漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! 【アニメ・小説版オーバーロード二次】 作:疑似ほにょぺにょこ
<< 前の話
「では、今後の方針を──デミウルゴス、話すのだ」
「私が──宜しいのですか?」
主要の配下の集まった我がナザリック地下大墳墓の玉座の間。謁見と会議は、この世界に来て行ったものの中では一番の長さとなっている。すでに始めて2時間を超えていた。それほど大事なことだという事だ。
そしてつい先ほど現状の把握は終わった。続くはこれからの展望である。俺としては精々『バハルス帝国が突撃してこないかな』とか、『そういえばドワーフってこの世界に居るよな、仲良くしたいな』とか、『エルフって居るよな、会ってみたいな』とかその程度のものである。後はドラゴンの動向が気になるくらいか。
そのため詳しい展望を考えているだろうデミウルゴスに話をさせることにしたのだ。しかしデミウルゴスとしては(先々の予測を含めた展望のある)俺が予定を話すだろうと思って居たのか、少しだけ驚いた表情を俺に向けていた。
やめてくれ、俺はそんな先のことなど考えていない。そう内心に思っていても口に出せるわけがない。皆の考える『至高の存在としての姿』を失い、失望させるわけにはいかないのだから。
「そうだ。私には、私の予測を含めた展望もある。しかしそれだけではいけないのだ。お前たちが至高の存在と呼ぶ私の友と相談して居た時と同じだ。私が必要としているのは、ただ言われたことに頷くだけの人形ではないのだからな。お前たちにも希望や、予定と展望を少なからず考えているだろう。それを聞かせてもらいたいのだよ」
「なるほど。分かりました。では──拙い予測と展望ですが、話させていただきます」
何とか納得してくれたのだろう。俺から視線を外したデミウルゴスが皆に向けて話し始めた。その話とは、俺の予測を大きく外す物だった。
「ではまず、最も大きな展望を確認しておこう。皆も知っている通り、我々の──アインズ様の最終目的は世界征服だ」
(はぁっ!?)
思わず下顎が『かくん』と外れそうになった。いつ世界征服なんて決まったのだろうか。
しかし知らなかったのは俺だけだったのだろうか。皆当然とばかりに頷いている。ならば俺が否定するわけにはいかない。
「アインズ様は他のプレイヤーの存在を危惧して秘密裏に行動を続けられていたが、それでは埒が明かないとして御自分の存在を世界に知らしめる行動へと転換なされた。その最初の作戦が、此度行われる国家間の戦争である。これによってアインズ様の強さと偉大さを世界中に知らしめると同時に、漆黒の英雄モモンの認知度も大きく増やすことが可能だ。想定されている戦争は我らが服従しているという前提にあるリ・エスティーゼ王国と、バハルス帝国。これについてはアウラとマーレがうまくやってくれているだろう。そうだね、アウラ、マーレ」
デミウルゴスに呼ばれた二人は、びくりと肩を震わせた。どうしたのだろうか。アウラの煽りに加えてマーレのサポートがあれば、頻繁に国境で王国と戦をやっている帝国ならば簡単に派兵してくると思って居たのだが──
「も、申し訳ありません!今回、アインズ様のご指示によりバハルス帝国に派兵させるよう行動を起こしていましたが──」
もう土下座と言っていい程に平伏しながら、悲鳴交じりに言うアウラの言葉に『ざわり』と空気が震えた。そう、それはアウラたちが──
「つまり、君たちは失敗したと──今回バハルス帝国は派兵しないという事かね」
「はい──途中までは上手くいっていたと思ったのですが──突如派兵どころか、友好関係を結びたいとまで言い出したみたいで」
「『みたいで』ではないだろう。今回の作戦がどれだけ大事なのか二人とも理解していたはずだよ。これでは大きく方向転換を──」
「素晴らしい!!」
失敗は罪である。敗者には罰を。そういう雰囲気が充満しかけていた。だからこそ俺は大きな声で称賛した。叱責が飛ぶだろうと思って居たのだろう。静かに怒り始めて、少しづつ言葉に怒気が含まれ始めていたデミウルゴスを含め、皆がしんと静まり返った。
そもそも二人とも子供だ。幾ら煽りが上手くとも、皇帝を上手く操作できるわけがなかったわけだ。つまり、二人なら大丈夫だろうと思った俺の責任である。二人が悪いわけではない。──はずだった。
ぱん、とデミウルゴスが柏手を一つ打った。そういうことでしたか、と。
「なるほど。つまりアインズ様。今回アウラとマーレに渡された作戦は、失敗を前提となされていたということなのですね!」
「い、いや──成功しても失敗しても良いと思って居たぞ」
