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【社説】

日米原子力協定 特権は維持できない

 日米原子力協定が自動延長された。ただし今後は双方の通告だけで破棄可能。日本に例外的に許されてきた、核燃料を再処理しプルトニウムを「平和利用」できる特権は、瀬戸際に追い詰められた。

 再処理とは、原発で使用済みの核燃料から、プルトニウムを取り出し、加工して、再び燃料にすることを言う。核燃料の使い回し。いわゆる核燃料サイクルだ。

 一九八八年の改定日米原子力協定により、日本は米国から使用済み核燃料の再処理を容認された。

 プルトニウムは、原爆の基になる核物質だ。

 核拡散防止条約(NPT)は、米国など“戦勝五カ国”にしか、核兵器の保有を認めていない。

 日本は米国との協定に基づいて、核兵器の製造にもつながりかねない再処理事業を容認された唯一の例外で、言うまでもなく「平和利用」が大前提だ。ところが「平和利用」の“核心”であるべき核燃料サイクルが、今やずたずたになっている。

 プルトニウムの使い道であるはずの高速増殖原型炉「もんじゅ」が、うち続くトラブルのため、一昨年末廃炉が決まった。日仏共同による後継炉の開発計画は大幅に縮小、先送り。すでに二兆円超の国費をつぎ込んだ青森県六ケ所村の再処理工場も、技術的な不具合で操業開始の延期が続いている。核燃料サイクル計画は、すでに破綻しているというしかない。

 そうなると、英仏に委託するなどして、すでに取り出し済みのプルトニウムが宙に浮く。長崎型原爆六千発分に相当する量だ。

 延長と言っても期限はなく、どちらかが事前に通告すれば、協定は破棄できる。米国も、日本の現状に対する懸念を強めており、特権を維持できるかどうかは流動的になってきた。

 日本政府は今月改定したエネルギー基本計画に突如、プルトニウムの「削減に取り組む」と明記した。通常の原子炉で使用する「プルサーマル発電」によるしかないが、相当量の再稼働が必要になり、実効性は覚束(おぼつか)ない。

 この期に及んで日本として選択すべきは明らかだ。核燃料サイクルを正式に断念し、余剰プルトニウムと使用済み核燃料の安全な処分に全力を挙げるべきである。

 リサイクル不能であれば、使用済み核燃料も、危険なただのごみ、それらの行き場がない以上、原発の再稼働を急ぎ、いたずらに排出を増やすことも許されない。

 

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