総務省は19日、自宅近くで食料品などの購入が難しい「買い物弱者」対策として実施されている、移動販売や宅配といった事業の約7割が実質的な赤字とする調査結果を公表した。商店が減って対象地域が広がる一方、人口減少で売り上げが伸び悩んでいるため。事業の継続を断念した例もあり、総務省は関係官庁に支援強化を要請した。
これらの事業は民間企業やNPO法人、社会福祉法人などが手掛けており、国や自治体が補助金などで支援しているケースもある。
総務省が2016年に継続中の193事業について15年度の収支を調べたところ106は赤字だった。「黒字または均衡」と答えた30事業も補助金などで赤字を穴埋めしており、7割に当たる136事業が実質的な赤字だった。
このほか補助期間が終わって採算が悪化したなどの理由から、11~15年度に31事業が終了した。
また事業者の要望を聞いたところ、移動販売車の手洗い設備設置を義務付けた厚生労働省の規制について、商品を置く場所が狭くなるため緩和してほしいとの声もあった。
総務省は「国に明確な所管府省がなく、連携態勢もない」と指摘。今後、過疎や高齢化の進行で買い物弱者の増加が見込まれるとして、国や自治体に支援や規制の在り方を検討するよう求めた。
調査は、全国の都道府県や市町村のうち87自治体を対象とした。〔共同〕
買い物弱者 過疎化が進む地域などで、地元の商店が減り、公共交通機関や自家用車も利用できず、食料品など日常的な買い物が難しい人。国の統一的な定義はなく、経済産業省は2014年時点で700万人程度、農林水産省は10年時点で372万人程度と推計する。高齢化に加え、郊外型スーパーの増加による商店街の衰退を背景に、都市部でも増加している。〔共同〕