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法華狼の日記

2018-08-01

[][]『日本のいちばん長い日Add Star630957544@twitter

ようやく日本の首脳部はポツダム宣言の受諾を決めた。原爆投下とソ連参戦によって敗北を痛感し、同時に天皇制を維持できる目算がたったからだ。

それから停戦を全国につたえる玉音放送の準備をなんとか終えた首脳部だったが、戦争を継続しようとする近衛師団がクーデターを起こす……


岡本喜八監督による、1967年のモノクロシネマスコープ大作*1。日本が敗北を認めるまでの24時間を主軸とした、同名のノンフィクションの映画化。

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日

ポツダム宣言の受諾を受けいれる瞬間までが長いアバンタイトル。そこから玉音放送の細部に拘泥する馬鹿馬鹿しい会議を前半で終え、それでも戦争を続けたがる各勢力の暴走を後半で描く。

動きのない会議や場当たりなクーデターばかり続くが、岡本喜八監督のカット割りは無駄なく小気味よく、2時間半以上の映画ながら飽きさせない。陰惨なはずの殺戮も情けない演出なため、乾いた失笑をおぼえざるをえない。

東宝作品だが特撮や大規模な撮影技術の見せ場は少なく、戦火の大半は資料映像の引用ですませている。これは監督の特撮嫌いによるものだろうが、結果的に大日本帝国の貧しさを画面から感じさせた。


ドラマとしては、受諾に途中まで反対した阿南陸相を中心にすえつつ、敗戦を認められない勢力の動きを独立並行して映していく。現在の歴史研究と比べると、いささか海軍善玉説によりすぎている感はあるし、天皇の御聖断神話も組みこんでいる。

しかし映画としては現在に観ても成立しているはずだ。阿南陸相が主人公的な位置にあるため、登場人物としての魅力が生まれ、陸海のバランスがとれている。天皇制堅持こそが戦争を続けた原因と明かしているので、天皇崇拝をつきはなして見ることができる。

何より全体の構図が当時の日本の意識を皮肉っている。ブラジル移民社会では、敗戦後も日本が勝利したと主張する「勝ち組」が負けを認めた人々を攻撃していた。しかし敗戦直前までは本国も大差はなかったのだ。


一本の映画として、同盟国ドイツの崩壊を描いた『ヒトラー ~最期の12日間~』に近い印象もある。上映時間からして同じくらいで、組織的に書類を隠滅する描写も、敗北を認められない上層部もかぶる。

『ヒトラー ~最期の12日間~』 - 法華狼の日記

興味深かったのは、敗戦後のために書類を破棄する場面や、存在しない部隊へヒトラーが指示を出す場面や、誇りのため敗戦を引きのばすような場面。末期の日本軍と大差がない。建物の窓から吹雪のように投じられる書類や、現実を認識できないヒトラーといさめられない側近の喜劇といった、映像そのものの面白味もある。ソ連軍が目前にせまっているのに裏切者の処刑を優先したり、ある意味では日本軍より往生際が悪い。

ひとつ違うのは、往生際の悪さがアドルフ・ヒトラー個人に集中していた『ヒトラー ~最期の12日間~』と違って、『日本のいちばん長い日』は昭和天皇がほとんど画面に出てこないこと。

天皇の不在は責任回避と崇拝維持のためだろうが、結果として往生際の悪さが国家全体、それも登場人物の過半へ拡大している。いわば誰も彼もが「ちくしょーめ!」と怒鳴っているようなものだ。

み~んなアドルフ!み~んなカチグミ!……そんな大日本帝国が最期まで醜態をさらしたのは当然といえようか。

*12015年原田眞人監督によって再映画化されたが未見。

hokke-ookamihokke-ookami 2018/08/01 22:38 最後の一文を思いついただけです。いい加減にしろ。

ALDALD 2018/08/02 00:09 >往生際の悪さがアドルフ・ヒトラー個人に集中していた『ヒトラー ~最期の12日間~』と違って、『日本のいちばん長い日』は昭和天皇がほとんど画面に出てこないこと。
天皇の不在は責任回避と崇拝維持のためだろうが、結果として往生際の悪さが国家全体、それも登場人物の過半へ拡大している。

