移民問題に「最終解決」を ナチスと同じ言葉使った豪議員に批判

アニング上院議員は自分の演説について謝罪しないと語っている Image copyright EPA
Image caption アニング上院議員は自分の演説について謝罪しないと語っている

オーストラリアのフレイザー・アニング上院議員が14日に議会で行った、人種を基にした移民制限を求める演説の中で、ユダヤ人を大量殺戮(さつりく)したナチス・ドイツが使用したことで知られる「最終的解決」という言葉を使ったことを受け、各方面から激しい非難の声が上がっている。

保守政党のカッター・オーストラリア党に所属するアニング議員は、議員就任後初めて議会で行った演説で、イスラム教徒などの受け入れを禁止すべきだと訴えた。

同議員の主張に反対する人々は、演説は「恥ずべき内容」だと非難したものの、アニング氏は謝罪の必要はないとしている。

アニング議員は演説の中で、「移民問題の最終解決は人々に支持されている」と述べた。

15日には、党派を超えた議員たちが、「人種差別的ヘイト(憎悪)演説」をしたアニング議員に対する問責決議案の可決に動いた。特に、「最終解決」という言葉の使用に加えて、オーストラリア国内のイスラム教徒や他の移民集団について「誤っていて、誤解を生み、心を傷つける発言」があったと非難している。

同国のマルコム・ターンブル首相は、ホロコーストで命を奪われた人々に関する「記憶への衝撃的な侮辱」をアニング議員がしたと述べた。

ターンブル首相はツイッターで、自分と同じ自由党に所属するアラン・タッジ議員の「フレイザー・アニングの移民に関する発言は、政府あるいは公正な意識を持つオーストラリア人の意見を反映しないものだ。我々は差別的でない移民制度を今後も維持する」と述べたツイートを引用しつつ、「アラン、その通りだ。オーストラリアは相互尊重に基づく、世界で最も成功した多文化社会だ。いかなる形の人種差別も我々は否定し強く非難する」とコメントした。

野党・労働党のトニー・バーク議員は、「今我々が今沈黙すれば、憎悪を主張する人々の意見が通る」とツイッターにコメントした。

緑の党のリチャード・ディ・ナターレ上院議員はツイッターで、「フレイザー・アニングの発言は不快で人種差別的で偏見に満ちていて、我々の社会では許容されない」とコメントした。

ホロコーストは1933~45年にナチスが行ったユダヤ人迫害を指す。ナチスは「欧州におけるユダヤ人問題への最終解決」だとして、600万人に上るユダヤ人の大量虐殺を行った。

アニング議員は15日、自分の言葉はホロコーストを念頭に置いたものではないと否定し、自らをユダヤ系オーストラリア人の擁護者だと語った。同議員は、「何も後悔していない。言ったことについて謝罪しないし、後悔しない」と述べた。

「扇動的」な演説

ポーリーン・ハンソン氏率いるイスラム教徒排斥を主張するワン・ネーション党に一時所属していたアニング議員は、1901年に始まり60年代まで続いた非欧州系の移民を制限する政策「白豪主義」の復活を主張した。

労働党のペニー・ウォング上院院内総務は、白豪主義は「当然のことながら、歴史のごみ箱の中に入っている」と語った。

地元紙シドニー・モーニング・ヘラルドは記事の中で、アニング議員による豪議会での初演説は、ハンソン氏が1998年にオーストラリアが「アジア人で埋め尽くされる危険に瀕している」と語って以来、「最も先導的な就任後初演説」になったと述べた。

オーストラリア統計局によると、オーストラリア国民の半数近くが海外で生まれたか、両親のうち1人が海外で生まれている。

所属政党の党首はアニング氏を擁護

アニング議員は昨年、別の上院議員の辞職を受けて繰上げ当選したが、2016年の国政選挙での獲得票数はわずか19票だった。

アニング氏が昨年から現在所属するカッター・オーストラリア党のボブ・カッター党首は、アニング氏の演説を「1000%」支持するとしたが、アニング氏はホロコーストについてあまり知らないのではないかと指摘した。

カッター氏は記者団に対して、アニング氏について、「彼は賢いが、歴史の本はあまり読んでいない」と述べた。

(英語記事 Fraser Anning: Australia MPs condemn 'final solution' speech

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