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アナログフィッシュ×呂布カルマ 小さな声でも人に刺さる言葉

アナログフィッシュ×呂布カルマ 小さな声でも人に刺さる言葉

Analogfish『Still Life』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:小田部伶 編集:久野剛士、山元翔一

大きな声や大きな力が、半ば強引に物事の方向性を変えていく恐ろしさを目の当たりにすることが多くなった。そんな時代に生まれたAnalogfish(アナログフィッシュ)の3年ぶりとなるフルアルバム『Still Life』には、動き続ける時代と、少しずつ様相を変えていく街の景色を背景に、小さな声で囁き合う恋人同士の姿が刻まれている。

そんな本作のクロージングトラック“Pinfu”で客演を務めているのが、ラッパーの呂布カルマだ。彼の冷静ながら獰猛なラップは、アルバムの着地点としてだけではなく、私たちを明日へと蹴り上げる強力な推進力として響いてくる。「さぁ、進むしかないだろう。だってまだ、生きているんだから」。アルバムの最後、呂布のラップは、そう私たちに語りかけてくるようだ。

今回、アナログフィッシュの下岡晃と呂布カルマの対談が実現。作品やパフォーマンスにおける雄弁さとは裏腹に、実際は寡黙で大きな声を挙げるタイプではない2人の理性的なリリシストの対談。とても濃密なものとなった。

呂布くんは完全に外側から相手をぶっ叩いていて、すごくいいなと思いました。(下岡)

—呂布さんはアナログフィッシュのファンであることをインタビューやご自身のTwitterなどで公言されていましたよね。アナログフィッシュの音楽とは、どのように出会ったのでしょうか?

呂布:大学生の頃、ラジオから“Hello”(2004年、『Hello Hello Hello』収録)が流れてきて好きになりましたね。うちの嫁さんもすごく好きなんですよ。ヒップホップは嫁さんと一緒にはあまり聴けないんですけど(笑)、アナログフィッシュは一緒に聴いていますね。

詞が特に好きなんですよね。いま、日本のロックを熱心に聴きまくっているわけではないですけど、勉強になるというか、「深いなあ」と思うのは、ダントツでアナログフィッシュなんです。“Hello”は、<今 世界と音信不通で上の空>っていうフレーズから始まるんですけど、曲が進んでいくと<今 世界と交信中で上の空>っていうフレーズが出てきて。「結局、上の空なのか……」っていう(笑)。

下岡:ははははは(笑)。交信しても、結局ね。

左から:下岡晃(アナログフィッシュ)、呂布カルマ
左から:下岡晃(アナログフィッシュ)、呂布カルマ

—アナログフィッシュは、これまでも田我流さんややけのはらさんなどのラッパーの方々と作品で共演されていますけど、呂布さんにはどのような印象を抱いていますか?

下岡:呂布くんは、オリジナルですよね。結局、僕はオリジナルで、自立した人が好きなんだと思うんです。呂布くんの存在はMCバトルで知ったんですけど、呂布くんのバトルを見ていると、相手の人がすごく狭い世界やルールの中で、一生懸命言葉を選んでいるように感じるんですよね。逆に、呂布くんは完全に外側から相手をぶっ叩いているような感じがする。そこがすごくいいなと思いました。

呂布:……恐縮です。

下岡:呂布くんのバトルを見て思い出すのは、有吉(弘行)さんなんですよ。彼があんまりテレビに出ていなかった頃に、『アメトーーク!』(テレビ朝日)で品川庄司の品川(祐)さんに、「おしゃべりクソ野郎」って言ったじゃないですか。

下岡晃(アナログフィッシュ)

—その後の有吉さんの「あだ名」ブームの着火点ですね(笑)。

下岡:そうそう。いまはもう普通だけど、当時のバラエティーで「おしゃべりクソ野郎」なんて、態度としてなかったと思うんですよ。でも、有吉さんはそれをやった。あの「外側からぶっ叩いた」感っていうのが、僕は痛快で好きだったんです。呂布くんには、あれと似たものを感じるんだよね。面白くて、魅力的だなって思う。ただ呂布くんって、作品を聴くとすごくマナーがあるんだよね。

呂布:そうっすね(笑)。作品に関していうと、オーソドックスなことをやっているつもりなんです。「オリジナルなことをやろう」とか、あまり考えたことがなくて。俺がラップを始めた頃は、このスタイルでやっている人たちは多かったと思うんですよ。2000年代初頭の日本語ラップ的なスタイル、というか。でも、どんどんと周りが変わっていく中で、そのスタイルをしつこくやっている俺が、最近のラッパーとはちょっと違って見えている、という感じだと思うんです。いい感じで、埋もれていたものが浮いてきたのかな、と。

呂布カルマ

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リリース情報

Analogfish『Still Life』
Analogfish
『Still Life』(CD)

2018年7月25日(水)発売
価格:2,916円(税込)
PECF-1157

1. Copy & Paste
2. With You (Get It On)
3. Sophisticated Love
4. Dig Me?
5. 静物 / Still Life
6. Ring
7. Uiyo
8. Time
9. Pinfu

イベント情報

『Tour “Still Life”』

2018年9月9日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET
料金:前売3,800円(ドリンク別) 当日未定

2018年9月15日(土)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
料金:前売3,800円(ドリンク別) 当日未定

2018年9月17日(月・祝)
会場:大阪府 心斎橋 Music Club JANUS
料金:前売3,800円(ドリンク別) 当日未定

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プロフィール

Analogfish
Analogfish(あなろぐふぃっしゅ)

3ピースにして2ボーカル+1コーラス。唯一無比のハーモニーを響かせる希代のロックバンド。下岡晃(Gt,Vo)が問題提起する社会的なリリックと佐々木健太郎(B, Vo.)の情熱的な人間賛歌が見事に交差する楽曲群が魅力。それを支える扇の要、斉藤州一郎(Dr,Cho)のしなやかでファットなプレイと垢抜けたコーラスワークが高い評価を得る。共演ミュージシャンはもとより、映画、小説、漫画等、各界クリエイターからのラブコールは止みません。

呂布カルマ(りょふかるま)

日本のヒップホップMC。愛知県名古屋市を拠点に活動している。JET CITY PEOPLE代表。大阪芸術大学建築学科出身の父親のもとに生まれ、小学校時代を大阪府で過ごす。中学校に入ってから愛知県名古屋市に引っ越し、中部大学の附属高校を卒業後、名古屋芸術大学美術学部に入学。大学を卒業後も、フリーターを続けながら小学生からの夢であったプロの漫画家を目指すも挫折し、本格的にラップを始める。2018年5月9日に、5枚目となる最新アルバム『SUPERSALT』をリリースした。

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