この度はクロバーメールマガジンをご講読いただきありがとうございます。ソーイング、手あみ、パッチワーク・キルト、刺しゅうなど、手づくりに関する新しい情報をいろいろとご提供していきたいと考えています。これからもクロバーメールマガジンを、よろしくお願い申し上げます。



クロバーメールマガジン第36号

■特集■
お手玉遊びで世代を超えたコミュニケーション
― 第13回全国お手玉遊び神戸大会が開催 ― (T.G)

◆テレビゲーム脳の恐怖
8月27日に文部科学省から「生徒指導上の諸問題の現状について」と題する報道発表がありましたが、それを読んで大きな衝撃を受けました。2003年度の公立小学校の児童による校内暴力は1600件を数え前年の3割近く異常ともいえる増加をしたこと、そして小・中・高校を合計すると校内暴力は3100件強に達したことは、水面下にある数字を考慮すると、ひじょうに憂慮すべき事態が学校で生じていると考えざるを得ません。最近の子供はすぐキレるといわれていますが、まさに、それを実証するような数字が示されました。

すぐキレる子供や若者、電車の中で人目もはばからず化粧をする女性、駅や地下への階段あるいは電車の中で座り込む若者、公衆の面前で抱き合っているカップル、などなど、最近こんな光景が増えたと思いませんか。

それは、テレビゲームを毎日続けることによって脳の前頭前野が機能低下したことが原因の1つであると、日本大学の森昭雄教授は「ゲーム脳の恐怖」(NHK出版 生活人新書036)の中で報告しています。

森教授は、痴呆の人の脳波を調べた結果、睡眠中でないにもかかわらず脳の前頭前野から出るβ波(脳細胞の働きを示す脳波)とα波(脳が睡眠などで安らいでいる時に出る脳波)のレベルが重なっていることを発見。そして、ある時、テレビゲームをしている子どもの脳波を調べたところ、痴呆の人と同じような結果を得たとのことです。森教授はテレビゲームによって前頭前野の働きが低下することを、この本を通じてお父さんやお母さんだけでなく、テレビゲームをしている子どもたち自身にも知ってもらいたいと訴え、そして危険な傾向に警鐘を鳴らしています。

同書によると、「小学校低学年あるいは幼稚園児から大学生になるまで、週4~6回、1日2~7時間テレビゲームを」(前掲書)を続けると、「ゲーム脳人間」になり、「前頭前野の脳活動が消失したといっても過言でないほど低下」(前掲書)してしまうそうです。そして、「前頭前野の機能が低下すると、判断力などがなくなり、状況や周囲に配慮しない行動をとるように」(前掲書)なり、「自分勝手な態度や非常識な言葉づかい、暴力的行為などがその典型的な例」(前掲書)としてあげることができると指摘しています。

この本を読むと、「ゲーム脳」の恐ろしさがひしひしと迫ってきます。森教授が、日頃からテレビゲームに熱中している子どもにテレビゲームをしている時の脳波を見せたところ、1分半もしないうちに「僕、頭が痛いよう」といってゲームを止めてしまったそうです(前掲書)。子ども心にも、その異常にショックを受けたのでしょう。

まだまだご紹介したいことがいっぱいありますが、紙数の都合上、ここまでに留めますが、この本のご一読をお勧めします。まさに「ゲーム脳の恐怖」に暗然たる気持になります。

では、一旦ゲーム脳になってしまったら元に戻ることができないのでしょうか。森教授は、お手玉遊びが前頭前野の機能を回復させる効果的方法のひとつであることを発見しました。「テレビゲーム歴10年以上のゲーム脳人間タイプの大学3年生に、毎日5分間、2週間ほどお手玉を3個使っておこなわせる実験をしました。計測をしてみると、前頭前野のβ波のレベルが改善し、上昇していた」(前掲書)結果がでました。

そして、「お手玉は手軽にでき、ノルアドレナリン神経系やドーパミン神経系を働かせ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉のかなり広範囲の連合神経回路を活性化できる、もっともよい方法のひとつです」(前掲書)と結論付けています。

下記サイトでも、森教授の「ゲーム脳の直し方」を紹介しています。
(C)講談社 Web現代2002年11月20日号
http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2002_11_20_2/content.html

