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【社説】

米ロ首脳会談 霧はますます深まった

 米ロ両国が国際的な課題で協力することに異論はない。十六日の首脳会談の結果だ。だがトランプ米大統領が「ロシアゲート」の疑惑を晴らさない限り、その協調姿勢を額面通りには受け取れない。

 「プーチン氏はロシアではないと言った。私もロシアがやったとする理由はまったく見当たらない」

 トランプ氏は会談後の共同会見で、ロシアが二〇一六年の米大統領選に介入したことを否定した。自国の司法当局の捜査結果よりもプーチン氏の肩を持つ姿勢は異様である。

 トランプ氏は会談前にもツイッターに「長年にわたるわれわれの愚行によって米ロ関係は最悪となった。今は魔女狩りによってだ」と書き込んだ。

 魔女狩りとはモラー特別検察官が指揮するロシアゲート捜査を指す。このツイートにロシア外務省はすかさず「その通りだ」と同調した。

 ロシアは虚偽情報の流布や選挙介入などによって自由主義陣営の分断と民主制度の弱体化を狙っている、と西側は警戒を強める。

 そのさなかにトランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を引っかき回し、深い亀裂を生じさせた。それで喜ぶのはもちろんロシアだ。

 米ロ首脳会談の結果は米国で険しい反応を引き起こした。オバマ政権時代に中央情報局(CIA)長官を務めたブレナン氏は「背信以外のなにものでもない。トランプ氏は完全にプーチン氏の言いなりだ」と非難した。

 情報機関の元トップから大統領が公然と裏切り者呼ばわりされる事態はショックだ。

 ロシアゲートをめぐっては、米ロ首脳会談目前にモラー氏がロシア情報部員十二人を起訴した。会談直後にはワシントン在住のロシア人女性が訴追された。トランプ氏と司法当局の「暗闘」という見方は多い。

 ロシアによる大統領選介入にトランプ陣営が共謀したかどうかが捜査の焦点の一つだ。事実なら由々しき事態である。トランプ氏は真相解明に向けて捜査に全面的に協力する必要がある。自身の事情聴取にも率先して応じるべきだ。

 「米ロの建設的対話は世界の平和と安定に新たな道を開く機会を与える」と共同会見で強調したトランプ氏。もっともな主張だが、その道に立ち込める黒い霧を晴らす責任を自覚してほしい。

 

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