8月27日に文部科学省から「生徒指導上の諸問題の現状について」と題する報道発表がありましたが、それを読んで大きな衝撃を受けました。2003年度の公立小学校の児童による校内暴力は1600件を数え前年の3割近く異常ともいえる増加をしたこと、そして小・中・高校を合計すると校内暴力は3100件強に達したことは、水面下にある数字を考慮すると、ひじょうに憂慮すべき事態が学校で生じていると考えざるを得ません。最近の子供はすぐキレるといわれていますが、まさに、それを実証するような数字が示されました。
すぐキレる子供や若者、電車の中で人目もはばからず化粧をする女性、駅や地下への階段あるいは電車の中で座り込む若者、公衆の面前で抱き合っているカップル、などなど、最近こんな光景が増えたと思いませんか。
それは、テレビゲームを毎日続けることによって脳の前頭前野が機能低下したことが原因の1つであると、日本大学の森昭雄教授は「ゲーム脳の恐怖」(NHK出版 生活人新書036)の中で報告しています。
森教授は、痴呆の人の脳波を調べた結果、睡眠中でないにもかかわらず脳の前頭前野から出るβ波(脳細胞の働きを示す脳波)とα波(脳が睡眠などで安らいでいる時に出る脳波)のレベルが重なっていることを発見。そして、ある時、テレビゲームをしている子どもの脳波を調べたところ、痴呆の人と同じような結果を得たとのことです。森教授はテレビゲームによって前頭前野の働きが低下することを、この本を通じてお父さんやお母さんだけでなく、テレビゲームをしている子どもたち自身にも知ってもらいたいと訴え、そして危険な傾向に警鐘を鳴らしています。
同書によると、「小学校低学年あるいは幼稚園児から大学生になるまで、週4~6回、1日2~7時間テレビゲームを」(前掲書)を続けると、「ゲーム脳人間」になり、「前頭前野の脳活動が消失したといっても過言でないほど低下」(前掲書)してしまうそうです。そして、「前頭前野の機能が低下すると、判断力などがなくなり、状況や周囲に配慮しない行動をとるように」(前掲書)なり、「自分勝手な態度や非常識な言葉づかい、暴力的行為などがその典型的な例」(前掲書)としてあげることができると指摘しています。
この本を読むと、「ゲーム脳」の恐ろしさがひしひしと迫ってきます。森教授が、日頃からテレビゲームに熱中している子どもにテレビゲームをしている時の脳波を見せたところ、1分半もしないうちに「僕、頭が痛いよう」といってゲームを止めてしまったそうです(前掲書)。子ども心にも、その異常にショックを受けたのでしょう。
まだまだご紹介したいことがいっぱいありますが、紙数の都合上、ここまでに留めますが、この本のご一読をお勧めします。まさに「ゲーム脳の恐怖」に暗然たる気持になります。
では、一旦ゲーム脳になってしまったら元に戻ることができないのでしょうか。森教授は、お手玉遊びが前頭前野の機能を回復させる効果的方法のひとつであることを発見しました。「テレビゲーム歴10年以上のゲーム脳人間タイプの大学3年生に、毎日5分間、2週間ほどお手玉を3個使っておこなわせる実験をしました。計測をしてみると、前頭前野のβ波のレベルが改善し、上昇していた」(前掲書)結果がでました。
そして、「お手玉は手軽にでき、ノルアドレナリン神経系やドーパミン神経系を働かせ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉のかなり広範囲の連合神経回路を活性化できる、もっともよい方法のひとつです」(前掲書)と結論付けています。
下記サイトでも、森教授の「ゲーム脳の直し方」を紹介しています。
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