日銀が金融政策の修正を決めたのは副作用を軽減して異次元緩和を続けるためだという。だが物価を上げる効果がないことは明らかだ。ショックが大きすぎてやめるにやめられないのが実態だろう。
五年以上続けても一向に物価上昇目標は達成できない。むしろ長期化する超低金利が金融機関の経営や年金資産の運用に看過できないほどの悪影響を及ぼしている。
年八十兆円をめどとする国債買い入れや年約六兆円の上場投資信託(ETF)購入はマーケットの価格形成を歪(ゆが)め、市場機能はほとんどマヒに近い状態に陥っている。
日銀はこうした副作用への批判にさらされ「長期金利は経済物価情勢に応じて上下にある程度変動しうる」と0・2%までの上振れを容認することを決めた。一方で金融緩和の長期継続を約束する新たな緩和手法を導入する。
だが副作用に配慮しつつ緩和も強化という説明はやはり苦しい。そんな八方美人が通用するのか。
日銀はこの日、物価上昇率の見通しを二〇一八~二〇年度までそれぞれ引き下げ、2%の物価上昇の達成が二一年度以降に後ずれすることを認めた。緩和の開始から実に八年以上かかることになる。
こうした物価上昇が鈍いにもかかわらず金利操作を据え置く方針に対し、政策委員二人が反対した。これは緩和が不十分なことに不満を抱くリフレ派委員だろう。
日銀は四月に、これまで「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で示してきた物価上昇2%の達成時期を明示しない方針に転じた。この時点で、リフレ派の主張する短期決戦をあきらめ、持久戦路線に軸足を移した。
これ以上の緩和強化は百害あって一利なし、とまではいわないが、効果は乏しく弊害が大きすぎるとわかったはずだ。いつまでもリフレ派に配慮すべきではない。
リーマン・ショックから十年経過し、米国は金融政策を正常化しつつある。欧州も年内に緩和路線から脱する見通しだ。だが、日銀の異常な政策は長期化し、出口はまったく見えない。
それは異次元緩和をやめれば、人為的に抑えてきた金利が上昇。景気を支えてきた円安株高が反転するおそれが強いほか、財政赤字の利払い費が一気に膨らみかねない。日銀の国債購入は実質的に禁じ手の財政支援でもあった。
もはややめるにやめられない状態だが、リスクを少しでも抑えるべく正常化に手を付けるべきだ。
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