◆日本のお手玉の会

そのお手玉遊びの啓蒙と普及に真剣に取組んでいる人たちがいます。去る9月19日(日)、お手玉遊びのビッグイベント「第13回全国お手玉遊び神戸大会」が神戸市須磨区のグリーンアリーナ神戸で開催されました。なお、この大会は来年には10周年を迎える阪神・淡路大震災復興の記念事業の一環として「ありがとう そして未来へ」をテーマにしています。

お手玉遊びを子どもたちとともに始め、全国大会にまで広めた端緒は愛媛県新居浜市のボランティア「アメニティ倶楽部」の人たちです。別子銅山でよく知られる新居浜市は瀬戸内海に面した工業都市として戦前から戦後にかけて繁栄を続けてきました。ところが、1980年頃から構造不況に見舞われて、街は重苦しい雰囲気に包まれ、人々の心はすさんでいきました。

それを打破して街の活性化と心のケアを目指そうと、ボランティア「新居浜アメニティ倶楽部」が誕生し、議論と検討を重ね紆余曲折を経た結果、お手玉遊びという日本の伝承遊戯に辿り着きました。お手玉遊びは、人と人のコミュニケーションや挨拶、ゲームのルールを守るという公徳心、お手玉の手づくりによる心のぬくもりなど、その良い面が数多くあり、その普及活動を続けることによって新居浜市に再び活気が戻りました。

そんなボランティアの地道な努力が、1992年、遂に「第1回全国お手玉遊び大会」になって実を結びました。これを機に「日本のお手玉の会」が発足して全国的組織へと拡がり現在は38支部を数えます。

「日本のお手玉の会」のホームページ
http://www.shikoku.ne.jp/otedama/

その中でも兵庫県には8支部があり、今回の神戸大会を主催した「神戸お手玉の会」発足のきっかけは1997年に起きた須磨区竜が台地区の児童殺傷事件でした。同地域に住んでいる同会の北村義雄事務局長によると「親子のふれあいや住民同士の交流そして心のケアの重要性を痛感し、少しでもそれらに役立つものとして地域活動にお手玉遊びを取り入れ、1998年10月に『神戸お手玉の会』を結成した」とのことです。

現在の活動内容は、神戸市須磨区竜が台の地域福祉センターで月2回の定例のお手玉練習会を行なっており、それ以外には随時、神戸市はじめ周辺地域の幼稚園、小学校、児童館、高齢者福祉施設などでお手玉遊びやお手玉の作り方を指導しています。その指導には地域の高齢者にもお願いしており、彼らに活動の場を提供するとともに積極性と指導性を養うことにも効果が出てきています。

「神戸お手玉の会」のホームページ
http://www.ne.jp/asahi/kobe/otedama/

◆第13回全国お手玉遊び神戸大会

1992年に新居浜市で始まった全国お手玉遊び大会は、第10回までは同市で行なわれて来ましたが、第11回からは他都市開催に移り熊本市、福岡市を経て、今年は前述のように神戸市で行なわれました。

今大会には21都府県92チームと小学生10チームが参加して、個人戦、団体戦でお手玉の技を競いました。「日本のお手玉の会」の藤田石根会長の「競技ではあるけれど、遊び心を忘れないで和やかに心豊かになるように、そして、お手玉が喜んで宙に舞うように楽しんで下さい」という挨拶に象徴されるように、緊迫感がある中にも競技を楽しむ笑い声に溢れた大会でした。

小学生もお年寄りも若者も、そして男も女も、それこそ老若男女がそれぞれ個性ある得意のスタイルでお手玉を楽しんでいる光景は、本当に見ている側も心を和ませてくれます。勝っても負けても、お手玉を落としても、笑い声と歓声と拍手が湧き上がり、会場は終日楽しい雰囲気に包まれていました。

また、音楽に合わせてお手玉を操りながら踊る演舞という競技では、「銀座カンカン娘」と「世界に1つだけの花」の2曲によるダンスが披露され、曲に合わせたリズミカルなお手玉の技は観客を魅了していました。

別会場では伝承遊びコーナーがあり、お手玉の縫い方教室、段位認定、遊び方やけん玉とコマ遊びなどのコーナーがあり、楽しい時間を過ごすことができるようになっていました。
次回は、2005年9月4日(日)に岐阜県美濃加茂市で開催されます。

