グーグル、位置情報機能オフの利用者も追跡
ジェイン・ウェイクフィールド テクノロジー担当記者
AP通信は14日、米グーグルが位置情報機能をオフにした利用者の情報も保存していると報じた。
この問題は、スマートフォンのアンドロイド端末か米アップル社の端末で、地図アプリ「グーグルマップ」やグーグルの検索機能を使う利用者最大20億人に影響する可能性がある。
米プリンストン大学の研究者もAP通信の調査内容を確認した。調査結果を受け、米議会から強い反発の声が出ている。
グーグルは報道を受けて、同社が機能とその解除方法について、明確な説明を提供していると説明した。
調査によると、利用者の所在は、位置情報履歴機能をオフにしていても記録されているという。
AP通信が報じた位置情報使用の例は以下の通り――。
- グーグルは、利用者がグーグルマップのアプリを開いた時、利用者の居場所を示す画面を撮影し保存する
- アンドロイド端末の携帯電話にある気象情報の自動更新機能は、利用者のおおまかな居場所を狙って動作する
- 位置情報に関係することを何もしていなくても、グーグル検索は利用者がいる場所の緯度と経度を正確に示す
「かなり卑劣」
位置情報マーカーの影響を表現するため、AP通信はグーグルに保存されている位置情報を可視化した地図を作成した。この地図は、位置情報機能をオフにしたアンドロイド携帯を使っているプリンストン大学の研究者ギュネス・アチャル氏の動きを示したものだ。
アチャル氏がニューヨークのハイ・ライン・パーク、チェルシー・マーケット、ヘルズ・キッチン、セントラル・パーク、そしてハーレムを電車で移動する様子を、地図は示した。この地図はアチャル氏の自宅住所も明らかにしている。
グーグルが位置情報マーカーを保存するのを止めるには、利用者は「ウェブとアプリのアクティビティ」という名前の設定をオフにしなければならない。この設定は初期設定ではオンになっており、設定の説明文には位置情報に関する記述がない。
この設定をオフにすると、検索や他の機能を通じて生成した情報のグーグルによる保存が止まる。ただし設定を切った場合、グーグルがインターネットやアプリ上で提供する補助サービスの効果が限定的になる可能性がある。
「『ロケーション履歴』と呼ばれる設定をオフにすることで、私は自分の位置情報を追跡されたくないとグーグルに伝えれば、このインターネット界の巨人が自分の位置情報を保存するのを止められると人は思うだろう」とサイバーセキュリティ研究者のグレアム・クルーリー氏はブログに書いている。
「私からみると、『ロケーション履歴』と『ウェブとアプリのアクティビティ』の両方をオフにしない限り、グーグルが位置情報を保存し続けるというのは、かなり卑劣に思える」
AP通信の取材に対しグーグルは、「利用者の体験を促進するためのグーグルによる位置情報の利用には、ロケーション履歴、ウェブとアプリのアクティビティ、そして端末単位での位置情報サービスなどいくつかの異なる方法がある」と述べた。
「当社はこうしたツールの明確な説明を提供し、厳しく管理している。なので利用者はいつでも、ツールのオンオフを切り替えたり、自分の履歴を消去したりできる」
企業としての慣行
AP通信は調査結果を示したあと、利用者が位置情報を消去する方法を示す手引きも作成した。
民主党のマーク・ワーナー上院議員はAP通信の調査が提示した証拠を示し、「利用者の完全に妥当な期待と大きく異なる企業慣行」を持つテクノロジー企業を非難した。
民主党のフランク・パローン下院議員は「顧客プライバシーとデータ保護の包括的な立法」を求めた。
英国では、データ保護を統括する情報コミッショナー事務局(ICO)の報道官がBBCに対し「一般データ保護規則(GDPR)と2018年情報保護法の下、各組織は個人情報の使用方法について、公衆に対して開かれ、透明性を持ち、公平である法的責任がある」と述べた。
「自分の個人情報を組織がどう扱っているかについて懸念を持つ人は誰でも、ICOに連絡することができる」
テクノロジー企業に対しては、プライバシー設定やプライバシー情報の使用方法について明らかにしていないとの批判が集まっている。ノルウェー消費者委員会は6月、プライバシーを守るための設定が隠されたり曖昧にされたりしているとの報告書を発表した。
位置情報を用いた広告は、マーケターに大きな可能性をもたらしている。リサーチ会社のBIA/Kelseyによると、米企業は2018年、携帯電話向けのターゲティング広告に最大206億ドル(約2兆3000億円)を支出する見通し。
グーグルは2014年以降、利用者の位置取り情報を基盤にしたオンライン広告の有効性を広告主が計測できるようにしている。この機能は位置情報履歴に依拠している。