「なるほどなるほど。そういうことでしたか──」
どういうことですか、デミウルゴスさん。一人で理解して頷かないでください。
「デミウルゴスよ。お前一人理解していても仕方ないだろう。許可する。私の真の作戦を皆に伝えるのだ」
「はい、その栄誉を賜らせていただきましょう」
皆に教えるのだ。俺を含めた皆に。一体どんな理由があったのだろうか。凄いな、デミウルゴスの考えるアインズ様。少しは見習いたいものである。
「今回二人に与えられた作戦の真の意味──それは、皇帝が知者であるか、暗愚であるかを見極める事にあったのですね」
「う、うむ。そうだ──それで?」
「はい、二人に簡単に乗せられる程度の暗愚な皇帝であれば、内々から御するのは容易です。しかし現在の帝国は暗愚な皇帝が統治しているようには見えない。それならば既にプレイヤーが裏で操作している可能性が高いということになります。逆に皇帝が知者であれば裏にプレイヤーが居る可能性は限りなく低く、居たとしても配下として居るだろうということになります。つまり今回必要だったのは、皇帝を操れる私のような知者ではない。裏に隠れている可能性のあったプレイヤーの存在の確認と、それらから発する不測の事態に対応できる者だったということ。つまりアウラとマーレ、二人は最も適任だったという事です」
その通りだ、と鷹揚に頷く。なるほどなぁと感心しながら。そういえば暗愚な皇帝ならば、裏から操るプレイヤーが居てもおかしくない。だから暗愚であるか知者であるかの確認を行えば、裏にプレイヤーが居るかが分かる。そして知者であれば側近なり配下にプレイヤーが居る可能性が出てくる。その確認も行える。
そしてアウラとマーレならば、例えプレイヤーが複数人居て不測の事態が起こったとしても対応できるだろう。二人の連携によって対応できる幅はナザリック随一なのだから。
勿論俺はそんなことを考えていた筈もない。単純に手が空いていた二人に任せただけである。ゲームで言うなら待機状態あったキャラを使っただけだ。
「それで──アウラ、マーレ。プレイヤーの存在は確認できたかね」
「い、いえ──そういった存在は居ませんでした」
「皇帝に『じい』と呼ばれるフールーダというマジックキャスターがそこそこ能力がある程度でした。後は雑魚ばかりでしたね」
別に失敗したわけではないと分かったからか、死にそうな程に青くしていた顔も戻った二人は、元の調子で話してくれているようだ。
どちらかというなら責任は俺にある。なのに二人が泣きそうな顔をしているのは忍びなかったので、ほっと安堵出来た。
「しかしそういうことでしたら、ボク達にも話してくれたら色々とやりやすかったのですけれど──」
「そういう訳にはいかないよ。それではもう一つの作戦が上手くいかなくなるからね」
(え、もうひとつ?)
良かった良かった、そんな理由があったのね。そう〆ようと思っていたのに。不意打ちである。もう一つ理由があったのか。本当に凄いな、デミウルゴス版アインズ様。
「も、もう一つあったんですか!?」
「当然だろう。アインズ様がその程度のお考えしか持っていらっしゃらないはずがないだろう」
ですよね、とデミウルゴスがこちらに笑顔を向けてくる。やめて、そんなこと考えてないよ!という訳にもいかない。本当に泣けてくるほどに情けなくなってしまう。
「ほう、そちらにも気付いたのか。流石はデミウルゴスだな」
「いえいえ、アインズ様の深淵なるお考えのほんの一端に触れるので精一杯です」
仰々しくお辞儀するデミウルゴスが怖い。どれほど凄まじい存在なのだろうか。デミウルゴス版アインズ様。まさに神である。至高の存在と呼ぶにふさわしい存在と言えるだろう。俺はそんなことないというのに。
「もう一つの理由、それは──ダークエルフである二人をアインズ様から離反させられるだろうと相手に思わせること。つまり──このナザリックはアインズ様を至上とする一枚岩ではなく、ある特定の理由を持つ者たちが集まっていると思わせることにあります」
「デミウルゴス、私たちの中から離反者が出るとでも言いたいの!?」
アルベドが大きく怒気を含めてデミウルゴスに食って掛かる。それは俺も危惧している部分だ。情けない俺を知られたら一気に瓦解するのではないかといつも戦々恐々としている。今でも素晴らしきアインズ様像に出ぬ冷汗が止まらない。
「まさか。誰一人として離反する者が居ないことは確かでしょう。しかしそれを正しく理解しているのは、ここに居る者たちだけです。外から見る者、真にアインズ様を理解していない者から見れば、そこまで完璧であると理解するのは難しいでしょう。だからあえて幼い二人を使うことで、知者である皇帝はこう思ったでしょう──」