個人戦
小学生の個人戦
小学生の団体戦
銀座カンカン娘の曲に合わせて

◆お手玉の歴史

ところで、お手玉の歴史は「お手玉」(監修=日本のお手玉の会 文=大西伝一郎 出版社=文溪堂)に詳しく掲載されていますが、簡単にご紹介します。
同書によると、お手玉の原型は羊の距骨(きょこつ=かかとの骨)で、古代ギリシャ時代にゲームに使われていたものが大英博物館に展示されています。「羊の距骨をつかったお手玉は、やがて、シルクロードをとおって、インドや中国にもつたえられ」(前掲書)、そして、奈良時代にわが国に伝わりました。法隆寺の宝物に立方体の水晶16個でできている「石名取玉」(いしなとりだま)があり、これを使って聖徳太子がお手玉遊びをしたのではないかといわれています(前掲書)。

このような「石投」(いしなご)のお手玉が庶民の間に広まり、やがて江戸時代後半になると布のお手玉が登場し明治時代にかけて全国に普及してゆきました。
しかし、日本経済の高度成長と機を一にして、テレビの普及、子どもたちの遊びの環境変化などによってお手玉遊びは次第に忘れられてしまいました。そして、長い間、日本人の遊びから姿を消していたお手玉に再び注目したのが、「日本のお手玉の会」であることは前述した通りです。

なお、同書には「お手玉の作り方」「お手玉の遊び方」「世界や日本のお手玉のいろいろ」などが掲載されていて、お手玉の総合ガイドブックとして貴重な書籍です。
また、同様の内容が、「日本のお手玉の会」のホームページにも掲載されていますので、合わせてご覧下さい。


◆お手玉の効用

お手玉の効用は、冒頭の森教授が解明した脳の前頭前野の機能回復がありますが、それ以外に、「日本のお手玉の会」と「神戸お手玉の会」のホームページから概略をまとめました。

1. 右手と左手を交互に使うことによって脳に刺激を与え、ぼけ防止に効果がある。
2. お手玉遊びの笑いによって高齢者の顔が生き生きして豊かな表情になる。
3. お手玉を握ったり放り投げたりして、知らず知らずのうちにリハビリ効果が出る。
4. お手玉を手づくりして楽しむことができる。
5. 世代を超えて一緒にお手玉遊びができ、多世代交流ができる。

さらに、2004年1月22日の科学雑誌natureには、ジャグリング(お手玉のようにボールやボーリングのピンのようなものを放り上げて回転させる曲芸)が脳細胞の増加に効果があるという研究結果が掲載されています。

このように簡単に作ることができ、手軽に遊ぶことができるお手玉遊びは、わが国の伝承遊戯というノスタルジックな視点だけでなく、現代に抱える問題を解決するきっかけになる先人が創造した遊びとして見直すことができます。

あなたの周りにゲーム脳の人はいませんか。脳の前頭前野が活発に働き出す小学生でテレビゲームに夢中になっている子どもはいませんか。最近、前頭前野の機能が衰えたと感じている人はいませんか。
そんな時、ぜひ、お手玉を作ってみんなで遊んでみたらいかがでしょうか。お手玉遊びによって問題が解決するかもしれません。




新商品情報:職人気分?! ビーズクチュール
― ビーズやスパンコールをはやくきれいに刺しゅう ― (M.S)

華やかなビーズやスパンコールの刺しゅうって、とってもあこがれますよね。でも時間と手間がかかりそう…と思っていらっしゃる方が大半だと思います。

ところが9月に新発売された「クロバービーズクチュールニードル」は専用ニ-ドルを使ってビーズやスパンコールを「早く」「たくさん」そして「きれい」に刺すことができるおどろきの商品です!

特に連続して刺すのが得意で、慣れてくればビーズ針で刺しゅうする時のスピードと比べて3~4倍も早いのですよ!

