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中国政府が「ビットコイン撤退」を決めた深い理由

習近平はこれを怖れていた

中国のビットコイン・マイニング締め出し

中国の当局は昨年9月にICO(仮想通貨を集める形式の資金調達)を禁止し、ビットコイン(仮想通貨)取引所を実質的な閉鎖に追い込んだ。

今年になり、今度はビットコインのマイナー(採掘業者)に対する規制を導入し、事業からの撤退を指示している。この影響は大きいものがある。ビットコインマイニングの約8割が中国国内で行われているからである。

マイニングとは、簡単にいうと、ブロックチェーンのベースとなる一定時間の金融決済の塊り、つまり、新たなブロックを生成し、その報酬としてビットコインを受け取ること。それには膨大なコンピュータ業務が必要になる。

中国がマイニングの中心といっても、行われているのは四川省・雲南省・内モンゴル自治区等であり、これらの地域は電気代や土地代が安いだけではなくて、税制面でも優遇されていた。

今回、撤退の指示の他、税制上の優遇もやめ、電力消費量の制限も課せられた。実質的に事業の継続が出来なくなっている。

 

この案件を考えるときに浮かび上がるのは、単純な仮想通貨の仕組みや価格上昇の問題だけではない。仮想通貨のマイニング事業の、大量の電力消費も問題の一つなのである。

昨年10月の第19回中国共産党全国代表大会において、習近平・国家主席は2期目を迎えた。そして中央経済工作会議を経て、2020年までに手掛け3つの重要課題を挙げた。それが、汚染防止、金融リスク防止、貧困脱出である。

中国では発電は石炭火力が多い。マイニング業務だけでも、アルゼンチン1国の電力消費量に匹敵するともいわれているが、それだけ大量に使うということは、二酸化炭素やPM2.5を大量に排出されるということである。これは大きな問題である。

資本流出としてのビットコインと金融リスク

それ以前に、中国においてビットコインが規制されたのは、資本規制の一環であった。

中国では、資本管理は国家外貨管理局が担当省庁である。銀行経由の外為両替や送金は従来から規制され、さらに強化されている(今後、日系企業の収益送金も困難になる可能性がある)。

そこにビットコインを利用し、人民元を売却しビットコインに通貨のように両替するやり方が現れた。ネット上に存在し、ボーダレスに取引されるビットコインは、その性質上、実質的な資本流出である。そこで、中国当局はビットコインの取引所を実質的に廃止させた。

産業として考えた場合としても、中国にとってマイニングはメリットが少ない。現在、マイナーは1ブロックをマイニングした場合、12.5ビットコインの報酬を得る。このビットコイン建ての報酬はほとんどが中国の国外に移り、中国国内経済・金融のためにはならない。メリットよりもデメリットの方が大きいと判断したわけである。

ちなみに、中国の金融インフラは、そもそも存在しないというか、脆弱である。一方、需要は旺盛にあるわけで、そのため、このビットコインなどの仮想通貨取引にしても、スマートフォンを中心としたフィンテックにしても、既存の金融インフラをそれほど必要としないものが広がりやすい。その点で、日本とは前提が違い、あまり参考にはなりにくい。