放映当時存命でかつ在位中である事を踏まえれば当然の配慮であるとは思うのですが、「責任回避」だの「崇拝維持」だの意地でも悪意を持って捉えようとする『左翼思想』丸出しの感想文というのも中々興味深いですね。

tenreerentenreeren 2018/08/02 02:15 責任回避崇拝維持往生際の悪さがどうかしましたか?

「ジャパンの蔑称を格好良いと感じて使用する誰かを批判もせずに引用しただけの俺は悪くねえ!
俺を咎めることで蔑称を連想させるおまえこそが蔑称を啼き喚いているのはずだ!」
「隣国嫌いでなければ反発しないのはずだ!」「格好良いと感じて使う者がいるから!」
「格好良いと感じたのは自分じゃないから!」「ですら、って付けてたから問題無い!」
「ぼかした表現問題有り!」「無責任な言論の自由!」「世界には互いを蔑称で呼び合う人々がいるから!」
「加害の押し付けに許可が必要とみなしたんだから、被害の訴えにも許可が必要とみなさなければならないのはずだ!」
「問題無い、の根拠はヘイト雑誌やウィキペディア!」「バカ!恥!過ち!『被害を訴えた』責任を取れ!」

「自殺陰謀論」「唾棄貧困家庭」
「たびかさなるデマの流布や情報の剽窃で批判されているバイラルサイト」
などを批判もせずに引用したハム速保守速産経をしっかり問題視しながら
「ジャパンの蔑称啼き喚き」を批判もせずに引用した
自身は悪くないと残念な主張をのたまいなさる

被害の訴えと加害の押し付けに
同等の問題があるかのように主張するデタラメぶり
精神的拷問に等しいデマを流して自白させたことを
問題視もせずに、被害の訴えの価値の毀損に利用してなさる

蔑称啼き喚き蔓延でみ~んな格好良い!み~んなカチグミ!
唾棄日本の所業に追随加担しとる御仁様が81年遅れで醜態をさらし続けるのは当然といえようか

s3731127306s3731127306 2018/08/02 06:06 〉最後まで醜態を~

ざんねんながら八月十五日で最後ではなかったのですよ。
山田朗先生の最新刊『昭和天皇の戦争』第六章およびcinii収録論文「日本の敗戦と大本営命令」の指摘によると、以下の通りです。

・木戸日記などの一次資料から見て、降伏文書調印を迅速化しようとした形跡がない。首脳部が思考停止に陥っていたのだろうと推測される。
・武装解除命令の際に、最後まで帯剣の問題にこだわっている。首脳部の思考様式の問題が見てとれる。

つけたしですが、鹿野政直・新城郁夫『沖縄を生きるということ』にも関連の記述がありますのでぜひお読みください。

yasugoro_2012yasugoro_2012 2018/08/02 09:53 最後の一文に異義あり(# ゜Д゜)
原作が退屈で読み掛けで放棄しました。原作者は「臣一利」って自称しちゃったりするような人ですね。

sutehunsutehun 2018/08/02 10:45 岡本喜八は黒沢年男演じる畑中少佐を筆頭とした青年将校を「今の今までしねと言われてきて敗戦によりはしごを外された裏切られた」側として描写したっていう評がありますが、少佐って階級は「今の今までしねと言」ってきた側だよなぁ…と思った覚えがありますね
そういう視点で見ると、彼の暴走は裏切られた悲哀ではなく何とか死を逃れるための自分勝手な悪足掻きとしか見られないのです
ひょっとしたらこれも岡本喜八流の皮肉なのかもしれません

