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【社説】

LGBT施策 自民は真剣に取り組め

 重い腰を上げた末に形だけの指導か。自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が、月刊誌への寄稿で性的少数者(LGBT)を「生産性がない」と表現した問題。党は多様性を認め合う社会実現へ、やる気を示せ。

 杉田氏は七月十八日発売の月刊誌「新潮45」に寄稿し、LGBTの人たちを「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と論評。支援のための税金投入に疑問を呈した。

 「生産性」によって人間の価値をはかるなど、人権侵害の差別的発想であることは言をまたない。

 これに対し、自民党は当初「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観もある」(二階俊博幹事長)と静観を決め込んだが、一日付の党のホームページで「問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」とし、杉田氏に注意するよう指導したと発表した。

 一議員の寄稿に党見解を公表するのは異例だ。

 七月下旬からは、党本部前ほか各地でLGBT当事者らの抗議集会が相次ぎ、杉田氏が昨年の衆院選で公認を得たのも、安倍晋三首相の影響とみられるようになって対応に追い込まれたのだろう。

 しかしこの党見解、寄稿のどこに理解や配慮の欠如があったとしているのかさっぱり分からない。

 本人に謝罪、撤回を求めず、党としての謝罪もない。指導は、党幹部が口頭で行い、本人は「真摯(しんし)に受け止め、今後研さんに努めていく」とコメントしたのみ。具体的な処分もなく「問題としました」と、形だけ取り繕ったにすぎないのではないか。

 寄稿への批判が高まる中、同じ自民党の谷川とむ衆院議員は、同性愛は「趣味みたいなもの」と発言。二階氏は再び「大げさに騒がない方がいい」と指摘した。首相も杉田氏の問題に一般論のような感想を述べるにとどまっている。

 自民党は、直近の参院選、衆院選で、LGBTへの理解増進法の議員立法の制定を公約しているが、議員個々の人権感覚は鈍いままではないのか。今回の党見解では、そうした公約を基に「性的な多様性を受容する社会の実現」を目指すと強調した。ならば、議員立法の実現に向けて具体的な議論を急ぐのが筋だ。

 事実上始まっている総裁選はその好機と言える。石破茂元幹事長ら首相(党総裁)の対抗馬からは、杉田氏への執行部の対応を疑問視する声が出ている。首相は真剣に受け止めるべきである。

 

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