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【社説】

携帯「4年縛り」 公共性を見つめ直せ

 携帯電話大手二社が「四年縛り」と呼ばれる契約について是正に動き始めた。国が法に触れる可能性を指摘し、対処した形だ。利用者に寄り添った販売姿勢とは言い難く、各社は猛省すべきだろう。

 「四年縛り」はKDDI(au)とソフトバンクが昨年から開始した。スマホ代を四年間の分割で支払うが二年後に買い替えれば残りの代金が免除になる。事実上半額で新機種を買えるが、同じ四年契約の料金プランを続けるのが条件だ。他社へ変える場合は残金を払う必要が生じる。

 「残金を払わず最新の機種が手に入る」。「四年縛り」は、こうした利用者の心理を巧みに刺激しながら他社への流出を抑え込み、通信料金で利益を上げる戦略といえる。

 これに対し、公正取引委員会は六月下旬に出した報告書で、消費者が契約会社を選ぶ権利を奪いかねず、独占禁止法に触れる恐れがあるとした。同じ料金プランへ誘導することで、他社への乗り換えを困難にしているとの指摘だ。

 もう一つ「二年縛り」という手法も問題視されていた。契約から二年後の更新時期や手続き方法が不明瞭で、余計な費用がかかってしまう恐れのある契約だ。こちらは総務省が六月、最大手のNTTドコモも含めて是正を促し、三社とも見直しに着手した。

 共通しているのは、いずれも国の機関から厳しく促され、ようやく動きだした点だ。大手各社はスマホの普及で大きな利益を得ている。一方で、三社のシェア争いは熾烈(しれつ)だ。契約者のつなぎとめは携帯会社にとって至上命令。その結果、利用者を軽視したとみられても仕方がないプラン合戦が繰り広げられている構図だ。

 公取委が行った二千人対象の調査によると、自身の料金体系や契約期間を「正確に把握している」は約19%、「何となく把握」は約62%だった。利用者が複雑なプランをあいまいに理解し契約してしまっている実態が浮かび上がる。

 スマホなど携帯電話は暮らしに欠かせない「生活基盤型製品」の代表格だ。災害などで命を守る機器でもある。

 今、携帯各社は高齢世代を念頭に「スマホ初心者」に販路を広げる戦略にも出ている。スマホが苦手な高齢者は多い。より利用者に分かりやすくもっと安価な料金体系に変えられないか。市場を独占する大手各社は、自らの企業活動が強い公共性を帯びていることを改めて見つめ直すべきだ。  

 

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