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【社説】

自民党総裁選 安倍政治の背景に迫れ

 九月の自民党総裁選は、現職の安倍晋三総裁(首相)に石破茂元幹事長が挑む構図となった。「安倍一強」政治の是非はもちろん、一強を生んだ政治構造そのものをめぐる論戦にも期待したい。

 現職総裁の壁は厚く、高い。六十三年に及ぶ自民党史上、現職総裁が総裁選で敗北し、首相の座を退いたのは、大平正芳氏に予備選で敗れた福田赳夫氏ただ一人だ。

 総裁選への立候補を正式表明した石破氏が強調したのが「正直、公正」である。記者会見で「何よりも先に政治への信頼を取り戻す」と述べた。石破氏の念頭にあるのは、安倍政権下で拡大する政治への信頼感の喪失だろう。

 森友・加計両学園をめぐる問題では、公平・公正であるべき行政判断が、安倍首相の影響力で歪(ゆが)められたか否かが問われた。関連の公文書が改ざんされ、国会では官僚の虚偽答弁がまかり通る。

 法案の成立強行を繰り返す与党の国会運営は強引で、首相は野党の質問に正面から答えようとしない。まず問われるべきは第一次政権を含めて七年近くにわたる「安倍政治」そのものだろう。

 石破氏は公約ビラで「政治・行政の信頼回復100日プラン」として、官邸の信頼回復や国会運営の改善、行政改革を期限を設けて断行することを掲げた。

 妥当な争点設定ではあるが、安倍政治の是非に加え、なぜ安倍一強と呼ばれる政治状況が生まれたのか、現状を良しとしないのであれば、その背景にも迫り、改善策を提示すべきではないか。

 石破氏は会見で、省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局の見直しには言及したが、一強を生んだのはそれだけにとどまらない。

 国民が注視するせっかくの機会だ。首相官邸に権限を集中させる政治制度の在り方や、政権中枢への権力集中を生みやすい小選挙区制や政党助成制度の是非にまで踏み込んで議論してはどうか。

 議員票の七割を固めたとされる安倍氏は自衛隊を憲法に明記する九条改憲に「大きな責任を持っている」と強調した。

 改憲に焦点を当て

ることで石破氏が設

定する争点を回避し、総裁選を圧勝に導く狙いがあるのだろう。

 石破氏は、戦力不保持の九条二項を削除し、自衛隊を軍隊と位置付ける全面改正を主張するが、九条改憲の優先順位は低いとしている。自民党員以外の国民にとっても関心事だが、九条改憲に議論が集中して、安倍政治の是非という今の最大争点が霞(かす)んでは困る。

 

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