さあ、話の発端をお見せしましょうかね。
腰に巻いてるのがそれです。ウエスタン調のガンベルト。
もう五年ほど前になるかな。お友達から頂いた品です。届いたベルトをひと目見た瞬間、「只者ではない」と思いました。本格的過ぎるやん、と。

と言った尻からあれですが、実はわたし、ウエスタンには疎いです。
鉄砲ファンである故、西部開拓時代の銃を模したトイガンは幾つか持っていますが、銃以外の知識はたいしたものじゃありません。
映画好き故、西部劇もそれなりに観てきましたけど、なんとなく昔のアメリカってこんな風だったんだあ~って感じていた程度でね。史実や生活習慣,ファッションやその他諸々、ツッこんで調べたことはなかったです。
頂いたガンベルトが絶品であると認識しながら、長い間撮影の小物として使わず、放ったらかしにしていた理由はそういうこと。






なので、テキスト書くにあたって、お勉強しましたよ。ガンベルトのことを。
ホルスター部の違いによって、幾つかの種類に分かれるようです。
①ホルスターがベルトを挟み込むように固定されているタイプ。
②ホルスターをベルトに開いた細長い穴を通して固定するもの。
③ホルスターの形状が、グリップを除いて銃をすっぽり覆うようになっているもの。
④ホルスターの上部が、銃を抜き易いように大きく切られたようになっているもの。
とか。

①かつ③の条件を満たすものはオールドタイプと呼ばれます。西部開拓時代、実際にガンマン達が使っていたのはこのタイプ。
②はハリウッドタイプ、④はファストドロータイプであって、他の要素とOR条件になるみたい。
②または③、②または④ならどちらもハリウッドタイプ。
④または①、④または②ならどっちもファストドロータイプ。

ちなみにファストドローってのは早撃ちのこと。上の写真みたいに、銃を抜いた瞬間、腰のところで発砲する撃ち方です。ファンの間で競技会なんてのも行われていて、youtubeで 「ファストドロー」 と検索すれば、わんさか動画が出てきます。呆れるほど早い達人いますよ。






ハリウッドタイプもファストドロータイプも、西部劇全盛期に生まれたんですって。
さっき競技会の話をしましたが、そもそも早撃というのは西部劇での華であって、主人公のイケてる度を現すようなものですもんね。
これまでのことを頭に入れて、わたしのベルトを見てみれば、①と④が当て嵌まることがわかります。
古さと新しさが共存してるって感じ。

今回、お勉強がてら、現在市販されているガンベルトがどんなものか?ということも確認しました。
素人のわたしですら、一見してわかりましたよ。
造りの堅牢さと丁寧さ。全体的にワイルド感溢れるデザインながら、適所に施された精緻な装飾。あらゆる点でわたしのベルトの勝ちです。
ほんと良い物ですよ、これ。あらためて有難うございました、お友達の人。






ホルスターから、なんかにょろーんって垂れてますね。
本来は太股に巻きつけて、ホルスターをしっかり固定させる為の革紐です。
ただ、一度解くともう二度と元に戻せそうにないので、頂いた時のままにしました。ま、大勢に影響ないでしょ。どうしても気になる人は、レタッチソフトで消すか、巻いた状態に描き直してみてください。

銃のことにも触れておきましょう。
わたしが持っているのは、コルト・シングルアクション・アーミー(Colt Single Action Army)。
名前の通り、アメリカ陸軍に正式採用された銃で、1872年に生産開始。後に民間向けモデルも作られました。
銃身の長さで、どこそこ用かがはっきり分かれてるんですよね。
・3インチ :保安官用(シェリブズ)
・4.75インチ :民間用(シビリアン)
・5.5インチ :砲兵用(アーティラリー)
・7.5インチ :騎兵用(キャバルリー)
という具合。カッコ内は各モデルの通称でぇす。
わたしは一民間人なので、勿論シビリアンを握ってます。取り回しし易いサイズで、早撃ちにはもってこい。まさに西部劇の定番中の定番です。






