「保育園 入園 方法」「保育園 入れない」「育休 延長」「フルタイム 子育て 両立」「家事 時短」
子どもが生まれてからの検索履歴は、私の“戦い”の歴史そのものだ。
「育児は大変だ」と知っているつもりだったが、親になって初めてそれを痛感した。夫は仕事であまり家におらず、家事も育児もひとりでこなす生活。職場に復帰しても、家事・育児との両立は当たり前、「個人で頑張ってね」で済まされてしまう。正直、毎日ギリギリだ。
専業主婦かキャリアに邁進するか。この二択の間にあるはずの道を選ぶことがどうしてこんなに大変なのか。そう悩む母親は決して少なくないだろう。スタンフォード大学でMBAを取得し、投資ファンドでキャリアを積んでいたアメリカ人女性Vanessa Loder氏も同じだった。
「ずっと家で子どもたちと過ごすか、1時間に100マイルの速さでキャリアを前進させるか、その2つしか選択肢がないように思えた。」
そう振り返るLoder氏はその悩みを新たな取り組みへの原動力に変えた。テック企業を対象に、女性が働きやすい文化・制度づくりを支援する団体Parents in Tech Alliance (PTA)を立ち上げたのだ。
テック企業をターゲットにした理由は、彼らが最も女性の採用・定着に「失敗」しており、状況の改善に向けた投資に意欲的だからだという。
PTAの主な活動は7つに分類される。
1. ジェンダーに関わらず、すべての保護者が取得できる育休の提唱
2. 育児支援モデルの確立
3. マネージャートレーニングの開発
4. 個人を尊重する文化の推進
5. ROIを実証するためのデータ収集
6. 母親になる女性への支援
7. 子育て中の従業員コミュニティの形成
メンバーにはSalesforceやYelp、Uber、LinkedIn、Lyftなど名だたるテック企業の女性役員が揃う。彼女たちは定期的なミーティングで「働く母親としての普遍的な問題」を話し合う。具体的なソリューションを実行するまで、その悩みはPTA内だけで共有されるという。LyftのSarah Johal氏はミーティングで得た気づきから、社内の育児休暇制度の拡充を会社に働きかけ、制度の見直しを実現させた。
PTAは順調に規模を拡大しており、AirbnbやHotelTonight、Stubhubといった企業からも担当者が訪れている。今後は母親だけでなく父親の参加者も募る予定だ。PTAの活動がテック企業以外に広がっていくのも時間の問題かもしれない。
日本では46.9%の女性が出産を機に仕事を辞めているが、職場の環境さえ整っていれば、継続して働きたかったという意見も多い。母親の退職理由には「職場に育児と両立できる制度がなかった」「職場に理解がなかった」「休みが取りにくかった」といった職場事情が並ぶ。「育休を取るのが当たり前」な文化の情勢、時短やリモートワーク、子どもの看護休暇など、働きたい女性が働き続けられる仕組みが必要だ。
2017年の調査によると、日本企業における女性役員比率はたった3.7%に過ぎない。そんな日本だからこそ、PTAのように母親同士が悩みや課題を共有し、企業に対して変化を促すためのコミュニティが生まれてほしい。一人の働く母親として、そう切に願っている。