2019年からのサマータイムの導入には反対です。
あと10年くらいかけて議論と準備をするなら再考しますけど、来年は無理です。再来年でも無理です。
でも、SNS上でよく見られる、IT業界側の論理によるダメ出しは、たぶん通じないだろうなと思っています。理由は簡単で、サマータイムの導入を考える為政者たちは、IT業界の論理や価値観なんて、知りもしないし興味もないだろうから。
むしろ、IT業界の論理を振りかざすほど、「それ、中の人たちの、わがままなんじゃないの?」みたいな明後日からのトンチンカンな批判が降ってくることさえ考えられます。
繰り返しますが、ぼく自身はサマータイム導入には反対ですし、それゆえにIT業界の論理によるサマータイム導入への反対論には、何の異論もないんです。というか100%賛同です。
でもそれじゃ為政者には届かないだろうな、ということです。
じゃあどうすればいい?その時に立てるべき理屈は、為政者の考え方に近い論法で、「やっぱサマータイム無理だわ」と思ってもらうことです。
たとえば、土建業的なパラダイム。こういうと土建業の皆さんには怒られてしまいますね。数多ある仕事の中でも、無駄な公共事業を引き受けているような土建業、ということです。
サマータイム導入に賛成する為政者は、「エンジニアが大変って言っても、タダでやれって話じゃないんだから誰かが儲かるんだし、それって公共事業みたいなもんじゃないか」と考えているんじゃないかと思うんですね。つーかそれが景気浮揚策だろケインズだろ、という話です。
いやいや、そうじゃないでしょ。だって無駄な公共事業って、無駄じゃないですか。特に、ちょっとした実証事業で「アチャーやっちまった」という程度ではなく、「時間」というもはやテクノロジー以前の「社会システムの根幹」を触りに行く話ですからね。影響は箱モノ失敗の比じゃない、かもしれません。
だとすると、こういうアナロジーはどうでしょう。
「穴掘って埋める」というのも確かに公共事業だけど、それって景気が悪くて失業者多数の時に有効な話であって、人手不足の今日にそれは通用しない。だからそれは投資じゃなくて単なる無駄、というより「無駄以上」かもしれない。
なにしろ、穴掘った後に埋めた土地って、地盤が脆くなりがちですよね。それと同じで、サマータイム導入を1-2年で何も準備のないところに導入するのって、どう考えても間に合わないし、「間に合わんわサーセン」といった跡に残るのって、脆弱化した社会基盤だと思うんですね。
そんなところに建てた家とか、絶対住みたくない感じ。そして地価も下がりますよね。だとしたらサマータイム導入は、無駄以上に害悪と言えます。
そのアナロジーで言いたいことは、「IT従事者にも死人が出るけど、そうじゃなくてユーザ側、つまり国民側に死人が出かねないですよ」「そして事故が起きたら信頼は失墜しますよ」ということです。たとえば飛行機とか新幹線とか、本当に大丈夫ですか、とか。
あるいはもっと安直に、利害対立を見せつけられればいいのかもしれません。それこそこのタイミングであれば、もし「サマータイム導入したら憲法改正に反対する人が増える」みたいな、いわば桶屋が儲かるっぽいロジックを見つけられれば、割といけるのかもしれません。
まあ、それもなかなか見つからないんですけどね。
何が言いたかったのかというと、相手の価値観を念頭に置きながら、いろいろ物を申す方が、実効性が高いんじゃないかということです。というか、そうじゃないと、止めるのに間に合わない。
あとは、IT従事者(と結果的に国民)の声明を守るために、IT業界側がサマータイム導入決定後に「サーセンやっぱ無理っす」というサボタージュを決め込むしかないかもしれない。でもそれはたぶん、IT業界の評判を落とし、IT軽視の風潮をまたぞろ拡大してしまうのでしょう。
とにかく「なんでITのこと知らないんだムキー!」という気持ちもわかるんですけど、それを嘆いている時間はないはず。だとしたら、もっと相手に直接届く言い方で物言いを重ねていく、ということが大事なんじゃないかなと思いました。
なお、こういうことを書くとあれこれ言われそうなので予めお伝えしておきますが、この記事の内容については、すでにこちら(リンク)で、上原先生をはじめとした心ある皆様とは話しています。上原先生の取り組みは、ものすごくリスペクトしておりますので、念のため。