以前、日本刀を持った写真のコメントで時代劇に触れたことがありました。
そこで今回は、西部劇について書いてみます。わたしのお勧め三本です。

その1 「荒野の七人」(1960年)
・監督 ジョン・スタージェス
・出演 ユル・ブリンナー,スティーブ・マックイーン,チャールズ・ブロンソン
     ジェームズ・コバーン,ロバート・ヴォーン
     ブラッド・デクスター,ホルスト・ブッフホルツ
語るまでもない名作中の名作....というのは最近の若い人達には通じないかな。
数十人からなる盗賊団の蛮行が、毎年のように繰り返されていたメキシコのある村。耐えかねた農民達は七人のガンマンを雇う。凄腕揃いの彼らは、農民達を守ることが出来るのか!?
というお話。黒澤明監督の「七人の侍」のリメイクなんですけど、ハリウッド的に上手いこと咀嚼・改変しています。何度観てもおもろいです。
一点だけコメントするとすれば、ストーリー後半で、盗賊団の親玉がちょっと有り得ないほど甘い判断をするのが違和感あり。ここん所さえ一工夫あったら、わたし的にはパーフェクトになってたでしょうね。
わたし如きが何ほざいているのかを確認する意味でも、是非観ていただきたい作品です。

その2 「レッド・サン」(1971年)
・監督 テレンス・ヤング
・出演 チャールズ・ブロンソン,三船敏郎,アラン・ドロン
1870年頃、チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンの強盗団が金貨を輸送中の列車を襲う。列車に乗り合わせていた、三船敏郎が属する日米修好使節団は、大統領に贈るべき宝刀をアラン・ドロンに奪われてしまう。えらいことになった三船さんと、仕事中アラン・ドロンに裏切られて、やっぱりえらいことになったブロンソンさんは、宝刀奪還の為、コンビを組んでアラン・ドロン追跡の旅を始める。
というお話。西部劇の世界に侍が出てくるという異色作。でも、決してトンデモ作品じゃあないです。
日本人が、外人達の中で刺身のつま的な存在ではなく、また、あんたどこの中国人?というような存在でもない。しっかり日本人として描かれてます。三船さんが、ちゃんと主役の一人として活躍するのが嬉しいですね。
ラストはやっぱりそうなるのかーという展開でしたが、映画としては仕方ないかな。

その3 「クイック&デッド」(1995年)
・監督 サム・ライミ
・出演 シャロン・ストーン,ジーン・ハックマン,ラッセル・クロウ,レオナルド・ディカプリオ
悪徳市長が支配する町に、美人なガンマンがやってくる。年に一度開かれる早撃ち大会に参加する為に。
命を賭け合うそのイベントに彼女が出る目的は復讐だった。
というお話。監督・キャストがもう、わたしのツボに嵌りまくりな面々です。映画が撮られた当時、ディカプリオはまだ人気が出かけたニューフェース。ラッセルさんは地元オーストラリアでこそ認められていたものの、ハリウッドでは無名だった存在。だからこういうキャスティングが実現したのでしょうけど、今からみると有り得ないような豪華さですよね。
銃好きな方なら、ディカプリオが経営する銃砲店に、ハックマンとラッセルさんが訪れるシーンに注目。
レオ様が紹介する豪華で美しい銃達と、ラッセルさんの銃さばきは必見。撮影前に相当練習したんだろうなあ。
世間的には、主役のストーンさんの演技がアレだとか、肩に力入りすぎだとかいう声が聞かれますが、わたしとしては許容範囲。
幼い頃に保安官の父を殺され、それでも荒野の世界で生き残ってきた女に、どれだけの反骨さと強がりが必要だったか。そこんところ、ちゃんと表現出来ていたと思います。
またも一点コメントすると、ストーンさんとラスボスのハックマンとでは、射撃の技量と胆力に小結と横綱くらいの差があった筈。クライマックスの決闘に至るまでの描写からも、そう受け取ることができます。
なのに二人が対等な条件で撃ち合いして、普通にストーンさんが勝っちゃうのは違和感あるなと。
ここはやはり、ストーン&ラッセルコンビが策を弄して、卑怯ながらも逆転勝ちするくらいの演出が欲しかったです、はい。






さて、いかがでした?
ガンベルトの魅力は伝わったでしょうか。ビザールな衣装との相性はどうだったかな。
現代銃用のホルスターって、あくまで銃の入れ物であり、無味乾燥というか無個性な存在だと捉えてきました。それに比べて、ウエスタンなガンベルトの存在感の強いこと。物によっては完全に銃を食ってしまいます。
こうしてコンテンツにすることで、ベルトの奥深さと楽しみ方の端っこ辺りを実感することが出来た。
と思っておきます。

次の更新もまだビザールっすよ。じゃまた!!

2017.5.4