これがヘボことクロスズメバチ
岐阜県恵那市串原では毎年11月のはじめに「ヘボ祭り」という奇妙な名前のイベントが催されているという。
なんでも「ヘボ」とはクロスズメバチとういうハチの一種を指す地方名であり、古くからこの地方では食用に供されてきたのだそうだ。ヘボの収穫期に行われるこの行事ではヘボを使用した料理を楽しめるだけでなく、各地の腕自慢たちがこの日のために育ててきた蜂の巣の大きさを競うコンテストも見ることができるという。これはぜひ行ってみたい。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。
前の記事:「巨大!オオウナギ!!」 人気記事:「猫はキウイで酔っぱらうか」 実は去年も…実を言うと僕は昨年もこのイベントに参加しようと岐阜を訪れていた。
しかし、駅から会場へ向かう途中で、土地勘もないくせに近道をしようと山に入りプチ遭難してしまい、なんとか会場にたどり着いたときにはすでに祭りは終わっていたのだった。 遭難中に飲んだ川の水が美味かった。あと、野生のシカとリスに会えたのでそれはそれでまあ楽しかった。
ようやくたどり着いたときにはもう会場はきれいに片付いていた。欲を出さずに地道に歩いていれば間に合ったのかもしれない。ああ、これが後の祭りというやつか。
そんなこともあって、今年こそは何としても参加してやりたいという強い思いがあったのだ。
携帯のナビに従おう事前に調べたところ、ヘボ祭りの開会は午前10時で、昼過ぎには全プログラムが終了。閉会後速やかに片付けという段取りで、祭りと名がつく割には短時間で切り上げられてしまうことがわかった。
そんなわけで今年もやって来ました。会場最寄りの明智駅。
絶対に開会式から参加してやろうと、勢い込んで始発電車で最寄り駅までやって来た。このとき午前7時半である。
しかし、駅を降りてすぐにひとつの問題に気づく。駅から会場までのバスが10時過ぎまで出ていないのだ。これは開会式には間に合わない。 やはり昨年に引き続いて会場まで徒歩で向かうことに。まあそれでも2時間半もあれば十分間に合うだろう。 駅前は整備されていてスーパーなども立ち並んでいる。
しかし、駅を離れるにつれ、だんだんと緑があふれ、建築物も見当たらなくなってくる。
ここまでの道のりは昨年と同じである。だが、今年は同じ過ちは繰り返さない。万全を期して、会場に到着するまで携帯電話のナビ機能を使うのだ。これでもう山の中に入って迷うことはない!…と思っていた。
妙な形の柿を見つけてはしゃいでみたり。
道端で見つけた虫の写真を撮影してみたり。
余裕である。ナビ機能のおかげで昨年のトラウマは完全に抑えこむことができた。楽しい旅になってきたぞ。
へー、クマとか出るんすか。それマジでヤベーっすね。
熊注意の看板を見ても、「むしろちょっと会ってみたいな」とか野生をなめた考えを持つほどに余裕をこいていた。
しかしナビ通りに歩き始めて一時間半がたった頃、ようやく異変に気づき始める。 えっ…。ナビさん、こんな道進むんですか…?もう絶対車とか通れない道ですよね…。
何かがおかしい。どんどん道が険しくなっていく。民家すら見当たらない。耳を澄ましても車の排気音も聞こえない。
それでも頼りの携帯のナビはこの道で正しいと言ってはばからない。 ナビさんがそう言うのならそうなのだろう。科学の力はすごいのだ。 ナビ「このまま直進です。」えええええええ。
絶対間違ってるよこのナビ!もはや道が無いじゃないか!
古い道のデータが登録されていたのだろうか。詳しい事情はわからないが、これ以上このナビが役に立たないことはよくわかった。 ああ、直進してやるさ。さて、どうしたものか。もうかなりの距離の山道を歩いてきた。いまさら大きな道まで引き返したらいよいよ二年連続でヘボ祭りに間に合わなくなってしまう。これは困った。
冷静に携帯電話の画面に表示された地図を見ると、確かにこのまま山中を直進すれば、理屈の上では会場に通じる道路に出られるようだ。…やるしかないでしょう。 おりゃああああああ!!道なき急斜面を一気に下る。
まずい!分かりきっていたことだけどこれは人間が歩く場所じゃない!
林の中は急勾配の斜面になっており、倒木が散乱していて足場が恐ろしく悪い。その上やけに土壌の湿度が高く、苔むしているため足元がやたらと滑りやすいのだ。 やっぱり引き返そうかな…と振り返るとこの有り様。文字通りもう後には引けない。
いまさらになって先程見た熊出没注意の看板が恐ろしくなってくる。こんなところで熊に出くわしたら絶対逃げられないぞ…。
熊の恐怖に怯えながら、猿のように両手を使いつつ山を下ること一時間。 道だー!助かったー!
本気で「助かった」と思った。これではまるで遭難じゃないか。結局、昨年と大して変わらない道中になってしまった。
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