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【社説】

夏休みの君たちへ 見上げてごらん 夜の火星を

 きょうは夏休みの君たちに特に読んでほしい。夜空がいつもと違うよ。火星が十五年ぶりの大接近。もうすぐ皆既月食も。外に出て宇宙を見てみないか。

 小惑星探査機「はやぶさ」が真っ赤に燃えながらオーストラリアの夜空に帰ってきてから八年。後継機「はやぶさ2」は今、小惑星「りゅうぐう」の上空二万メートルを飛んでいます。旅客機の飛行高度が一万メートル余なので、約二倍です。

 地球からは高性能の望遠鏡でも点にしか見えませんが、はやぶさ2は、そろばんの玉のような星であることを明らかにしました。予想外だったそうです。実際に行かなければ分かりません。

◆りゅうぐう

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は随時、最新の画像などを発表し、誰でもホームページで見られます。クレーターのようなくぼ地、大きな岩塊の写真も。今後、着陸地点三カ所を選んで試料を採取。二〇二〇年に帰還する計画です。

 りゅうぐうは炭素質コンドライトと呼ばれ、多くの有機物を含むのが特徴です。画像を見ると、表面が暗く写っていて、炭素が多いことがうかがえます。

 炭素質コンドライトは、太陽系が誕生したころからほとんど変化していないと考えられており、地球誕生時の研究に役立ちます。地表に落ちてきた隕石(いんせき)の中にもあるそうです。隕石からはアミノ酸、脂肪酸が見つかっています。地球の生命誕生に必要な物質の一部は、宇宙からの贈り物では、という説もあります。

 米航空宇宙局(NASA)も探査機「オシリス・レックス」を打ち上げていて、「ベンヌ」という小惑星に年内には到着する計画です。小惑星のタイプは違いますが、生命誕生の謎に迫ることなどを狙っています。初代はやぶさの経験からすれば、ここからが本番です。二機ともうまくいくといいですね。

◆月食と大接近

 月のショータイムもあります。

 二十八日午前二時十三分から月食が始まります。といっても、月食らしさが分かるのは部分食が始まる三時二十四分からでしょう。月の近くには大接近中の火星があります。

 皆既月食は四時三十分から。残念ながら、空はもう明るいでしょう。かなり低くなっているので、見通しのよい場所でないと、見えないかもしれません。

 火星は三十一日に十五年ぶりという大接近があります。火星との距離は約五千七百六十万キロ。午後七時ごろに南東の空に上り、真夜中には南の空に達します。明るくて、ちょっと赤い星を探してみてください。

 人類が月に初めて足跡を記したのは、一九六九年七月二十日。米国のアポロ11号でした。

 今からは想像しにくいのですが、米国は宇宙開発分野で旧ソ連に後れを取っていました。五七年に旧ソ連が人工衛星スプートニクの打ち上げに成功すると、スプートニク・ショックという言葉が生まれたほどでした。六一年に大統領に就任したケネディが「六〇年代末までに月に人を送る」と演説。ケネディは暗殺されましたが、夢は実現しました。来年は五十年の節目の年です。

 トランプ米大統領は昨年十二月、再び、月に人類を送る計画を承認して「最終的に火星やその先の世界へ向かう基盤をつくる」と宣言しました。米宇宙ベンチャーのスペースXは現時点で世界最大の打ち上げ能力を持つロケット、ファルコンヘビーの打ち上げに今年二月、成功しました。人類が火星に立つ日が来るのでしょうか。

 NASAのチーフ・サイエンティスト、ジェームズ・グリーン博士は米大使館主催の講演会で「技術はある。必要なのはやる気だ」と自信をのぞかせました。ただし、月は米国単独で成し遂げましたが、火星は国際協力、民間企業の協力が必要だと言います。

 欧州宇宙機関(ESA)やロシアはすでに参加の意向を表明しています。中国は今、月探査計画を進めています。経済力も技術力もある中国が協力すれば、実現の可能性は大きく膨らむでしょう。

 国際宇宙ステーション(ISS)では存在感のある日本ですが、残念ながら火星探査に参加するかどうかはまだ、決めていません。

◆日本人飛行士

 宇宙飛行士の油井亀美也さんは星がきれいな長野県川上村の出身。小学生の頃から何時間も星を見ていたそうです。先日、講演会でISSでは「米ロの宇宙飛行士は仲が良かった」と話していました。宇宙は友好を育てる場所でもあり、自らは「月に行きたい」と語っていました。人類の夢は広がります。君たちも挑むかもしれない謎解きです。

 

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