人口8万人ほどの愛知県蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館は、お金なし、知名度なし、人気生物なしという、いわゆる弱小水族館だ。だが、条件面だけ見れば「しょぼい」としか言いようのないこの水族館は、わずか8年前は12万人だった来場者数を40万人まで「V字回復」させた。その理由はどこにあるのか。個性集団とも言える飼育員たちの「チームワーク」と「仕事観」に迫り、組織活性化のヒントを探る――。
水族館で働きたい若者の志望動機は何だろうか。普通の水族館であれば、「魚をはじめとする生き物が大好きだから」になるはずだ。しかし、愛知県蒲郡市にある竹島水族館で働く竹山勝基(よしき)さん(23歳)の場合は違う。幼稚園のころからファンだった竹島水族館でとにかく働きたくて、就職3年目になる今もその気持ちは変わらないのだ。
「僕は魚の飼育だけに興味があるわけではありません。ここでいろんな仕事をやっていればそれだけでうれしいです。勤務シフトの作成など、みんなが忙しくて手が届かないところをやるのが僕の役割だと思っています。スタッフみんなが楽しそうに仕事をしているのが好きなんです」
就職3年目にして館長のような発言をする竹山さんの実家は静岡県浜松市にある。蒲郡市の竹島水族館までは車で1時間ほどの距離だ。親に連れて来てもらった幼い日の思い出を竹山さんは鮮明に覚えている。
「昔の竹島水族館は、アットホームな今とは違っておどろおどろしい雰囲気でした。薄暗い標本室や、エイやウミヘビがうじゃうじゃ泳いでいる水槽……。あの薄気味悪さも僕は好きでした」
実家近くには湖や川、雑木林があり、いつも魚や昆虫を捕まえて遊んでいた。そのうちに熱帯魚の飼育に夢中になり、高校時代はピラニアを8匹も飼っていたと竹山さんは振り返る。
「ピラニアは鱗(うろこ)がギラギラしていてキレイですよ。僕が川で獲って来た生きた魚を追いかけて食べるんです。野生の川の一部を切り取って家に持ってきたような非日常感が好きでした」
魚の飼育だけに興味があるわけではない、と言いつつも、竹山さんは普通の水族館員と同じぐらいには「生き物マニア」なのだ。
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