前者については「自らを世界の王と称し、朝貢冊封を振り回して主権を主張するのは支那古来の慣法であり、日本の足利義満や豊臣秀吉への冊封、魏源の著『聖武記』にはイタリアや英国も指すとある。このようなことをもって日本やイタリア、英国が中国皇帝に臣服するとすれば、その虚喝も甚だしく、今清国が沖縄に関与しようというのもこのような虚妄にすぎない」という趣旨を述べたのだ。現在の日本政府の「媚中外交」とは異なり、なんと論理的で痛烈な反論であろう。

 ところで「沖縄県民は日本人か?」と質問すると99・99%の日本国民が「日本人だ」と答えるだろう。では、「沖縄はいつから日本になったのか?」と聞かれると「明治かなあ、江戸時代はどうだったっけ?」とはっきり答えられる人は少ない。

 ところが、「日本は沖縄を侵略したのか」と聞くと、なぜか沖縄の米軍基地に反対している人は「侵略した」と大きな声で主張し、保守的な人は「侵略していない」と主張する人が多い。私がここで指摘したいのは「侵略していない」と回答する人たちだ。「侵略していない」というからには、沖縄が昔から日本であり、昔から日本人でなければならない。それ以外に、集団帰化したという可能性も考えられるが、そのような事実はない。結局、「日本は琉球を侵略していない」と認識する人の沖縄の歴史観は次のようになるのではないだろうか。

 「日本とは異なる『琉球国』という独立国は存在した。明治12年に沖縄県になった。しかし、日本が侵略したわけでもなく琉球人が日本に集団帰化したわけでもなくいつの間に日本人になった。もしかしたら強制併合かもしれないが、今は同じ日本人だから、いまさら問題にすべきでない」

 この考えは、曖昧思考の日本人にはかなりの確率で通用する。しかし、一歩国外に出ると全く通用しないのだ。ある独立国が、ある瞬間日本の一地方になったけれども、侵略も強制併合もしていないという歴史はいくら説明しても嘘としか思われないのだ。日本が琉球を侵略していないと言うなら、沖縄は最低でも江戸時代には日本に帰属していなければならないのだ。
2017年4月、札幌市内のセミナーであいさつする新党大地の鈴木宗男代表
2017年4月、札幌市内のセミナーであいさつする新党大地の鈴木宗男代表
 しかし、筆者が指摘するまで、鈴木氏への答弁書の危険性をどの政治家も全く気が付かなかったのである。これが筆者が冒頭で指摘した「村本氏が沖縄の歴史を誤って認識してしまった」理由である。幸い現在は、山田氏が安倍首相から引き出した答弁により、国家的リスクを回避できたかわりに、村本氏の発言は0点になってしまった。