トランプ氏を非難の元側近、解雇時の録音公開 トランプ氏らしき声

Republican presidential nominee Donald Trump and Omarosa Manigault attend a church service, in Detroit, Michigan, US, September 3 2016 Image copyright Reuters
Image caption 大統領選中のトランプ氏とマニゴールト・ニューマン氏(2016年9月3日、ミシガン州デトロイト)

ドナルド・トランプ米大統領の元側近で昨年12月に解任が発表された女性が13日、解任時に録音したというトランプ氏やジョン・ケリー首席補佐官との会話音声を公表した。ホワイトハウスの広報担当だったオマローサ・マニゴールト・ニューマン氏は、トランプ氏が人種差別発言を繰り返していたなどの内容の回顧録を近く発表する予定で、米国で話題になっている。

米NBCが放送した音声では、トランプ氏のものと思える男性の声が聞こえる。マニゴールト・ニューマン氏が前日に解雇されたと知り、驚き、「誰も教えてくれなかった」と言っている。

トランプ氏の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏は、ホワイトハウス内で内々の会話を録音したのは違法行為に当たる可能性があると話している。

マニゴールト・ニューマン氏は、トランプ氏がかつて司会していたリアリティ番組「ジ・アプレンティス」の出場者だった。2016年米大統領選でアフリカ系米国人対応についてトランプ陣営の顧問を務めた後、政権の広報部に職を得ていた。

トランプ氏が黒人を罵倒する中傷発言を繰り返していたなど、暴露的な回顧録を出版すると明らかになって以来、米国ではその内容や、政府職員としての守秘義務の問題などが話題になっている。ホワイトハウスは、解雇に不満を抱く元職員による回顧録など信憑性(しんぴょうせい)に乏しいとあしらっている。

それに対してマニゴールト・ニューマン氏は、「ケリー将軍(首席補佐官のこと)が私のところに来て、皆さん、私に辞めてもらいたがってるって」と答える。

「いや。誰も何も教えてくれなかった」と男性は答える。「大きな組織なのは知ってるだろうけど、僕は知らなかった。知らなかったんだ。ひどいな。君がいなくなるなんて、まったく嬉しくない」と男性は続けている。

この会話録音が公表されたことを受けて、トランプ氏は13日、マニゴールト・ニューマン氏についてツイッターで批判を重ねた。

「いかれたオマローサはアプレンティスで3回もクビになった。今回のクビが今度こそこれで最後だ。今までもまったく駄目だったし、今後も絶対ものにならない。目に涙を浮かべて雇ってくれと懇願してきたから、いいよと言ったんだ。ホワイトハウスのみんな、彼女が大嫌いだった。きついのに、頭が良くない。めったに会わなかったが……」

「……ひどい話をよく耳にした。他人に意地悪で、いつも会議や仕事に欠席していた。ケリー将軍が(首席補佐官に)なると、彼女は駄目だし、面倒なことにしかならないと言ってきた。できれば何とかして欲しいと僕は言ったんだ。彼女は僕を褒めまくってたから、クビになるまでは!」

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なぜ解雇されたのか

昨年12月13日に解任が発表された当時、米メディアはマニゴールト・ニューマン氏が同僚の不興を買ったことが原因のようだと伝えていた。

今回公表された音声で、ケリー首席補佐官と思われる男性の声が、公用車を私用で使うなど「重大な規律上の問題」を解雇理由に挙げている。

「重大な法的問題について違反があった。君は法的措置の対象になる可能性がある。それはこちらとしておそらく、押さえられるが」と男性は話す。

さらに、ケリー補佐官と思われる男性は「もしここで友好的に別れられるなら(中略)君はホワイトハウスで過ごした1年を、国に奉仕した時間だったと振り返り、自分の評判に何の問題もない状態で先へ進むことができる」と語りかけている。

トランプ大統領は承知しているのかとマニゴールト・ニューマン氏が尋ねると、男性は「その話はやめよう。取引できることではない」と答えた。

会話の公表について、マニゴールト・ニューマン氏は「このホワイトハウスではみんな嘘をつく」ので、「自分を守るため」にしたことだと弁明している。

しかし、トランプ氏はツイッターで、「いかれたオマローサはとっくに、秘密保持契約に完全に署名している!」と書いた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、政権は昨年4月の時点でホワイトハウス高官たちに秘密保持契約の署名を求めた。ただし、違反行為について罰則の規程はなかったという。

バラク・オバマ前大統領の下で倫理担当法律顧問だったノーム・アイゼン弁護士は同紙に対して、政府の機密情報に関することではない、政府職員の日常業務について発言・回想を禁止することは、表現の自由を侵害する恐れがあると指摘した。

回顧録の内容は

「Unhinged(たがが外れて)」という題の回顧録で特に問題視されている内容は、トランプ氏が「ジ・アプレンティス」の収録最中に、黒人に対する「N」で始まる侮蔑言葉を使った証拠の録音があるというものだ。

マニゴールト・ニューマン氏は、トランプ氏が使うのを自分が耳にしたとも録音を聞いたとも書いていない。しかし11日には米公共ラジオNPRに対して、「自分もテープを聞いた」と話した。

ホワイトハウスは、トランプ氏が侮蔑表現を使ったという主張は事実ではないと否定している。

マニゴールト・ニューマン氏は本の中で、かつては親しくしていたトランプ氏に対する自分の見方が変わったと書いている。解任時には、トランプ氏は人種差別などしないと述べていたが、本の中では、トランプ氏は人種差別主義者だと批判している。

<解説> 出たり入ったり――タラ・マケルビーBBCホワイトハウス担当記者

「いかれたオマローサ」と大統領は呼ぶ。確かに一理ある。彼女が暴露する内容は非常に面白いし、大統領にとっては赤面ものだ。

本やテレビ出演を通じてマニゴールト・ニューマン氏は、親密な会話を暴露し、ありきたりとは程遠い政権の裏側を露呈させた。しかし、重大な問題行動を明るみに出したわけではなく、今後もそういうことにはならないだろう。

彼女は広報担当の部署に務め、アフリカ系米国人コミュニティーとの関係を推進する担当だった。トップレベルの機密を知り得る立場にはなかった。

ホワイトハウスを取材していると、色々なイベントにふらりと出たり入ったりするのが見えた。退屈になったら途中でいなくなった。友達を連れてホワイトハウスの中を案内して回り、施設内の食堂でコーヒーを一緒に飲んでいる姿も目にした。

リアリティー番組の出演者による暴露は、リアリティー番組のスターが彩るウェストウィング(ホワイトハウス執務棟)らしい騒ぎになったが、このエピソードはそろそろ終わるはずだ。

(英語記事 Omarosa Manigault Newman: Former aide taped 'Trump phone call'

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