台風が去ると、素晴らしい青空が広がりました
雨の日が多くて気づきませんでしたが、今年はワタスゲも良さそうです。
少ないかと思われたイワカガミも今頃になって見頃。
晴れてみると、まだタテヤマリンドウも健在でした。
一方で、初夏を彩るハクサンチドリやノビネチドリ、そして早くもニッコウキスゲまで、ちらほらと見られるようになりました。
ヒオウギアヤメも開花し始めたので、尾瀬ヶ原ではカキツバタもそろそろでしょうか。
沼尻まで足を伸ばすと、ヒメシャクナゲがあちらこちらで、小さなピンク色の壺を吊り下げているのが見られ、途中の浅湖湿原では、まだ水芭蕉も咲いています。
沼尻平のチングルマはそろそろ終り。青空を映す池塘では、ヒツジグサやミツガシワが葉を広げつつあります。
長蔵小屋から大江川湿原に出ると、左手にミツガシワの大群落。木道からは離れていますが、近くにも少なからず咲いています。
この花は、アップで見ると印象ががらっと変わりますから、ぜひ近くでじっくりと観察して見てください。
湿原に鹿柵が張り巡らされたお陰か、ミツガシワに関しては随分復活したものだと感じます。
ニッコウキスゲが、かつてのように湿原全体を埋め尽くす日も、いつかは訪れるのでしょうか。
この間、玄関前を掃除していた時のことです。
通りがかりのお客様に、目の前の工事について訪ねられたので、ビジターセンターの新築をお答えすると、
「新しくなれば話題になって、山小屋も儲かるようになるでしょ。良かったね。」のような言葉をいただきましたが、なんだか悲しくなりました。
外から見れば、山小屋も大喜びでこの開発を歓迎していると思われても仕方ありません。
確かに話題を呼んで、尾瀬沼を訪れるハイカーが増え、山小屋や売店のご利用も一時的には増えるかもしれません。
しかしそれにより失われるもののほうが、尾瀬にとっては遥かに大きな財産です。
失われた森や林や風景は早々に元には戻りません。
繁殖地だった長蔵小屋前の林を失って、ウグイスたちは何処へ行ったのでしょう。
アカハラも、アオジも今年は姿が見られませんでした。
一体、この整備は何なのでしょう。
建物の配置や歩行路がわかりづらい?
そもそも主要道を荒廃したまま放置したり、利用者が多いがゆえに侵食が進んだ歩行路を、廃道にしたのはどなたでしたか?
ビジターセンターがメインストリートに背を向けて建っているのがおかしいから?
それは、後から作られた道を、メインストリートに格上げしたからではないでしょうか。
もともと第一公衆トイレも、現ビジターセンターも売店も、本来のメインストリートに向けられて建てられていたはずです。
今のビジターセンターを取り壊した跡地を広場にする? ヘリコプターの荷降ろし場に隣接しているのに?
ヘリの予定がある日は、果たして休憩場所や集合場所として使えるのでしょうか。
今まではビジターセンターの建物そのものが、盾になってくれましたが。
湖畔への道がわかりづらい? 確かに侵食が進んで荒れています。
だからこそ、この道の整備が必要だったのに、そこはそのまま。しかも一部勝手に廃道を言い渡され、いつの間にかヤブを切り開く新しい(木道)を作る計画にすり替えられてしまいました。
本当に利用者のことを考えての計画だったのでしょうか。
私には、発案者が「やりたかった」ことを、ただ形にしたとしか思えません。
長蔵小屋前の林の伐採に関しては、たいへん目立つ所であるがゆえ、用意周到なアナウンスが有りました。
しかしこれとは別に、(長蔵小屋)別館の目の前の林は、歩く人からは見えづらいからでしょうか、ほとんど知られずに姿を消しました。
新緑、紅葉が美しい広葉樹林で、別館はわざわざこの林に向けて建てられた経緯があったので、残念でなりません。
工事を説明するパンフレットには、撤去するボランティア詰所と第一公衆トイレの跡地を新たに植栽するとして、大袈裟に大きく樹木が描かれていいますが、失った林を補えるものでは到底ありません。
それどころか、伐採に関しては一切触れておらず、不誠実にすら感じます。
大体、建築費の半分が空輸費に消えるこの地に、これほどの大工事が必要だったのでしょうか。
大規模な造成工事は、更なる土壌流出を引き起こすことになるでしょう。
地下室ができるのではないかと思うほどの大工事を経て完成した現在のビジターセンターは、重量鉄骨の骨格を持つ頑丈な建物です。
外壁が傷んだのなら、板を張り替えればよいのではありませんか?
雨漏りするなら、屋根を葺き替えれば済むのではありませんか?
耐震基準が現行のものと合わないから?
学校ですら耐震補強でしのいでいるではありませんか。
建て替えるほどの予算があるなら、まず学校を建て替えてあげたらいかがですか。
本来ビジターセンターなるものは入山口に有るべき施設ではないのでしょうか。
何故わざわざ倍の費用をかけてまで、尾瀬の真ん中に作らなければならないのか、私には不思議でなりません。
ハイカーがこの地に必要としているのは「博物展示施設」ではなく、晴れた日の木陰と雨をしのげる屋根、そして何かあった時の救急・救助体制ではないでしょうか。
安心して現地を利用できる体制。これこそ公に力を発揮していただきたいところです。
現地に入ってから展示物を見るぐらいなら、本物を見て感じたほうが遥かに有意義なのでは? せっかくここまで足を運んだのですから。
それには荒れ放題の尾瀬沼南岸コースを整備するなど、新しい物を作ることより既存の物を使えるようにすることこそ優先すべきではないでしょうか。
順序が違うように思います。
修復・修繕は目立つことではありません。しかし公共工事だからこそ、見た目が派手な工事ではなくとも、地味でも本当に必要とされていることをやっていただきたいと思うのです。
山小屋だからといって、手放しでこの開発を受け入れているわけではないこと。
少なくともスタッフの一部は、見守りつつも疑問をいだいているということをお伝えしておこうと思います。
後々、この計画は何の必要があったのかなどと言われませんように。前回の整備では、かえって道がわかりづらくなり利用者を困らせたわけですが、本当に利用者の立場を考えた整備になりますよう願うばかりです。