原子力委員会の新たなプルトニウム利用指針。減らすと言いつつ、増やすこともやめないという。今やプルトニウムは極めて危険な「ごみ」にすぎない。まずは増やさないようにしなければ。
日本は今、国の内外に四十七トン強のプルトニウムを持っている。
プルトニウムは原爆の主原料。理論上、長崎型原爆六千発を製造できる量である。
核拡散への懸念を示す国際社会の圧力を背景に、原子力委員会は、現在のプルトニウム保有量を「上限」として、減らしていく方針を打ち出した。
しかし、その方法や期限、数値目標など具体的な道筋は示していない。プルトニウムの“所有者”である各電力事業者に委ねた形になっている。というよりも、現状では示すことができないというのが、本音ではないのだろうか。
新指針では、核兵器転用の疑惑を持たれないよう、原発で使用済みの核燃料を「消費する分だけ再処理」することにもなっている。
再処理とは、プルトニウムを取り出して発電用の“燃料”として再利用することだ。すなわち、「減らす」と言いつつ「増やす」ことになる、核燃料サイクル事業は堅持するというのである。
プルトニウムを加工した混合酸化物(MOX)燃料を特殊な原子炉で増殖させて無限のエネルギーを得る-。核燃料サイクルは、この国の長年の夢だった。ところが、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉によって、計画はすでに挫折した。プルトニウムは貴重なエネルギー資源ではなく、極めてやっかいなお荷物になったのだ。
今のところプルトニウムを減らすには、海外で再処理されたMOX燃料を原発で少しずつ燃やしていくしか手だてがない。「プルサーマル発電」だ。
プルサーマルで処分できるプルトニウムは、原発一基につき年に約〇・五トン。現在四基が稼働中。もし青森県六ケ所村の再処理工場が軌道に乗れば、毎年八トンずつのプルトニウムが生産される。今のままなら毎年六トンずつ増える計算だ。
政府は二十基近いプルサーマル原発を稼働させたいと考える。しかし、MOX燃料による放射線リスクの高さなどを不安視する指摘も多く、政府の思惑通りに進む見込みは薄い。
核燃料サイクルとプルトニウム削減は両立しない。まずは再処理事業を断念し、少なくとも増やさないようにすることが、「削減」への大前提なのである。
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