「私の夢は、生涯声優です」原由実さんがファンとともに歩んできた6年間のアーティスト活動を締めくくるラストライブ

2018年6月10日、東京都の下北沢GARDENにて、声優・歌手として活躍する原由実さんのアーティスト活動ラストライブ“原由実ファイナルソロライブ「Message」”が開催された。

 2018年6月10日、東京都の下北沢GARDENにて、声優・歌手として活躍する原由実さんのアーティスト活動ラストライブ“原由実ファイナルソロライブ「Message」”が開催された。2012年8月に『HANABI』でデビューして以来、約6年間にわたって活動してきた原さんだが、この度、歌手活動に終止符を打つことを決めた。その最後を見届けようと、会場には多くの観客が詰めかけた。

 ライブの幕開けは、原さんのナレーションによるバンドメンバーの紹介から。このナレーションは、毎回趣向が凝らされているが、今回はサッカー日本代表になぞらえてのものとなった、最後に「声優界の点取り屋。センターフォワード・原由実」と自身の名前を呼びながら入場すると、客席から大きな歓声が上がった。

 自身の“原点”をテーマにした『Place of my life』で口火を切った原さんは、改めて今回のライブの意気込みを語る。ライブの開催はもともと予定になく、ラストアルバムを発売してアーティスト活動を終える予定だったが、ファンからの要望が高かったことを受けてスタッフが尽力し、実現に漕ぎ着けたという。さらに原さんは、「出した曲を全部歌いたい」、「声が枯れても、歌い切りたい」と決意を述べた。

 ラストライブに際しては、原さんの衣装をリクエストするという企画も行われていた。原さんがいままでにライブやミュージックビデオで着用した衣装の中から、ラストライブで着てほしいものをファンが選ぶという内容で、原さんが最初に着ていた赤いチェックの衣装は、2015年のバースデーライブのときのものだ。今回は、これを含む4つの衣装が投票によって選出され、最初に着ていた『crossover』〜『Spiral Moment』〜『Dear Blue Sky』〜『「好き。」と言われるまでの5分間』〜『Oh love to ya!』〜『虹色』のメドレーと、『いばらの灯々』のショートバージョンの2曲が終わると、原さんはさっそく着替えに向かう。その間は、歴代ミュージックビデオのメイキング映像がモニターに映し出された。

 ファン投票で第1位に輝いたという花柄の衣装に着替えて再び登場した原さんは、ライブ恒例となっている弾き語りに挑戦。中島みゆきの『糸』をカバーしたとき以来となるピアノを使い、『トワイライトに消えないで』の弾き語りに臨んだ。おぼつかない手つきで、かつ0.5倍速ではあったものの、一生懸命に取り組むその姿に、ファンからは大きな拍手が起こった。なお、使った楽譜は紙飛行機となり、客席に投げ込まれた。

 『心に咲く花』〜『if you…』〜『Blue Moon』〜『Rose on the Brest』〜『BANG! BANG!』と続くメドレーから、ショートバージョンの『Butterfly Effect』、そして『HEART LETTER』の3曲が披露されると、再び着替えの時間。今度は、ラストライブのリハーサルの様子を収録した秘蔵の映像が公開された。

▲「全部の衣装の中でこれがいちばん好き」と語る原さん。投票の結果はダントツだったそうで、「みんなと私の気持ちはリンクしている」とも。

 映像が終わると、原さんは今回のライブ用にあつらえられた、えんじ色の衣装に身を包んで登場。「えんじ色の衣装を最後に着るのは、運命的なものを感じる」と語りつつ、『YOU&ME』、『桜、月華に舞う』、そしてメドレー((『蛍火』〜『moonlight story』〜『水の中のファンタジー』〜『Like Flowers』〜『キミとの未來』)、『夕凪』(short size)の4曲を歌った。『桜、月華に舞う』では、尺八奏者の田野村聡氏が加わり、力強い音色を響かせた。

 3度目の着替えから戻ってきた原さんは、『HANABI』の白い衣装にチェンジし、『風のオーケストラ』(ショートサイズ)、『オレンジ色の季節』、そしてメドレー(『DRIVER’S HIGH』(L’Arc~en~Cielカバー)〜『In the rain』〜『天ノ紅』〜『Intention』〜『Lights in the sky』〜『プリズムレイン』)、そして『Snow Drops』の4曲を歌い上げる。すると、「いまのよかったー!」という言葉とともに今井麻美さんが登場! 原さんと同じ、『HANABI』の衣装に身を包んだ今井さんは、原さんに花束を手渡すと、当時の思い出を振り返った。その後はもちろん、ふたりで『HANABI』を艶やかに歌い、大きな拍手を誘った。

