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【社説】

日中条約40周年 成熟した「互恵」の時代へ

 日本と中国が不戦の精神をうたった日中平和友好条約の調印から四十年となった。平和や友好を唱えるだけでなく、両国が約束した「互恵」を成熟させる新たな時代へ一歩を踏み出してほしい。

 一九七八年八月に調印された日中平和友好条約では、紛争の平和的手段による解決や、主権や領土保全の相互尊重を確認した。

 パンダブームに象徴される蜜月や尖閣問題に端を発する反目の時代など、両国関係は極端な振り幅で揺れ動いてきた。だが、交流を支える原点が条約による「不戦の誓い」であったことを、四十周年の節目にまずは心に刻みたい。

 日中首脳は調印記念日の十二日付で祝電を交換。安倍晋三首相は「日中関係が正常な軌道に戻ったことを大変うれしく思う」と述べ、李克強首相は「長期的で健全かつ安定した発展を推進したい」と前向きな姿勢を示した。

 三十五周年の五年前を振り返れば、中国国営新華社通信が「(関係は)国交正常化以来、最悪の谷に陥り、これは完全に日本の責任だ」と批判する論評を公表した。

 こうした一方的な非難は、中国と相手国の両国民の間の憎悪と不信を募らせるだけであり、建設的な姿勢とは言い難かった。

 関係改善の動きは、米中関係悪化により、中国が周辺国との関係修復に乗り出したという背景もあろうが、長い冬の時代は過ぎようとしている。

 二〇〇八年の日中共同声明でうたった、未来に向けた「戦略的互恵関係」の新局面を切り開くチャンスの再来を、日中双方とも大切にしたい。

 安倍首相は五月の李首相との会談で「日中関係は競争から協調の時代に入った」と述べた。

 日本が、中国の改革と発展を経済援助で支えてきたのは事実である。だが、一部の日本人の心に残る優越感とは早く決別すべきであろう。世界第二の経済大国に急成長した中国も、近年目立つ尊大なふるまいを反省してほしい。

 日中が「友好」を唱えるだけの時代は過ぎ、相互信頼を基礎に、真の「互恵」に向け協力を成熟させる時期である。

 安全保障では「海空連絡メカニズム」の運用開始で合意した。偶発的な軍事衝突を避けるため有用性を高めていくことが肝要だ。北朝鮮の核問題解決に向け日中連携は大きな意味を持つ。中国が悩む大気汚染や少子高齢化対策では日本が協力できることは多い。

 

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