森友・加計問題をこのまま幕引きさせるのか。行政の自浄能力が失われた中、国権の最高機関である国会の責任は極めて重い。国民また国会をだまし続けた責任を追及し、真相究明を果たすべきだ。
一連の森友問題をめぐっては、国有地の大幅な値引き売却に対する背任や決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成などで財務省幹部ら三十八人が告発された。
しかし、大阪地検特捜部は五月末に嫌疑不十分や嫌疑なしで全員を不起訴とした。
財務省が六月初めに公表した調査報告では、当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)・前国税庁長官が「政治家名が記載された文書を外に出すべきではない」と発言し改ざんを主導▽安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した国会答弁を契機に、森友側との交渉記録を廃棄した-と佐川氏に責任を押し付けた。
佐川氏がなぜ改ざんしたのかという核心については「そこが分かれば苦労しない」(麻生太郎財務相)と述べ、まるでひとごとのような態度で終わらせてしまった。
不起訴処分への不満から検察審査会への審査申し立てが相次ぎ、検察判断への期待は残っている。
とはいえ国会こそが率先して真相究明に臨むべきである。何より佐川氏の虚偽答弁により国会は一年余りもだまされ続けた当事者なのである。
立憲民主党は、三月の衆参両院予算委での佐川氏の証人喚問に虚偽証言があったとして議院証言法違反で告発することへの協力を自民党側に求めた。告発には予算委の出席者の三分の二の賛成が必要で、事実上自民党が採否を握る。
しかし、同党の森山裕国対委員長は「佐川氏の人権に関わる話だ」と告発に後ろ向きである。
また、加計学園の加計孝太郎理事長が先月の会見で国会への招致について「お待ちしています」と答えたにもかかわらず、森山氏は「必要ない」と一蹴した。
各種世論調査で森友・加計問題の真相究明を望む声は大多数を占めるが、そうした国民の思いになぜ背を向け続けるのか。強大な国政調査権を死蔵させ、解明を妨げる自民党の姿勢は国会の権威をおとしめるものだ。
国民の財産である国有地を九割引きで売り払っても、公文書を改ざんしたり国会で虚偽答弁をしても、ほとんど咎(とが)を受けない。これではモラルなき退廃した社会に陥りかねない。
政権を握る自民党にその危機感がないことこそが危機である。
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