▲今井さん(写真下段中央左)のライブ出演は、原さんの希望だったという。

 着替えの合間の映像では、このライブのために撮り下ろされたコメント映像も。「リハーサルで食べたガストのお弁当がおいしかった」という感想が、いかにも原さんらしい。

 ライブTシャツに着替えた原さんは、最後のブロックに臨む。ここで披露されたのは、『トワイライトに消えないで』に、『splash mind』と『improvisation』のショートバージョンを合わせた3曲。『トワイライトに消えないで』は、テレビアニメ『俺がお嬢様学校に庶民サンプルとしてゲッツされた件』のエンディングテーマでもおなじみ。原さんは曲後に、「テレビからはらみーの声が聞こえてきてうれしい」というファンからの声に喜んだと語り、さらにこのときの出会いが、いまの仕事にもつながっていると明かした。

 そうして、いよいよライブも最終盤。最後の曲を歌う前に、原さんはファンへの手紙を朗読した。

大好きなみんなへ。

 こうやってみんなにお手紙を書くのは、1stライブ以来ですね。
 あのころは、ソロライブに対して、自分でできるのかなって尻込みをしていた私が、みんなのおかげで一歩踏み出すことができて、その感謝の手紙をお手紙に綴りました。
 今回のライブも、ラストアルバムを発表してから、「最後にライブが観たい」というみんなからのお声をたくさんいただいて、開催することを決めました。
 そう考えると、私の歌手活動は、みんなといっしょに作って、みんなといっしょに歩んでこられた6年間だったんだなって思います。
 リリースイベントで、みんなでいっしょになってゲームをして遊んだり、握手会やお渡し会で、私が時間をオーバーするくらいみんなとの話に夢中になったり。
 体調を崩して歌が歌えなくなってしまって、急遽お渡し会に変更してしまったときも、「大丈夫だよ」ってみんなが支えてくれたり。
 バースデーイベントでインフルエンザになって、みんなにいっぱい迷惑をかけたときも、みんな不満なんてぜんぜん言わず、私の心配をしてくれて、励ましのメッセージをくれたり。

 私は昔から、本当に不器用で、人がすぐできることでも、自分だけなかなかできなかったり、失敗して迷惑をかけてしまうこともたくさんあったのですが、そんな私がこの6年間、歌手として歩んでこられたのは、支えてくれたスタッフさん、家族、先輩、そしていつもたくさんの愛をくれるみんながいたからです。
 みんながいたからこそ、乗り越えられたことがたくさんあって、みんながいたからこそ、困難にも立ち向かっていきたいと思いました。
 歌手活動を辞めると決めたとき、そんな大好きなみんなと直接お話ししたり、過ごす時間が減ってしまうのかなと考えたとき、それは少し嫌だなって思っちゃいました。
 でも、これから自分が声優としてどうなっていきたいのか。どういう人生を歩んでいきたいのかと考えたときに、このままではだめだと思いました。

 私の夢は、生涯声優です。

 息長く活動したいなら、もっとナレーションの勉強を練習しなきゃいけない。お芝居の幅も広げなきゃいけない。まだまだ勉強しなきゃいけないことが山ほどあります。
 移り変わりの激しい世界で、来年の上半期ぐらいの予定はなんとなく見えていても、再来年自分が何をしているのかわからない。お仕事ができているのかもわからない。必要とされていなければできないお仕事ですし、体だって元気でなくちゃいけません。
 私がいるのは、そんな世界です。
 務めていた郵便局を退職して、大好きな家族、友人、大好きな大阪を離れて、目指した世界です。
 思うようにできなくて、悔しい思いや、落ち込むこともたくさんありますが、どんなに辛くても、前に進みたいと思える世界です。
 だから私はこれからも、いま自分ができることを考えて、向き合って、前に進んでいきたいと思っています。

 きっとこの先、思うようにいかないこともたくさんあると思いますし、くじけそうになることもあると思います。
 でも、きっとそんなときに、みんなと作ったこの6年間、そして声優活動を始めてからできたみんなとの大切な思い出が、私の心を支えてくれるんだと思います。

