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異世界労働戦記☆スキル×レベル☆生産者ケンタ 作者:のきび

1章 変態紳士二度目の異世界転移

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葛城健太郎40歳、新しい異世界生活始めました。

 女神様勘弁してくださいよ……。

 俺はそう言わずにはいられなかった。なぜなら蹴った砂が文字を作り出していたのだ。


 ”働いてください”


 前の異世界では情報を得るために酒場併設の宿屋で情報収集してた。しかし女神様はそんな俺を働かざる者(ニート)として新たな異世界に転移させた。

 くっ、ならば働きまくって女神を見返してやりますよ。そしてゆくゆくは女神を俺の嫁にして子供は3人くらいで一姫二太郎三なすびでガンガン攻めてやるぜ。長いなすびが良いのか太いなすびが良いのか。いや二つ使えばいいじゃない! そしてぬか漬けにしておいしくいただくんだ。

女神のぬか漬けださぞやうまかろうよ。


 まあ、そんな罰当たりなことしませんけどね。そもそもぬか漬け好きじゃなし……。


 しかし、女神様は情報収集をすると言う概念がないのか。働かざる者食うべからず。肉体労働のみが労働、知識を使う労働は労働じゃない。汗を流してこそ労働、そんな脳筋女神なんだこれ。

 せっかく向こうの世界がエルダートレインと同じ世界だと認識できて、さあ楽しもうかと言うときに違う世界に転移させられてしまった。


 最初の転移から一週間後の出来事だ。つまり今回も一週間なにもしなければ、また飛ばされる可能性がある。

 仕事と言っても生産者ってなんなんだ,こんな職業知らないぞ。鍛冶屋でも錬金術師でもなく生産者か……。


 まあいい、詮索は後だ。取り合えずは仕事だ、なんでも良いから仕事をしながら情報収集をしよう。遊んでいると判断されるのは不味い。前回はスキルを使えたからまだ救いがあった。だが今回はレベル制だ。

 最悪、次はレベル無しスキル無しのリアルサバイバルを強いられたらたまらない。

”争え~もっと争え~”なバトルロワイヤルな世界に転送されたらたまらない。なにせ俺は生産職だ完全に狩られる側、か弱い子羊、ガクガクブルブル震えたている生まれたての小鹿だ。

この世界で頑張るしかない、頑張れベイビー、生まれたてのベイビーだ。

 だからって赤ちゃんプレイなんてしてられない。猶予はそれほどないのだ。


 周りを見渡すと中世風の建物がところせましと建ち並び俺を威圧する。大きな道路は石が敷き詰められ、深いわだちに車輪を挟ませ馬車がせわしなく走る。

 どうやら、ここはそこそこ大きな都市のようで情報収集や生活するにはもってこいのようだ。

 アイテムストレージもちゃんとあり、今まで作った装備やアイテム類もちゃんと持っていた。ただひとつを除けば。


 お、お金がない!


 くっそ! お金があれば、また引きこもると思って没収しやがったな! 

 プレイヤーが買ってくれない武器防具アイテム類をNPC(ノンプレイヤー)に売ってこつこつ貯めたお金なのに!

 買ってくれると言ってもあまり一気に売りすぎると買い叩かれるし、最悪買ってくれなくなるんだぞ! 売り子のNPC(ノンプレイヤー)の女の子で難破の練習をしてたのは内緒だが。

 怒りのあまり荒くなった息を整えると、ストレージにあるアイテムを売れば三日くらい宿屋に泊まれるだろうと思い直し冷静になった。


 まずは資金調達だ。俺は道を歩く人に声を駆け、武器を売れるような場所を紹介してもらった。その場所は立派な店構えで看板には『武器防具専門店ザザビン』と書いてあった。

 俺は恐る恐る扉を開けるとタキシードを着た店員がすぐさま俺のところに来た。


「お客様、今日はどういった御用で?」と言って道をふさぐ店員の目は俺を見下していた。なるほどここは高級店で俺が来るような店じゃないと言うことか。とは言えここは我慢我慢。買取りできるか聞いてみないとな。


「武器を買取りして欲しいのですが」


「武器をお持ちでないようですが?」

 なにも持たない俺を店員は訝しむ。そう言われればまるで初期装備のようないでたちだ。不振がるなと言う方がおかしい。

 俺はその店員に謝るとストレージから剣を一振り取り出した。

 それを見た店員は驚くが、それよりも俺の取り出した剣が気になるようで、自分の自己紹介をするとすぐに鑑定したいと申し出てきた。

 仕事熱心なおっさんだ。ちゃんと売るものがあればゴミのような剣でもきちんと対応するようだ。


 おっさんの名前はバルバ、たぶん明日には覚えていないだろうけどね。鑑定部屋に案内されたると紅茶や茶菓子が出された。おいおい、こんな厚待遇してもその剣二束三文だからねと言いつつ小腹が減っていた俺はペロリとたいらげた。


 鑑定が終わったバルバは一息つくと「いくらでお売りいただけますか?」とこちらにお伺いをたててきた。

 ここら辺はゲームと違うのだなと思いながらエルダートレインで売っていたときの最高値である1000Gを提示した。


「本当にそれでよろしいので?」

 お、ちょっと高くしすぎたかな?交渉事は苦手なんだよな薄利多売でドライな関係それが俺の理想。


「高かったですか? それなら少し値引きも……」


「い、いいえ、お待ちをすぐにお持ちします」

 そう言うと慌てて部屋を飛び出していった。しばらくするとお盆に1000Gを乗せバルバは戻ってきた。

「お確かめください」

 金色に光る金貨が山積みにされたお盆は数えるのが面倒な程だ。おれは信用しているから良いと言うとそれをストレージにいれた。表示が1000G増えた。


 俺が店からでると、すべての店員が出口でお辞儀をして俺を見送った。大袈裟な店だなたかだか1000Gで、宿屋に泊まったら二日で消える金額だぞと思いながらも、教育がちゃんとできているだろうなとこの世界の民度の高さに満足して店を出た。


 今日は疲れたまだ何もしてないけど、もう働きたくないでござる。こんな俺の怠惰な性格を知って女神は働かざる者(ニート)判定したのかもしれないなと苦笑する。

 その日、宿屋に止まると一泊5S(シルバー)だと言われた。1G(ゴールド)は100S(シルバー)で1Sは10C(カッパー)つまり俺はまたお金持ちになった。


 そして後に知ることになる、俺が売った剣が国宝になることを……。


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