思春期くらいまでは、今振り返ると「わかりやすい」可愛さを持つ女の子に惹かれていた。
スタイルがいいとか、美人とか、身長が小さいとか、溌剌とした感じとか、そういうやつだ。
たぶん、どの瞬間、どの角度で切り取られても綺麗なんだろうなぁと容易に想像できそうな人を好きになっていた。
僕が今惹かれているのは、見た目ははっきり言って微妙な感じの女の子だ。地味で眼鏡をかけている。
性格は暗く、人と話すとき目を合わせないし、よくどもっている。
唯一、声は高くて可愛いかもしれない。
だがそのなんともいえない感じがどこからくるのかわからないでいる。
彼女のいいところや素敵なところを挙げようと思えばできるけど、それは
適当な知り合いを掴まえて、その人のいいところを挙げてみろと言われて出てきそうな項目ばかりだ。
それなのに、
明るい太陽の下で飛蚊症の透明な糸くずみたいなものが気になるように、
夏場に常温で保存した食べ物が腐っていないか出先で思い出して気になるように、
スタイリッシュな街で明らかにおのぼりさんがキョロキョロしているのを見ていたたまれない気持ちになって気になるように、
僕は彼女のことが心のすみにずっと引っかかって気になっているのだ。
僕の好きな漫画に「ディスコミュニケーション」という作品がある。
この漫画のヒロイン・戸川さんは、松笛という男を好きになり、でもどうして好きなのかわからないのでそれを突き止めるために一緒にいる。
初めて読んだときはよくわからない感覚だったが、いまならなんとなくわかる気がする。
とここまで偉そうに書いてきたが、
僕自身も人と接することが苦手な暗い男なので、何も行動に起こせないままでいて、とても苦しい。
夏休みなので彼女に会えないため、頭の中の妄想での彼女が自分に都合よく美化されているせいかもしれない。