アトリエで職人が使っている針を使いやすく改良してありますので、むずかしいとされていた技法も家庭で楽しめるようになったのです。

ビーズやスパンコールを刺しゅうするのはもちろん、糸だけでステッチをしたり、チェーンステッチもできます。

クロバービーズクチュールニードルで刺しゅうした作品が次の2誌に掲載されています。ぜひ、ご覧下さい。

「刺繍通信 vol.5」
「tik tik vol.5」

「職人気分?! ビーズクチュール」の関連情報ページ
http://www.clover.co.jp/seihin/sisyu_01.html



連載:ギャラリーへ行こう! その7
― 手づくりのしあわせ発見「くりくり展」― (M.S)

入り口
「くりくり展」が10月3日(日)までCOCOdeCO(ココドコ)で行なわれています。

東京目白にある大正時代につくられた木造家屋と落ち着いた雰囲気の中庭がある場所にCOCOdeCOはあります。


作品の数々
周りは普通の住宅街!本当に普通のお家の敷地内から「ここから入ってい いのかな?」とドキドキしながら入ります。するとそこは大きな窓からの 自然な光と手づくりの照明器具のやさしい光が調和したなつかしい感じの するギャラリー。

まるで初めから自分の家だったかのような落ち着く空間でゆっくりとした 時間を過ごすことができます。

モビール
「くりくり」は手づくりをテーマにした季刊誌です。そのVol.2の「コロボックルのデイリーバッグ」のページで、クロバーはコラボレーションさ せていただきました。

この展示会には54名の作家が参加していて、「くりくり」の誌面のイメージに合ったあたたかみのある作品ばかり。ひとつひとつの作品がどれも 表情豊かで愛くるしく、アンティークの家具ととてもなじんでいます。


イシイリョウコさんの指人形
その中でも人気なのがVol.2の表紙を飾ったイシイリョウコさん。モ~レツなファンがたくさんいて、その中には作品の指人形を全種類そろえるほど熱狂的な人もいるそうです。
このすてきな作品と空間をぜひみなさんも体感してください。たくさんの発見がありますよ!

「COCOdeCO」のホームページ
http://www.mecha.co.jp/cocodeco/



イベント情報: 自分で作る、布合わせバッグ展
― 素材、色、柄を自由にミックスしたバッグがいっぱい ― (M.S)

人気の手づくり本「自分で作る、布合わせバッグ1~3」(アスコム刊)で紹介された作品をはじめアーティスト達の個性的な作品の展示・販売が9月22日(水)~27日(月)に伊勢丹新宿店で行なわれました。

私がバッグを作る時は必ず内ポケットは3つで、口が大きくて物の出し入れがスムーズにでき、通勤ラッシュでへこたれないものというように機能重視+個性にこだわりますが、展示作品は、ラッシュにもまれることやカバンのシルエットが崩れるほど荷物も入れるというような心配とは無関係な作品ばかり。


自由な発想の作品の数々
ザクザクと
ちょうちょバッグ
そんな心配をしないで、自分のお気に入の布で作ったバッグを持つことができれば、どれだけHAPPYになれるかがテーマのような作品で、見ている方も心がウキウキしてきます。

思いのままに工作感覚でザクザク縫ってあったり、わざと布端のほつれを生かしたり、ペイントしたり、形もユーモアたっぷりです。蝶々をイメージした形のショルダーバッグは、身につけると意外に体になじむんですって!

会場はアーティストごとにブースが分けられ会場限定キットやオリジナルグッズ、なんと実際の作品に使われた生地のセットもあったり、ブースでは憧れのアーティストと直接お話ができたりとファンにはたまりません!

アーティストによる体験講座も行なわれ、colobockle(コロボックル)こと立本倫子さんは白い布をキャンパスに見立ててフェルトや布や糸を貼り合わせたコラージュバッグを講習していました。参加している方は布をランダムに選び、すぐに作業を始める方もいればじっと頭の中でイメージを膨らませている方もいます。

バッグが完成
立本さんは「簡単な形の組み合わせるだけでもヒントになりますよ。例えば四角を並べるだけでかざぐるまになったり」とアドバイスをした途端、ひとりひとりの個性が出始めて皆さんとことんこだわり、全員がバッグの片面のデザインを決めるまで数時間を要していたほどの熱の入れようでした。

お客様の中には「娘にプレゼントするためのバッグを作りたい」と群馬から来られた方もおり、みなさんの作品に対する想いが着々と完成へとつながっていたのでした。

展示を見た後、素材や色や柄のミックスを楽しむ自由な感覚のバッグが無性に作りたくなり、急いで家へ帰ったのはいうまでもありません。

「自分で作る、布合わせバッグ展」のホームページ
http://www.ascom-inc.jp/nunoten.html

「コロボックル」さんのホームページ
http://www.colobockle.jp/