短歌がちょっと好きだ。ときどき気に入った歌人の歌集を買って読むことがある。
ただ、むずかしいことはわからなくて、本当に「これいいな~」と言っているだけ。高校生がJ-POPを聴くのと同じような感覚で鑑賞しているのだ。 そんな日々を送っていたら、たまたまプロの歌人(すごい存在)と知り合いになった。さらにその歌人が「斎藤さん、吟行(ぎんこう)やってみましょうよ」などという。吟行とは「散歩や旅行をしながら短歌を作ること」である。 つまり、プロと一緒に短歌を作り、見せ合うのだ。そんなのアリか。
1982年、栃木県生まれの指圧師です。自分で企画した「下北沢ふしぎ指圧」で施術しています。何をしているときでも「みんなが自分の治療院に来てくれるといいな~」って思っているのですが、ノイローゼでしょうか。
前の記事:「そもそも海苔ってどんな味だっけ? 24種類の高級海苔食べくらべイベント」 人気記事:「女子小学生向けの「写真の撮られ方」をやってみた」 > 個人サイト 下北沢ふしぎ指圧 吟行のメンバー左:伊波さん 右:僕
吟行を提案してくれたのは歌人の伊波真人さんだ。「角川短歌賞」という短歌の新人賞を受賞しており、歌集「ナイトフライト」を出版している。
「プロの歌人」の条件として ・短歌の賞をとっている もしくは ・歌集を出版している というのがあるそうだ。伊波さんは両方成し遂げているので、まぎれもないプロ。ただし、この条件は伊波さんが教えてくれたものである。 左:編集部の古賀さん
デイリーポータルZ編集部からは古賀さんが参加。短歌はほとんど作ったことがないらしいが、ポテンシャルは高い気がする。
上野駅から上野公園に向かう
場所は上野。それでは吟行スタートだ。
何を詠むべきか斎藤:吟行って、普通に散歩しちゃっていいものなんでしょうか? 伊波さんは何を考えながら歩いてます?
伊波:ヘンな物ないかなって考えています。吟行だと名所旧跡を詠みがちなんですが、それだと人と一緒になっちゃうんですよね。むしろおもしろ看板とか探した方が良いかも。 古賀:おもしろ看板ですか! おもしろ看板。意外なことに、わりと当サイトのテーマに近い。これなら短歌も意外と作れるのかもしれないな……。 公園の向こうにアパホテルがあった
斎藤:アパホテルだ。短歌でアパホテルはありでしょうか? ……か・い・だ・ん・の・う・え・ア・パ・ホ・テ・ル(音数を数える)
古賀:いきなり詠み始めてますね、でも後でまとめてにしましょう。 伊波:アパホテルいいですね。5音なので詠みやすいです。 アパホテルがいいのか。アパホテル……アパホテル……。こんなに脳内でアパホテルがリフレインしたことないぞ。 なんてことのない催し物の案内
伊波:(掲示板を見て)こういうのもいいですね!
古賀:何がいいんですか? さっぱりわからん。 伊波:催し物の中に「縄文展」があるじゃないですか。それを現代の上野と対比させることができる。昔は縄文の土器がとれたのかもしれない、今はそこで展示をしている、みたいな。 斎藤:なるほど……。飛躍ですね。 伊波:短歌に飛躍は大事です。詩だから。 センス勝負ってこわい古賀:短歌って、完全にセンス勝負じゃないですか。みんなで作り会あうとピリピリししませんか?
伊波:吟行はレジャー要素が強いんで、普通の歌会よりはピリピリしませんね。 斎藤:じゃあ普通の歌会はピリピリするんですね。? 伊波:「題材が凡庸だね」って批評されたりはありますね。 古賀:センス否定されると、人格の全否定みたいに思えて、なんかこわいんですよね…… 古賀さんの発言にハッとした。これはセンス勝負だったのか。苦手な分野である。一気に緊張が高まってきた。 すごく遠くにスカイツリーが見える
古賀:あっ。スカイツリー見えますね……。でもこれは凡庸?
伊波:スカイツリーは凡庸です。詠み尽くされています。 古賀:もうか! 早いな~。 伊波:でも上野公園との取り合わせで新鮮になるかもしれませんよ。 巨大なスカイツリー。施設としてはすごく楽しいのに「題材としては凡庸」ってバッサリ切り捨てられるの、おもしろい。短歌ならではの価値観って感じがする。 公園の売店にある缶バッチガチャポン
伊波:ご当地缶バッチありますね。こういうのは題材にいいですね。
斎藤:これが? なぜ? 伊波:上野ならではじゃないですか。 斎藤:おもしろガチャポン詠むのヤだな~~~。全然心が入らないです。 とはいっても、さっき僕はアパホテルで詠もうとしていたのだ。アパホテルに泊まったことはないし、特に思い入れもない。アパホテルとおもしろガチャポンの差っていったいなんだろう……。 上野公園のカフェで「パンダフェア」が開催されていた
古賀:パンダフェアかー。
伊波:パンダフェアもいいと思います。 斎藤:ここらへんで一回作ってみましょうか。カフェもあるし。 伊波:普通の吟行は、散歩が全部終わった後に作るんですが、やります? 斎藤:一回やってみて、アリかナシかを伊波さんに言われないと不安です。 古賀:やってみますか。でも全然思いついてないんだよな~。 というわけで、上野公園を散策して20分。まず僕と古賀さんで試しに作ってみることにした。
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