2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、政府がサマータイムの導入を検討し始めたと報じられている。
今年は記録的な猛暑が続いているが、今回の一件はオリンピック・イヤーに屋外競技者やその観戦者などが熱中症などにかからないようにと、東京オリンピック組織委員会が求めていると言われている。
現時点で伝わっているのは、時限立法により2019~2020年の6~8月に時計時刻を2時間繰り上げるサマータイムとのことだが、恒久化も視野に入れているという。
既にこの件を巡っては賛否両論が繰り広げられている。従来からこの導入に積極的だった省庁の1つが環境省だ。環境省は省エネ効果を中心に数々のメリットがあることを謳っている。その中には「健康の増進」という言葉も踊る。
しかし、医学的見地からは必ずしも良い効果ばかりではないことが、海外の研究結果から報告されている。
そもそもサマータイムは1916年にイギリスで導入されたのが始まりだ。現在、北米、ヨーロッパを中心に導入されており、春先から秋口にかけて時計を1時間早める。
海外では「デイライト・セイビング・タイム(Daylight Saving Time)」という名称で呼ばれていることが多く、略称「DST」はサマータイム期に導入国を旅行すると、時刻表示脇に付記されているのを見かけることもある。
もともとこの制度は日照時間の長い時期に日中時間をより有効に活用して電気使用などを抑えることを目的に導入された。というのもヨーロッパなどの高緯度地域では、日照時間の季節変動が大きい。
例えば最初にサマータイムを導入したイギリスの首都ロンドンでは、夏至の日照時間は17時間弱に対し、冬至の日照時間は8時間弱。実に年間で最大9時間も日照時間差がある。その意味では地域特性上、これらの地域では必ずしも不合理な制度とは言えない。ちなみに東京でこの差は5時間程度に収まる。
その日本では、第二次世界大戦後の連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で夏時刻法が制定され、1948年からサマータイム制度を実施したものの、寝不足や長時間労働など、労働強化につながるとの世論の反発を受けて1951年に中止。夏時刻法もサンフランシスコ講和条約による主権回復後の52年4月に廃止された。