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【社説】

神鋼書類送検 一罰百戒と受け止めよ

 アルミや銅製品でデータ改ざんを続けていた神戸製鋼所が書類送検された。有力企業の相次ぐ品質不正は日本のものづくりへの信頼を揺るがしている。一部の不正とはいえ一罰百戒と受け止めたい。

 三菱マテリアル、東レの関連会社など素材メーカーからSUBARU(スバル)、日産自動車という自動車メーカーまで、日本を代表する企業で不正が止まらない。

 今回、法人としての神鋼が不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで書類送検され、刑事責任を問われることになったのは、長期間、不正を放置した悪質性にある。一部の不正は四十年以上前の一九七〇年代から続き、取締役など役員が知っていたにもかかわらず、対策をとらなかった組織のあり方が問題視された。

 ところが、神鋼に対する捜査が続く最中に、日産で排ガスや燃費の測定データの改ざんが明らかになる。

 同社は昨年九月、無資格の従業員による完成車の検査が発覚し、西川広人社長が再発防止を約束していた。スバルでも無資格検査やデータ改ざんが行われており、不正を繰り返す企業のルール軽視の根深さに驚かされる。

 背景には何があるのか。新興国との激しい競争、効率化とコスト削減、不正などを指摘しにくい組織の体質、経営者の意識などさまざまな課題が指摘されてきた。

 神鋼の書類送検が転換点となることを期待したいが、不正が止まらないなら、データ改ざんや自動車検査制度の見直しなど関連ルール、罰則の厳格化が必要となろう。

 神鋼の製品は米ボーイング社なども含め内外の六百社以上に出荷されており、米司法省も捜査している。自動車はもちろん、国際ブランドでもある日本製品への信頼を失いかねない深刻な状況が続いている。

 神鋼の場合、国内で起訴され有罪になっても、三億円以下の罰金にとどまる。しかし米国では巨額の損害賠償請求訴訟など、会社の存続を揺るがしかねないリスクがあることを経営者は肝に銘じてほしい。

 人工知能(AI)が柱になる第四次産業革命の緒戦で、日本企業は米国のグーグルやアマゾンなどに事実上、敗れた。次の焦点はデータと機械の連携に移る。

 日本の強みであるものづくり、高い品質をおろそかにする体質を改めなければ、次代の展望も失ってしまうだろう。

 

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