40歳の就職はむずかしい。
翌日、冒険者ギルドに加入するためにギルド会館に訪れ受け付けに行くと加入を拒否された。
冒険者になれるのは15歳以上30歳未満だと言うのだ。ただし紹介があれば例外もあり得るそうなのだが。
「ご紹介者はいらっしゃいますか?」
「いいえ、いません」
「プッ、その年でレベル1なんですよね、なんで冒険者になろうと思ったんですか?」
そういうと受付の女は俺を蔑むように笑う。
「わかりました、もう結構です」
「ねえねえ、教えてくださいよ!」
しつこく理由を聞こうとする受付を無視してギルド会館の外に出ると会館内は一斉に爆笑の渦に包まれた。
くっそー! あの女だけは許せねぇ、絶対にヒィヒィ言わせて俺の肉奴隷にしたる!
なんてくだらないことを考えながら、俺は今後どうするか考える。やっぱり生産者なんだから生産系なんだろうけど
レベルや職業など思い浮かべるとすぐにわかるのだがステータスだけは不明なのだ。まあいい。冒険者がダメなら生産系に入れば良いじゃない!
俺は生産系のギルドを探し、なんとか鍛冶屋ギルドを見つけだした。受け付けに加入申請をしでるとここでも渋い顔をされた。
「40歳でレベル1ですか……」
冒険者ギルドと違い、不遜な態度はとらないが明らかに困り顔だ。リアルでもファンタジーでも40歳過ぎの再就職は難しいんだね。世知辛い世の中だぜ。
少々お待ちくださいと言いギルドの奥に消えた受付がいかつい老人をつれて戻ってきた。
「研いでみろ」
そういうと一本の長剣と砥石を俺に投げて寄越した。それを受けとると目の前に剣と砥石の情報が表示された。
なるほど、何となく理解できた。生産者であるおれは生産用の道具を持たないと能力を使うことができないのだ。
「どうした早くやれ」
老人にせかされ。おれは砥石の情報を見る。
◎砥石10/10
・研ぎ
・補修研ぎ
・切れ味+1
よく分からないが俺の腕を見たいのだろうからこれはどう考えても切れ味+1だよな。
俺は切れ味+1を選ぶと砥石を剣に当てた。その瞬間砥石と剣が輝き砥石のカウントがひとつへり9/10になった。
え、なにこれこんな簡単に研げるの?ゲームじゃんこれ。と突っ込んでいると老人が俺から剣をひったくるとうむむとうなり出す。
「お前本当にレベル1か?」
「はい、本当です」
「まあいい、これだけ研げれば上等だお前の加入を認めてやろう。」
「本当ですか!」
「ただし、今から誰かに弟子入りとかはその年では無理だ。だからサバラの町に研師として行ってもらうと言う条件付きだが」
なんでも、今までいた研師が死んでしまい、今サバラの町には研師がいないのだとか。冒険者ギルドから早く新しい研師を寄越してくれとせっつかれているそうなのだ。
もちろん研師だけやってる人などいないし鍛冶屋は町に根をおろしておりわざわざ他の町にいくことはない。
そこで俺に白羽の矢がたったのだ。
「住むところは前の研師の家を使って良いし、給料は冒険者ギルドから毎週1Gでる。悪い話ではあるまい?」
1Gなら宿屋に二十日泊まれる計算か。確かにそれなら旨いかな?
それに今の俺には選択肢がない。仕事をしなきゃいけないのだ。
「わかりました受けさせてもらいます」
老人は破顔してカードを一枚投げて寄越した。
「ワシがこの国の鍛冶屋ギルドの総代でハンマスだ、よろしくな小僧」
ハンマスが投げて寄越したカードは、ギルドのメンバーカードだそうで、そこに名前を書けば今日から俺は鍛冶屋ギルドのメンバーと言うことらしい。
渡されたペンで名前を書くとカードの文字が光りカードが削れて名前が刻印されていく。
「ちなみに。鍛冶屋をやっても良いんでしょうか」
「うん?レベル1が作れるものなんぞ売れんだろうに」
おじいさんが言うにはレベル1が作れるのは短剣とバックラー(小型の盾)だけだと言う。
「かまいません働きたいんです」
俺のその言葉に、そうかそうかと言うと鍛冶屋のハンマーを俺に投げて寄越す。この親父なんでも投げて寄越すな。手が滑ったら怪我するぞ……。
もちろんそのハンマーを持つと情報が表示された。
◎鍛冶屋のハンマー100/100
・短剣
・バックラー
◆
◎素材
・なし
◎能力付与
・切れ味増強+10
・攻撃力UP+100%
・防御力UP+100%
・etc.
なにこの
たぶんこれ、エルダートレインの限界突破したときのボーナススキルだ。エルダートレインのときは決められた能力付与だったが、この世界ではどうやら好きに選べるようだ。
弱い武器を強くして最強剣にするとか夢が膨らむな!
とは言えよく見るとほとんどの能力が灰色になっており選べない。上に素材とあることからその大部分は素材を集めないといけないようだ。
ドラゴン倒して素材を集めろとか言われたら無理ゲーだ。
最強剣を作るには自分が強くないとダメとか、夢がないなと俺はうなだれた。