「やはり、あのダークエルフはアインズ・ウール・ゴウンの力を削ぐために行動していると見て良さそうだな、じい」
「はい。あれだけの能力を持つ双子です。恐らくはかのアンデッドと契約しているのでしょう。覇道の手伝いをする代わりに、ダークエルフの国をつくる手伝いを、と」
「ふむ、しかしアンデッドなど信用していいものか分からない。だが自分たちだけで建国するのは難しい。だから裏切られてもいいように我々に奴の力を削がせようと」
「でしょうな。でなければ自分の付いている者へ攻撃しろなどとは言わないでしょう」
今日も屋根の上で寝ているのだろうか。見えぬ双子が居るだろう、奴らのお気に入りの場所へと視線を向ける。城で最も高い位置にある屋根へ。
奴らは幼い。まあ年で言えば、最低でも私の倍は生きているだろう。しかし長く生きる者たちである。人間の年齢に照らし合わせれば十歳かそこらだ。
ただの子供。しかし恐らくはダークエルフたちの王族の子だろう。だったらこちらでも餌は出せる。
「ダークエルフの国の建国か。面白そうだとは思わんか、じい」
「とても楽しそうでございますな、陛下」
じいが嗤う。とても楽しそうに顔を歪ませて。一体どういうことを考えているのか、詳しくは分からない。しかしとても楽しい事になりそうだということくらいは分かる。
今すぐにでもリ・エスティーゼ王国へと出立したいが、皇帝であるが故にやらねばならぬ事が多すぎる。それに加えて、こちらの兵を消耗させる事無く奴の力を削ぐ方法が見つかったのだ。
あぁ、楽しくて仕方がない。しかし忙しすぎる。
「一斉に粛清すべきではなかったかな」
「ほほ。中途半端に膿を残せば、またそこから腐りますからな」
「耳に痛い話だ」
善き国にするべく行っても、ままならぬ。いっそ奴を俺が取り込んだ方が良かっただろうか。少なくともあのいけ好かない王女よりは上手く操れるだろう。しかし──
「腹に魔王を置く趣味はない」
あんな得体の知れぬ奴よりも、見目にしてもあの幼きダークエルフたちの方が懐に置いておくにはいいだろう。そう思いながら、私はワインを呷った。
「おかえり、イビルアイ。珍しいわね。あの白金の竜王<プラチナム・ドラゴンロード>に呼ばれるなんて」
まるで夢遊病患者のようにふらふらとした足取りでイビルアイが酒場に入ってきた。余程の事があったのだろうか。彼女がここまで憔悴するなど滅多にないというのに。
私の声が聞こえてないのか、何の反応を示さないままにガガーランの向かいの席に座った。あまりに雰囲気がおかしいと思ったのだろう。ティアとティナが両隣に座ってイビルアイをじぃと見つめている。
「──どうしたの、イビルアイ」
「『あれ』から言われたんだ──」
あれ──白金の竜王から何かを言われたのか。
突っ伏した彼女の付ける仮面が『カン』とテーブルを鳴らす。
「モモンさんが嘘をついてるって──少なくとも千年前辺りに──ナザリックなんて名前の国はなかったって──」
連日投稿です。ハイテンションってやつです。いい歌ですね、VORACITY。
思わず踊りたくなります。
オーバーロードの世界観に合いすぎなんですよね。凄いのです。
可愛い可愛いアインズ様です。基本ヘタレです。うちのアインズ様。
外側最強。内側最弱。それがアインズ様です。基本行き当たりばったりで何も考えてない。
でもそれじゃいけないよね、頑張るよ!って一生懸命です。可愛い!
そしてとうとう嘘ついてたのがバレました。一体イビルアイは、蒼の薔薇たちはどういう行動を取るのでしょうか。そしてツアーが彼女に言った理由とは!?
戦争の相手は一体誰なんだ!!
私の話の中で一番ごちゃごちゃしている部分です。いろいろ頭が痛くなる部分でもあります。ここを過ぎればわりとさっくり進む予定です。
さっくり進んで、終わります。予定では10章で終わりです。
黒い6章、大戦の7章、軽い話の8章。嵐の前の9章。そして真実語られる大嵐の10章って感じです。それからエピローグです。案外短いですね。今年冬前までには終わらせたいかなーって思ってます。次に書く話もありますからね!
ただ、3つあるんですよね。
このモモです!のその後のお話。オリキャラ少な目。アインズ様と彼女の子供も出てきます。
モモです!の前のお話。99%オリキャラ。あの方達が色々はっちゃける話です。
そして、キーノちゃんとモモンガさんサブキャラで、デミウルゴスとアルベドが主役(?)張る──そう、あの丸山くがね様がちらっと書かれた『もしモモンガが一人で行ったら』の現代話です。
いずれどれを書くか(読みたいか)アンケートを取ります。
どれが人気出るかなぁ──