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【社説】

自転車の事故 潜む危険を理解しよう

 自転車は手軽な乗り物だが、事故は起き続けている。利用法を誤ると人を傷つける凶器にもなる。便利さにばかり目を向けず、潜む危険をしっかり理解して安全に快適に利用したい。

 まず申し上げたいのは、自転車は道路交通法上は「軽車両」、つまり車の仲間だ。決して歩行者の延長にある乗り物ではない。

 その思いを強くしたのは元大学生が起こした事故の裁判である。

 検察によると、被告の元大学生は両手を自転車のハンドルに添え右手に飲み物、左手にスマートフォンを持ち、左耳にイヤホンをしていた。少なくとも五~六秒はスマホを見て脇見運転をしていたという。高齢者と衝突し二日後に死亡させてしまった。元大学生は重過失致死罪に問われ検察は禁錮二年を求刑した。

 自転車の速度は一般的に時速十五キロ程度といわれる。仮にそうだとすると二十メートル近く前を見ないで移動していたことになる。事故を起こせば自分だけでなく相手方も死傷させる乗り物だということを再認識してほしい。

 自転車が関係する事故は減少傾向だが、それでも二〇一七年には九万件を超えている。自転車の通行区分は車道の左側だ。信号や標識を守り夜間はライトを点灯する。携帯電話やイヤホンの使用、二人乗り、傘差し運転は違反行為になる。安全運転を心掛けることは自動車運転と同じである。

 自転車の事故でも五千万円を超えるような高額な損害賠償を認める判決が度々出ている。自転車向けの保険は種類が増えた。こうした知識の周知も進めたい。

 事故防止には車と歩行者と通行する空間を分けることだ。自転車の活用が盛んなスウェーデンのストックホルムでは三者を分離した通行帯を設けている。ヘルメット姿の自転車利用者が快適に走っている。

 最近は東京都内を自転車で巡る外国人観光客が増えた。道の狭い日本でも、見直せるところはあるはずだし、見直すべきである。自転車レーンは少しずつ増えてきている。 

 

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