかった。バーニングファイト以前も何度かゲーム実況をやっていたのだが、その時はもっと落ち着いた雰囲気だったのだ。
バーニングファイトがみるくぷりんを変えてしまった。
(狂った大阪の街が思春期の女の子に残した爪痕は深い)
それだけの熱がこのゲームにはあるということなのだろう。同じアマリリス組の由持もにも、バーニングファイトに魅入られたVtuberのひとりであり、筆者の推しでもあるのでいずれ語りたい。
(お互いを思いあうバーニングファイターたち)
さて、みるくぷりんを変えたものについては触れたので、次は変化を始めた彼女がみせたゲーム実況の可能性「夜廻実況」について語ることにしよう。
進まないホラーゲーム
みるくぷりんの好きなものはSF小説とハロプロ。では嫌いなものはなにか、ホラーゲームである。
にもかかわらず彼女がホラー実況に踏み切った理由は、ファンに夜廻というホラーゲームを贈られたからだった。律儀で頑張り屋な性格がうかがえるエピソードだが、まさか贈った人もここまでの事態に陥るとは思いもしなかっただろう。
・夜廻実況(音量注意)
この回は少し特殊で、途中から急遽アマリリス組の仲間である吸血鬼のルル・ルチカが配信に加わっている。
怖すぎて進められないので助っ人を呼んだのだが、実は彼女もホラーが苦手なのでこわがりがふたりに増えただけだった。*1
こわがりがふたりに増えるとどうなるか。
こうなる。当たり前だろ!
完全に事故である。なにせゲームが進まないのだ。画面はたいして動かない、聞こえるのは虫の音と音割れした悲鳴だけ。みるくぷりんの絶叫が凄まじく、ルル・ルチカもつられてか絶叫に驚いてかはわからないが悲鳴を上げていた。
自分で拡大した看板に驚いて絶叫するくらいなので、みるくぷりんがどれだけこわがりなのかは推して知るべしといったところだろう。
筆者はルル・ルチカのファンでもあるが、まさかホラーゲームで彼女が励ます側に回る日が来るなんて思いもしなかった。初コラボのふたりだが、ファンにとっても珍しい光景が見られる回となっている。
そうやってなけなしの勇気を振り絞りゲームを進めようとするふたりだったが、一時間かけてもチュートリアルは終わらなかった……
では、実況は不評だったのかというと、むしろその逆だった。
叫び声を一時間聞き続けていただけなのに妙な満足感があるといった様子で、戸惑いながらもこの実況を褒め称える人間が続出した。かくいう筆者もそのうちのひとりだ。ゲーム実況というものを長い間見てきたが、これには驚かされた。
たとえゲームが進まず一時間悲鳴をあげているだけの配信でも、ここまで振り切ることができればそれはゲーム実況として成り立つのだ。
(画像をクリックすると当日の彼女のツイートへ。ファンの反応が見られる)
NEOGEO miniで多くの注目を集めたみるくぷりん。まったく毛色の異なるゲームではどうなるのかと、周囲は期待して見ていたのではないかと思う。その期待を大きく上回ったことで、単なるNEOGEO miniの人ではなく、みるくぷりんというひとりのVtuberとして新規のファンにも強く認識されたのではないだろうか。そういう意味でも記憶に残る回だったと言える。
*1 ルル・ルチカは特撮が好きな吸血鬼で、特撮のヒーローと同様に困っている仲間を放っておけず、ホラーが苦手にもかかわらず自分の配信終了後に助けに駆けつけてくれた。彼女の勇気がなければ夜廻実況はどうなっていたのだろうか。
(追記)
配信中急にバーチャルチャイムが鳴ったと思ったら、近隣の住人から苦情が届いたらしく実況終了となった。普段は治安がバーニングファイトな街に住んでいるので問題なかったが、帰省中は流石に難しかった模様。今回もチュートリアルが終わらず、ここにまた新たなみるくぷりん伝説が生まれたのだった。
(セーブポイントまでの道のりは遠い)
ロースコアガール躍動
ここからはバーニングファイト以降彼女のチャンネルで行われたゲーム実況をざっくり紹介していき、次の章でまとめに移ろうと思う。
・メタルスラッグ(1:試遊/第一回/第二回/第三回 2:試遊 3:試遊)
集合知(ファンの呼称)の協力もあってか順調に進んでおり、次回は最終面に挑む予定。
(戦場でみるくぷりんに出会っても信用してはいけない)
・真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変
「痛いから痛い」「なんでこの人たちは戦ってるんですか?」など発言も冴え渡る。
(作品を越えてまたしても鎖マンに翻弄されるみるくぷりん)
・ニンジャコマンドー
操作ボタンが3つだからいけそうと楽観視していたが、コマンド入力の必殺技が厚い壁として立ちはだかる。
・ブレイジングスター(試遊/一面のみ)
「虫の卵みたいなの出さないで」と言いながらも敵の弾をしっかり回避しているあたり、案外STG適性があるのかもしれない。
・戦国伝承2001
「ウチにはゲームで使う言語がわからない」(必殺技の説明を見て)
・キング・オブ・ザ・モンスターズ2
「ウチ、もにさんと違って街をボコボコにしたい願望はないんですーっ」
(キャディにセクハラする14歳)
・ジョイジョイキッド
「すべてを間違えた、人生の」
テトリスのルールがわからないみるくぷりんだったが、奇跡が起きる。
・Mountain
「ウチ、なんか山を越えて宇宙になりましたよ」
ゲームはBGM代わりで主にラジオ形式の配信。みるくぷりん配信に慣れ始めた頃にオススメしたい。
塩と砂糖
派手な格好をして遊んでいるように見えるが実は純情な女の子など、ギャップを生かしたキャラ作りというのはベタではあるが創作でも昔から人気がある。
同じアマリリス組の仲間である皇牙サキはユリイカで自身のことをギャップ型だと書いていたが、ゲーム実況に限っていえばみるくぷりんも似たようなものだろう。名前や見た目の柔らかさとは逆の、喉を酷使した実況スタイルをバーニングファイト以降貫いている。
Vtuberとして彼女が強いと思うのは、刺激的なゲーム実況と柔らかい雰囲気のラジオ番組を両立させているところだ。料理によって塩と砂糖を使いわけるかのように、巧みに配信スタイルを切り替えている。
あふれ出る個性のおかげで、どちらの配信も独自性のあるものになっており中毒性が高い。バーニングファイトの三面ボスであるニトウ・リュウジのように、強力な武器がふたつあるようなものだ。
さらに付け加えるのであれば、彼女は自身の得意分野であるSF小説(または創作)にはたいして触れていない。まだ見せられる別の顔があるということで、これは大きい。今後好きなものに特化した配信が出てくることも考えられるので、期待していきたい。
そうなんだぞ。
<関連リンク>
・みるくぷりん(Twitter)
・みるくぷりん(YouTube)