2018-08-10

ディベート界でのサマータイム議論

最近になって急にサマータイムの議論が行われているが、ディベートの世界でもたびたびサマータイム制が論題で扱われてきた。

ディベートの世界というのは、自分の知る限りでは大きく2つに分けられる。

中学生高校生が教育目的で行う教室ディベート、その全国大会のディベート甲子園と

大学生、社会人が競技として行う、日本ディベート協会(JDA), 全日本ディベート連盟(CODA)主催のディベート大会だ。

毎年各組織で1つの論題が決められ、全国のディベーターはその論題を数ヶ月かけてリサーチし、立論を作り、試合を繰り返して議論を深め、大会に臨む。

論題は、まだ世間で実施されておらず、肯定側・否定側どちらになっても勝てるような議論が拮抗しているものが選ばれる。

サマータイム論題は、ディベート甲子園の中学生大会で、1996年、1999年の2度採用された。

サマータイム論題は、比較的とっつきやすい論題なので、初心者向けの練習に取り扱うことも多い。

こういう考え方で論題が決まるのだが、実際に数ヶ月試合を繰り返し立論が煮詰まってくると、この論題は否定側に有利と判明することがある。

ディベートの試合は資料を非常に重視し、ある論点で勝てなかったら次の試合までに勝てる資料を見つけてくるのだが、世の中にあるあらゆる資料をあたった結果、この論点で勝つのは厳しいと分かってくる。

一方が有利すぎると、「大会で勝ったチーム、みんなくじで否定側を引いたチームじゃねーか」ということもたまにある。

一方的に有利でない論題は繰り返し大会の論題に採用されている。よく採用されるのは、死刑廃止、安楽死、道州制、解雇規制緩和など。

逆に原発廃止はかつてよく行われてきたが、東日本大震災以来、採用されなくなった。

本題に戻ると、サマータイム制の論題は否定側が有利な論題ということが分かってきて採用されなくなった論題である。

肯定側のメリットは

①省エネ

サマータイム→照明の点灯時間が減る→電気消費が低減

②経済活動活性化

サマータイム→明るい状態で活動できる時間が増える→余暇の活動活性化→経済よくなる

③犯罪減少

サマータイム→暗い時間が減る→犯罪減少

否定側のデメリットは

①労働強化

サマータイム→日本の労働価値観の中では明るいからもっと働こうとなる→労働時間増大→余暇減る、幸福度減少など

②社会的コスト

ソフトウェア改修費、航空ダイヤ調整、農業漁業酪農への影響調査費など

③睡眠環境悪化

年2回の覚醒タイミング変化→事故が増える

短期的もしくは長期的な睡眠時間減少→生産性減少、事故増える



ディベートの試合では、反論に応じてその事象が発生するかしないかがジャッジによって判断されるが、

メリット①:発生するが、縦長の日本の日照時間には北海道と沖縄で1時間程度差があり、逆に朝が暗いことがあるので削られる

メリット②:立証が難しく、大きく発生するとはあまり認められない

メリット③:ある程度発生するが、1時間分なので減少率はあまり大きくない

デメリット①:立証は難しいが、過去の廃止理由と同じなので発生しやすい。労働価値観が昔とどれだけ変わったかの議論で発生量は削られる

デメリット②:かなりの割合で発生する。

デメリット③:海外の事例や研究データがあるのでそこそこ発生する

という感じになり、否定側が強い傾向になってしまう。「まだ起こってない未来」を予測するゲームなので、海外の事例があると大きな根拠になる。もちろん前提条件が違うのでそこを考慮すべきだが。

なぜこれを書いたかというと、サマータイム制に反対するのは分かるが、ブコメが感情的すぎて理性的に考察できてないから。

最近は反対するものに対して「頭おかしい」みたいな人格攻撃および感情的なブコメばかり見かけるので、もっと理性的に議論してほしい。

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