 その大切な思い出を、これからもみんなといっしょに作っていけるよう、精一杯がんばります。それがきっと、いつも応援してくれるみんなに、私ができる恩返しだと思うから。だから、みんなが落ち込んだり、悲しい気持ちになったときに、私が歌ってきた曲や、イベントやライブでの楽しい思い出が、みんなを支えることができたなら、このうえなく幸せです。

 まだまだ未熟な私ですが、自分自身とまわりの人たちと、そうして応援してくださるみんなを幸せにできるよう、これからも前向きに、自分らしくがんばりたいと思います。
 こんな私を、これからもよろしくお願いします。

みんな大好き。

原由実

ファンへの思いがあふれた原由実さんの1stライブ“Catch my voices”をリポート

2014年7月27日、東京・渋谷の渋谷WWWにおいて開催された、原由実さんの1stライブ“Catch my voices”をリポート。

 涙声になりながら手紙を読み終えた原さんに、会場は大きな拍手を送る。そして最後の曲が始まった。原さんが自分の思いを込めてフルコーラスを作曲した『あふれる想い』だ。ありったけの思いを込め、涙をこらえながら歌う原さんが「ありがとう!」と絶叫すると、再び大きな拍手が巻き起こった。

 出演陣がサインボールを客席に投げ入れ、いよいよライブも終わり……といったところで、原さんと今井さんが改めて感想を語り合う。ここで原さんは、デビューとラストの両方ともを今井さんといっしょに飾れたことを感謝。するとその言葉に感激した今井さんが涙を流す。そんな今井さんの「由実がいなくなっちゃうの寂しいよ!」という言葉に、原さんは「(今井さんが)東京の家族だもん! 離れるわけないじゃん!」という言葉をかけ、お互いに抱きしめ合った。

 ライブの最後は、原さんがひとりで挨拶。「本当にわたしは幸せでした」と語り、そして今後も声優活動をがんばっていくと述べた。
 こうして、原さんの歌手活動を締めくくるライブが幕を閉じた。

 自分の思いや考えを人に伝えるというのは、とても難しいことだ。伝え方によっては、誤解が生まれることもある。今回、原さんがアーティスト活動を終えることも、人によってはネガティブな捉えかたをするかもしれない。
 だが、「大好きなみんなへ」から始まる手紙には、彼女の前向きな姿勢がしっかりと綴られていた。原さんの夢は“生涯声優”。ひとりの表現者として生きていくために、みずから決断したことだった。
 そんな彼女の決断が語られた瞬間、会場からは温かい拍手が送られた。手紙に綴られていたのは、真っ直ぐで不器用な彼女の想い。しかし、その言葉は、不器用だからこそ胸を打つ。SNSなどでも、「あのはらみーの言葉を聞いて、吹っ切れた」というファンがいたが、原さんは自分の言葉で思いの丈を伝え、そうした向きを払拭したのだ。
 アーティスト活動が終わるのは、ファンにとっては少しさびしいかもしれない。だが、声優として、これからも長く活動を続けてくれるのならば、それはとても喜ばしいことだ。おそらく、皆さんは“歌手・原由実”のことが好きだと思うが、それ以上に“人間・原由実”が好きなはず。であればぜひとも、これからも応援を続けてほしい。そして、当番組『原由実の◯◯放送局 大盛』も、原さんの素顔を全力でお伝えしていきます!

■原由実ファイナルソロライブ「Message」 セットリスト
01. Place of my life
02. メドレー(『crossover』〜『Spiral Moment』〜『Dear Blue Sky』〜『「好き。」と言われるまでの5分間』〜『Oh love to ya!』〜『虹色』)
03. いばらの灯々(half size)
04. トワイライトに消えないで(ピアノ弾き語り)
05. メドレー(『心に咲く花』〜『if you…』〜『Blue Moon』〜『Rose on the Brest』〜『BANG! BANG!』)
06. Butterfly Effect(short size)
07. HEART LETTER
08. YOU&ME
09. 桜、月華に舞う
10. メドレー(『蛍火』〜『moonlight story』〜『水の中のファンタジー』〜『Like Flowers』〜『キミとの未來』)
11. 夕凪(short size)
12. 風のオーケストラ(short size)
13. オレンジ色の季節
14. メドレー(『DRIVER’S HIGH』(L’Arc~en~Cielカバー)〜『In the rain』〜『天ノ紅』〜『Intention』〜『Llights in the sky』〜『プリズムレイン』)
15. Snow Drops
16. HANABI
17. トワイライトに消えないで
18. splash mind(short size)
19. Improvisation(short size)
20. あふれる想い