流動化する国際情勢の中で、隣人同士の日ロはどう共存していくか-。これが両国の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の底に流れる大テーマだった。建設的な関係を築くため相互理解を深めたい。
協議では北朝鮮の非核化に向けて緊密に連携することや、安全保障に関する高官協議を進めることを確認した。
米朝協議の行方によっては北東アジア情勢に地殻変動が起きる。北朝鮮の核・ミサイル問題で対応がともに出遅れた日ロの間には、対北制裁をめぐって温度差はあるものの、地域の安定のために積極的に協力してほしい。
日ロの2プラス2は二〇一三年に初めて行われた。翌一四年のロシアのクリミア併合による米ロ関係悪化のあおりを受けて途絶えていたが、昨年三月に復活した。
三回目となる今回は米国の後退に伴って国際秩序が揺らぐ中で行われた。ロシアの方が開催に積極的だったという。
五月に通算四期目がスタートしたプーチン政権は、対米関係の修復が最大の外交課題だ。その裏返しとして、対欧米関係の悪化に伴って高じた中国への傾斜を直し、バランスのとれた外交姿勢に修正することも必要である。
このためロシアはインド、ベトナムという中国周辺の国との関係強化を図っている。日本との安保対話に意欲的なのはこうした文脈からだ。
一方の日本も外交や安全保障面でこれまでのように米国に頼るのは許されない時代になった。
ところが周辺環境はお寒いかぎりだ。韓国とはことあるごとに歴史問題が頭をもたげる。対中関係も改善基調にあるもののなお低調だ。北朝鮮とは国交もない。
不確実性の増す世界にあっては、手持ちの外交カードをできるだけ増やすべきである。
九月に極東ウラジオストクで開かれる経済フォーラムに、プーチン大統領の招待を受けて北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が出席することが取りざたされている。
実現すれば米国を除く日中ロ南北朝鮮の五カ国首脳が顔をそろえる可能性も出てくる。北東アジア情勢の変化ぶりを印象付ける会合になろう。
日ロともに時代のうねりに取り残されるわけにはいかない。協力できるところは協力して乗り切っていきたい。
両国が関係を進展させるためには、北方領土問題の解決が不可欠なのは言うまでもない。
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