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【スポーツ】

[高校野球]浦和学院、因縁の仙台育英にリベンジ 好投・渡辺、ドラ1候補に浮上

2018年8月13日 紙面から

仙台育英戦に先発し6イニング無失点の好投を見せた浦和学院・渡辺=甲子園で(中西祥子撮影)

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◇浦和学院9-0仙台育英

 100回目の夏、出場56校が出そろった大トリに、大谷級を期待させる怪腕が登場した。5年ぶり出場の浦和学院(南埼玉)で先発した渡辺勇太朗投手(3年)が、6イニングを無失点、7奪三振の好投。春先の肘の不安から復調途上ながら、自己最速タイの149キロもマーク。スカウト陣は素材の高さをあらためて評価し、ドラフト1位候補に浮上した。試合も9-0で仙台育英(宮城)に完勝。5年前の初戦敗退の雪辱を果たした。

 100回記念大会の出場56校の大トリを飾るのにふさわしい投球だった。埼玉の怪腕が、今秋ドラフト戦線の1位候補に浮上した。浦和学院の190センチ右腕・渡辺が自己最速タイの149キロを甲子園のスコアボードにたたき出し、6イニングを3安打無失点、7三振を奪った。「きょうはすごく球が走っていたし、緊張もなく、自分の投球ができました。甲子園で勝った喜びがあります」と声を弾ませた。

 先発を告げられたのは前日。「自分かな、と予想していたし、いつでもいけるよう準備していた」。1回、2死球で1死一、三塁となるとエンジン全開。4、5番を、140キロ台後半の直球連発で追い込み、スライダーで連続三振。4万1000人をどよめかせた。各球団のスカウトもうならせ、中日の中田宗男アマスカウトディレクターは「スケールの大きさは大会ナンバーワン。大谷(エンゼルス)のような球を投げる可能性がある」と将来性を高く評価した。

 スムーズな体重移動やリリースまでのゆったりとした動きなど、大谷のフォームを研究して取り入れている。昨秋にキャッチボールでまねをしてみると、投げやすく感じたのがきっかけ。コーチにも体の軸の使い方が大谷と同じタイプであることを指摘され、「こういう投手にならないと」と言い聞かされてきた。昨秋からつけている背番号11は、日本ハム時代の大谷と同じで「選べるわけじゃなくて偶然ですけど、気に入っています」と話した。

 春夏連覇がかかった5年前の夏は仙台育英に初戦敗退した。その雪辱をしたかった。1年冬に厳しい練習がつらくなり、寮を離れて約1カ月、実家から通学していた時期もあったが、温かく見守ってくれたチームメートやスタッフのおかげで戻れた。今春は肘の不安もあって出遅れたが、南埼玉大会で復活。県勢初の夏優勝は昨年の花咲徳栄に先を越されたが、目標はチーム初の夏の頂点。「そのためなら自分は完投しなくてもいい。これからも1球目から全力で飛ばしていきたい」。力強くチームを引っ張る覚悟を込めた。 (平野梓)

◆メジャースカウトも絶賛「数少ないメジャー候補」

 浦和学院の渡辺の評価は上昇。広島の苑田スカウト統括部長は「ものが違う。この大会のナンバーワン投手。投げ方に無理がない」と絶賛。ヤクルトの橿渕スカウトグループデスクは「強いストレートを投げる。カウント、打者を見ながら投げている。ドラフト上位もあるでしょう」と評価した。メジャーのスカウトも注目。アストロズの大慈弥環太平洋担当部長は「ボールを動かせるのはメジャー向き。毎年3、4人しかいない数少ないメジャー候補」とほれ直した。

<渡辺勇太朗(わたなべ・ゆうたろう)> 2000(平成12)年9月21日生まれ、埼玉県羽生市出身の17歳。190センチ、90キロ、右投げ右打ち。小学1年時に軟式の手子林ブラックスで野球を始め、羽生東中では軟式野球部に所属。浦和学院入学後は1年秋からベンチ入り。最速149キロ。

◆森監督感涙「OB含めこの戦いにかける思いは強かった」

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 因縁の仙台育英に完勝した浦和学院の森士(おさむ)監督(54)は「選手が頑張ってくれた。OBを含め、この戦いにかける思いは強かった」と感涙にむせんだ。左腕エース小島(現早大)を擁して春夏連覇を狙った5年前の夏、1回戦で10-11でサヨナラ負けした。あれ以来の夏に、同じ初戦で雪辱できた。

 大阪入りしてから練習場に向かうバスの中で“あの試合”の映像を選手に見せた。「組み合わせが決まって、あの代から信じてますというLINEがあった」と森監督。先輩たちの思いを伝えたかった。8回にソロ本塁打の蛭間主将は「森先生は5年前の戦いは関係ないと言っていた。リベンジの気持ちはありましたが、意識しつつも目の前の試合に集中しました」と胸を張った。

 5年前は、奮闘していた小島が9回に左足がつって限界に達し、降板となってチームも力尽きた。「ボクシングに例えると、タオルを投げたセコンド」と森監督。この夏は、エース渡辺を6回までで降板させて4投手で継投した。5年の間に変わったチームに手応えも感じたに違いない。

<5年前の浦和学院-仙台育英> 2013年春のセンバツを制した浦和学院は、春夏連覇を目指した同年夏の甲子園1回戦で仙台育英と対戦。1回表に1点を先制するも、センバツV投手の2年生左腕・小島和哉がその裏、6点を取られ逆転を許す。打線は3回に8点奪い逆転し、4回に1点追加するも、小島は足がつるようになった6回に4点取られ10-10の同点に。その後両チーム無得点で迎えた9回裏、小島はまた足がつり、限界に。9回2死一塁で降板し、リリーフした3年生の山口がサヨナラ二塁打を打たれ、10-11で敗戦。小島の182球熱投は実らなかった。

 

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