「4月生まれ有利」「翌3月生まれ不利」は本当か

親や先生は「生まれ月の格差」に注意が必要だ

体格差を含め、生まれ月の格差を見過ごしてはならない(写真:H.Kuwagaki/PIXTA)
教育経済学者・中室牧子慶應大学准教授監修による新連載「経済学で読み解く現代社会のリアル」では、気鋭の経済学者(と博士課程に在籍する学生)が、最新の研究成果をわかりやすく解説していきます(連載の趣旨はこちらをお読みください)。記念すべき第1回は、中室准教授が「生まれ月の格差」について検証します。

プロスポーツ選手に4月生まれが多いという話を聞いたことはないだろうか。

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同じ学年に属していても、4月生まれと翌年3月生まれでは、生まれ月に約1年の差がある。特に学齢が小さい間は1年の差はとてつもなく大きい。体格はもちろんのこと、情緒や精神面での発達にも大きな差があるだろうことは想像に難くない。

同じ学年での実年齢の違いは「相対年齢」と呼ばれる。たとえば日本では、4月生まれの生徒は相対年齢が高く、翌年3月生まれの生徒は相対年齢が低いということになる。

この相対年齢の高低がスポーツでのパフォーマンスや学力に与える影響については、多くの研究が行われてきた。イギリスとオランダのサッカー選手には相対年齢が高い者が多いことを示す研究は有名だ[1]。そして、世界中の国々のプロスポーツ選手について、同様の傾向が認められている。

入学時期を1年遅らせる制度がある

スポーツ以上に歴史が古いのが、学力に対する影響を調べた研究である。

1990年代後半から2000年代初にかけて行われた教育心理学の研究蓄積を見ると、学力に対する生まれ月の影響は、幼児期や小学校の低学年では大きいものの、その格差は徐々に縮小し、小学校の高学年には消滅するという結論のものが多い(詳しくはStipek, 2002のサーベイが詳しい[2])。

もしこれが正しいのなら、相対年齢による格差は自然と消滅するので、さほど重要な問題ではないということになる。

ところが、この解釈には慎重になる必要がある。

なぜなら、学力に対する生まれ月の影響が観察されているほとんどの先進諸国では、幼稚園や小学校の入学時期を1年遅らせるという選択をすることが可能な制度があるからだ。

たとえばアメリカでは、この制度を「Academic Redshirting」と呼ぶ。

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  • NO NAME6272aab6d21d
    そりゃそうでしょ
    負ければつまらない
    つまらないと努力したくない
    弱い立場の人間はいじめられる
    まあ日本なら「当人の努力不足」で終わりでしょう
    up39
    down1
    2018/8/14 06:47
  • NO NAME6bfbe98b1ce3
    オーストラリアで子育てしたが、この記事にあるredshirt と同じく、生まれ月が遅い子は親が配慮して小学校入学を一年遅らせて良いという制度があり、元々小柄だった息子の入学を遅らせた。周囲の同じく遅い月生まれの子を持つ親に聞くと、「生まれ月が遅いとクラスの後ろからついていくことになり、リーダーシップが取りにくく性格やその後の人生に影響する」という話を聞いた。結果、息子は最初から学年の中で優秀という評価を受け、本人の自信に繋がって大学までトントン拍子に優秀な成績で通した。
    日本には「早く子どもが学校に入って早く卒業出来る方が有利」であるかのように思う親もいるが(またたまに早生まれでも優秀な子もいるが)、他の先進国では「一年のうちの子の成長差」とその心理的影響が一般的に認知されているのである。(しかも私が子育てしていた20年以上前から)
    up36
    down2
    2018/8/14 07:23
  • NO NAME516643e33ed9
    日本の制度に文句を言ってもすぐには変わらないから、今一番大事なのは「親が子どもに自信を持たせてあげる」ことでしょうね。
    親が早生まれの子に対して「どうして他の子と同じようにできないの!?」「他の子はできてえらいねー」なんて言ったりしたらもう最悪だね。(できなくて当然なのにね!)
    できる部分にちゃんと着目してあげて、「できる喜び」を植え付けてあげたら自然と他のところも伸びていくんじゃないかな?ま、根拠は無いけど。
    up21
    down0
    2018/8/14 08:54
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