ふるさと納税「争奪戦」が終わらない深い事情

総務省が12市町を名指し注意、従わぬ理由は

総務省から名指し注意された市町は今後どう対応するのか。左から茨城県境町、大阪府泉佐野市、静岡県小山町の様子(写真提供:左から茨城県境町、大阪府泉佐野市、記者撮影)

7月6日、総務省が「ふるさと納税に関する現況調査結果」を発表した。昨年度のふるさと納税受け入れ総額が3653億円と過去最高となったことなどをまとめた10ページの資料だ。

その最後のページに、①返礼割合が3割超、②地場産品以外の返礼品を送付、③2018年8月までに見直す意向がない、④昨年度10億円以上の寄付を受け入れ、の4条件に当てはまる、大阪府泉佐野市など12の市町がリストアップされていた。いわば「言うことを聞かない自治体はこの12市町です」と、総務省が公表した格好だ。

背景にはふるさと納税の過熱ぶりがある。ふるさと納税はそもそも「寄付」であるにもかかわらず、牛肉や温泉宿泊券といった高価な返礼品ばかりが独り歩きした。

こうした事態を受け、総務省は2017年に返礼品を寄付金額の3割程度に抑えることや、商品券、家電など換金性や資産性の高いものを自粛するように通知。今年4月には「地域資源を活用したものを送付するなど、良識ある対応」を求めた。それでも意向に従わない自治体として、12の市町がやり玉に挙げられた格好だ。

豪雨災害をきっかけにふるさと納税を活用

総務省が具体的な自治体名を出したのは、今回が初めて。だが、名指しされた12自治体には、それぞれの事情があるようだ。

昨年度に全国22位、21.6億円の寄付を集めた茨城県境町は、財政難を救う一助としてふるさと納税に力を入れた。本腰を入れ始めたのは、2014年に橋本正裕・現町長が38歳の若さで就任してからだ。

橋本町長が就任する前年の2013年、境町の「将来負担比率」(将来負担額の標準財政規模に占める割合)は184.1%と、茨城県内で圧倒的なワーストだった。この財政難に追い打ちをかけるように襲ったのが、2015年9月に発生した関東・東北豪雨災害だ。

2015年9月に豪雨災害に見舞われた(写真:茨城県境町)

床上・床下合わせて500棟以上が浸水したほか、道路や田畑、牛舎が水没し、復興のための補正予算は8億円以上に上った。激甚災害に指定されたため大部分は国や県の負担になったが、それでも1億円近い歳出は町の持ち出しとなった。そこで、ふるさと納税を活用した。

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  • NO NAME8bd66f15acdc
    【都市部の自治体には、返礼品競争を「自粛」しているという思いもある。「もし世田谷区でも物品カタログみたいなことをやったら、本当に過疎で悩む村からも、その村に入るべき税をいただいてしまうことになる。それは泥仕合だ」(保坂区長)。】は、全体最適の観点から見て大変賢明な意見だと思う。
    up29
    down9
    2018/8/17 06:57
  • ブニル927dc470f098
    高額納税者に対する逆進性って、税全体でみたたらそもそも高額納税者に対して強くある累進性を若干弱めているだけであり、問題でもなんでもないと思うわ。
    up24
    down7
    2018/8/17 07:25
  • NO NAME7bb45154c226
    名指しで総務省が注意の地方自治体=国=政府が注意したい地方自治体。という事は、今、青森県大間町に建設中の原子力発電所に対する建設差し止め請求訴訟をおこしていて、「ふるさと納税返礼品に訴訟費用」を項目にしている、函館市も入れたいのが本音かも?
    up8
    down1
    2018/8/17 07:55
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