ゼロイチ起業ノート

スタートアップ、スモールビジネスを問わずにゼロイチ起業に挑戦、成功する人を増やすことで日本において起業という選択肢を当たり前にすることが究極的な目標です。

大企業の新規事業はステルスで進めるべき理由

結構レガシーな日系大企業の新規事業部署に入社して1週間が経ちました。日系大企業で新規事業が生まれない理由についてはある程度の仮説をもって入社していましたがいくつかは想定通りで、いくつかは想定よりもよくない状況だったので今後、自分自身でどうやっていくのか考えています。

新規事業のプロセスについて入社した会社では一般的なステージゲート方式を採用しています。ステージゲート方式についてはこちらの記事を参照してください。

ステージゲート法は研究開発テーマや商品アイデア創出に始まり、多数創出されたアイデアを対象に、研究開発や事業化・商品化活動を複数の活動(ステージ)に分割し、次のステージに移行する前には評価を行う場(ゲート)を設け、そこでの評価をパスしたテーマのみを次のステージに進め、最終的に上市に至らしめるという方法です。

www.monodukuri.com

一方で使い方間違えるとあんまりよくない制度だと思っておりこんなことをつぶやきました。

実際に僕自身がこの企業の中で新規事業をやるにしても、どれだけステルスで物事を進めることができるかが大事だと思っており、その理由を整理しておきたいと思います。

事業創出経験のない上司や同僚の意見は役にたたない

事業を創っていくプロセスの中では人の意見は基本的に役にたちません。その上、自分が提供しようとしているサービスのターゲットでもなく、事業創出の経験もない上司や同僚の意見であればなおさら役にたつことはなく、害悪になるケースが多いと思っています。人間は弱い生き物なのでどうしても、上司や同僚に「いいね」と言ってもらった上で物事を進めたくなるものですが、最終ゴールが事業を創出してユーザーに価値を届けることであるならば、ターゲットユーザー以外からのアドバイスや意見を取り入れる必要はありません。

承認会議を経るごとにアイディアが丸くなる

結果が出ていない中で承認会議にかけようとするとどうしても、承認会議を通過することが目的化されてしまい、当初のサービスコンセプトが歪むケースが少なくありません。承認会議を通過させるために、部長・課長から受けた指摘を企画に反映させてそれっぽいことを盛り込もうとしてしまい、誰の役にも立たないサービス企画になっていきがちです。悲しいのは上司が指摘を反映させるように命令したわけでもないのに、担当者レベルで忖度した結果、指摘を自主的に盛り込んでしまうということが起こりやすいということです。

承認会議を経るごとに担当者の素敵な発想やアイディアが忖度の塊になり、担当者自身のやる気もそがれて計画が頓挫してしまうことがかなり発生しているように感じました。

予算がなくてもできることが多い

そもそも上司の承認を得たり、承認会議を通過させたりするのは、予算獲得のためというのが大きいと思いますが、予算がなくても検証できる仮説が非常に多いのに取り組んでいる人が少ないように思います。ユーザーインタビューも市場調査もサービスフローの設計も予算が0でも相当できます。

個人的に小さな仮説検証の話としてはザッポスが最初に「オンラインで靴を買う人はいる」という仮説を検証するために近所の靴屋で在庫商品の写真を取らせてもらい、Webに掲載して実際に売れるかどうか試してみたという話が好きでよく話しています。

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僕自身が創業して売却した会社も「就活生は企業からの都合のいい情報ではなく実際に選考に役立つ情報を求めている」という仮説をブログで検証することから始めて、実際に数字がついてきたので起業してみることにしました。 

blog.zerotoone.jp

最近は仮説検証の速度と精度が高まっていると感じており、最近リリースされたグルメアプリのDishのリリースは動画でプロトタイプを作り、ツイッターでバズったからアプリを作るという面白い経緯で始まったなと思ってみていました。

note.mu

日系大企業はこの仮説検証をするためにも、上司の承認や承認会議を通過させようとしていて効率の悪さを感じます。

予算がなくてもサイトを作れるようにするためにプログラミングを学ぶというのも選択肢の一つだと思っていて、最近では未経験の人が学ぶ環境が増えてきており身につけやすくなっていると感じています。

 

ステルスで成果が出れば承認可能性が高まる

うまくいくかどうかもわからない事業に対して、仮説検証を進めるのでもなく、調査や勉強会など無駄なインプットに時間を費やしてしまいがちなのが大企業組織というものですが、そもそもステルスで仮説が検証でき、ある程度の数字がついてくると承認会議での承認可能性が圧倒的に高くなります。

大企業とはいえ、リソースは限られており、真剣に取り組むことの出来る新規事業は多くない中で、出来るだけ成功可能性が高い事業が承認されるのは当たり前です。そして成功可能性を高く見せるには、実際に仮説検証を行い、ある程度の数字がついてきているというのは非常に大きなアドバンテージとなります。 

会社で承認されなくても自分で起業する選択肢が得られる

実際にステルスで進めて、仮説検証を行い、ある程度の数字が出たとしても会社の承認会議で否決されることも少なくないでしょう。ユーザーにニーズはあるけれどニッチな分野のため、考えた新規事業単体ではMAXの売上が3億円、営業利益で数千万円の事業にしかならず大企業内でリソースを割けないと判断されてしまうケースなどがそれです。

確かに売上3億円、営業利益数千万円だと大企業内でやるには物足りない数字かもしれませんが、個人で起業してやるには十分すぎる数字です。所属する大企業と親和性のある事業であれば最初から業務提携してくれたり、出資して応援してくれる可能性もあります。

最後に

何より、ステルスで仲間を募って試行錯誤しながら新規事業を考えるのはお仕事として新規事業をやるよりも数段楽しいものです。世界を変えるようなサービスの多くもお仕事からではなく、純粋な好奇心や楽しみの中から生まれています。純粋な好奇心や楽しさを忘れずに新規事業を続ける方法としてはステルスで進めるのが最もよいと思っており、ぜひ新規事業部署にいない人もチャレンジしてほしいと思っています。