taisai429taisai429 2018/08/02 17:54 玉音盤の収録シーンをわざとぶつ切りに、そこに半ばやけくそのように出撃する特攻機を被せ、厳かに・ちんたらと終戦の儀式を進行する天皇と対比することで、「天皇制の維持」こそがポ宣言受諾の遅れた理由であること、天皇制のために本来死ななくてもいい人々が刻一刻と死んでいることを観衆に思い出させる。岡本喜八監督の意図は天皇の短い登場シーンからも十分に伝わりますよ。
後の「激動の昭和史:沖縄決戦」でも、主人公格の牛島と長の自決シーンを徹底的に戯画化することで彼らのナルシシズムを嘲笑うような演出をしており、この辺、私は岡本喜八監督の反骨を信頼せずにいられません。

    555    555 2018/08/02 22:01 天皇制の維持が目的なのに裕仁が出演しないあたりに
 昭和天皇免責の本質が表れていて、
  この辺りにも監督の主義があるのでしょうね。
   
   これとは全くもって無関係な映画だけど、昭和天皇は登場時から
    首から上が存在していない映画もあります。

todotodo 2018/08/04 23:09 まあ、天皇制というものの本質は、あくまでも、特別に権威があると設定・演出された存在を、時の権力者・為政者らが、自分たちに都合良く利用するという、そのシステムそれ自体であって、
現に皇位に就いている人物個人は、そのシステム維持のための一要素に過ぎませんからね。

昭和天皇も、自分自身の自由な選択で、天皇になったわけでなく、天皇制というシステムに縛られて、天皇になったのであって、天皇制というシステムの被害者的な側面もなくはない、と思います。

今の明仁天皇に対する、ムダに「愛国者」気取りな方々の姿勢を見ると、そのような感覚はより強くなると思います。

ただ、昭和天皇の戦後の自身の独白録での発言や、記者会見での自身の戦争責任や、広島長崎への原爆投下に関する発言を見ると、
なんとも、怒りが収まりませんが

すえながすえなが 2018/08/05 14:06 ご存知かもしれませんが、
明日8/6の21:00- BSプレミアムで原田眞人監督の2015年版が放送されます。
未見でしたら見比べてみるのも一興かもしれません。

個人的な感想としては、原田版は御聖断神話の宣伝映画で一度見れば十分。
岡本版と比べると日本映画界の堕落・凋落を痛感するものでした。
アレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』に先を越され、未だ比肩する作品を生み出せていない日本映画界は死に体を晒し続けているとも言えますが。

「み~んなアドルフ!…」のオチはプリパラのファンとしてクスッとしましたが、
一億総懺悔的なものを想起させるので素直に笑うのも躊躇われて困りますw

tenreerentenreeren 2018/08/05 21:47 >すえなが 2018/08/05 14:06

え!皇室に重きを置かない者共に堕落凋落死に体晒し続けとる認定を?
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20170821/1503319893

>「み~んなアドルフ!…」のオチはプリパラのファンとしてクスッとしましたが、
一億総懺悔的なものを想起させるので素直に笑うのも躊躇われて困りますw

結局笑っとるやんけ
そんなおのれは堕落凋落死に体晒し続けとる認定からは程遠いらしい

逆ネトウヨ逆ネトウヨ 2018/08/15 23:16 日本は敗戦していない。
──大東亜共栄圏の野望を捨てていないという意味では。
『終戦後』たしかに軍事力は捨てたが、代わりに経済的侵略を東南アジアをはじめとする周辺諸国に行った。ジャパーニズビジネスマンはスーツを着た兵隊と呼ばれたものだ。日帝の行状はアメリカの後ろ盾を得てますますひどくなったと言える。
しかし今、日本は経済的に凋落し、国際社会への影響力を喪失しようとしている。
つまり『真の敗戦』『真の日帝の崩壊』はこれからなんですよ。
そのとき日本人は戦前以上の狂気に陥るのか、それとも意気消沈して廃人と化すのか。

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