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近代法3原則
May-29,2011
近代法とは、民法第3条1項「私権の享有は、出生に始まる」とあるように、身分や国家権力から人間を解放し人間の自由な意思を法の根源におき、個人の自由な活動を最高の理想としている。
§1 所有権絶対の原則
市民の所有権は国家といえども尊重しなければならず、国家権力がこの自由を侵害してはならない。つまり、所有権者がほかの全ての者を排除して、自分の自由な意思にのみ基づいて好きなように目的物を支配できることが、最高度に保障されているという原則である。それにより、人は安んじて土地なり建物なり自己の支配するものに資本を投下することができたが、何ものにも拘束されることなく所有権の行使ができると確信し、他人に損害を与えても権利の行使であるがゆえに正しいと考えるようになった。その結果、資本主義経済の発展にともない、公害を見れば分かるように、所有権の行使が所有権者以外の人々に深刻な被害を及ぼすようになったのである。そこから所有権の絶対性に対して批判や反省がなされ、所有権も公共の福祉の範囲内であれば認めることにし、それに反するような行使は許されず(民法第1条)、国民は自由及び権利は公共福祉のために利用する責任を負う(憲法第12条)ものとし、財政権は公共福祉に適合するように法律で定める(憲法第29条1項)という考え方に修正された。もともと民法第206条で、所有者の自由は「法令の制限内において」であったが、近代法初期の考えでは、あくまでも自由が原則であって制限は例外的に「法律」または「命令」によってのみ課することができると考えられていた。しかし、現在では、所有権とははじめから社会公共の立場からの制限があり、その枠内においてのみ僅かな自由が認められるのである。
§2 契約自由の原則
契約するかしないか、誰を相手とするか、いかなる内容とするか、どのような契約方式とするか等について、当事者間で自由に定めることができるとし、経済上の自由競争主義に国家は介入すべきではないという考えが契約自由の原則である。法律行為の中で契約が最重要の役割を果たすことから、法律行為自由の原則ともいえる。この考え方は、人は皆等しく合理的な判断をもっているということを前提にしているので、そのような人間を自由に放任しておけば、社会は調和あるものになると考えられた。その結果、原則のもとで自由に経済活動をしたことにより、資本主義社会は異常な進展をみせたが、どんな競争にも勝つ人は少なく、社会に富める者と貧しき者との対立を生むに至り、貧しき者は富める者の意図するところに従うか拒否するかという意味の自由しかない状態陥ったのである。そこで、国家は社会不安を取り除き、人間の実質的平等をはかるために契約の自由に干渉し、当事者間の交渉力を対等にする方策である団体交渉権(憲法第28条、労働組合法第1・6・7条)、労働基準法、借地法・借家法など、契約内容が他方の犠牲において一方のみに有利にならないように多くの制約を加えた。
§3 過失責任の原則
経済上の自由競争や所有権の自由な行使は、必然的に人に損害を与える。この損害をすべて賠償させたのではこれらの原則は無意味になるので、加害者に何らかの責められるべき事情、つまり過失がなければ損害賠償を負わなくてよいという考えが過失責任の原則である。換言すれば、自分が万全の注意を尽くして活動していれば、いくら他人に損害を与えたとしても損害賠償責任を負わされることはないのである。しかし過失責任の原則は近代の資本主義経済活動の発展には大いに貢献したが、高速度交通機関や危険な機械・企業設備の発展に伴い、経済的強者の弱者に対する優位を助長し、被害者の保護に欠けるものとなった。なぜなら、このような事業活動は過失がなくともある程度まで必然的に過失が発生するものであり、被害者が損害賠償を求めようとしても過失を立証することが難易だからである。このような状態の打開策として、法律上責任が認められる場合には、被害者は責任者に対して損害賠償を請求することができる無過失責任の理論が展開された。例えば、特別法では自動車による人身事故被害者の救済ための自動車損害賠償保障法、民法では責任無能力者の監督義務者および代理監督者の責任(714条)、被用者に対する使用者および監督者の責任(715条)、動物の所有者の責任(718条の)、工作物の所有者の責任(718条)など、過失の要件を緩和し無過失責任論を強化することにより、被害者保護に努めた。
最後に、上記で述べた近代法の三原則、所有権絶対の原則・契約自由の原則・過失責任の原則はいずれも後に修正されているが、この修正を反省と言うのではなく、新しい時代の原則と称するべきである。
参考文献
幾代通・遠藤浩・奥田昌道(補訂)(2006)『民法入門〔第5版〕』、有斐閣。
遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一(2002)
『民法(1)総則〔第4版増補補訂2版〕』、有斐閣。
山田卓生・河内宏・安永正昭・松久三四彦(2007)
『民法Ⅰ-総則〔第3版補訂〕』、有斐閣
§1 所有権絶対の原則
市民の所有権は国家といえども尊重しなければならず、国家権力がこの自由を侵害してはならない。つまり、所有権者がほかの全ての者を排除して、自分の自由な意思にのみ基づいて好きなように目的物を支配できることが、最高度に保障されているという原則である。それにより、人は安んじて土地なり建物なり自己の支配するものに資本を投下することができたが、何ものにも拘束されることなく所有権の行使ができると確信し、他人に損害を与えても権利の行使であるがゆえに正しいと考えるようになった。その結果、資本主義経済の発展にともない、公害を見れば分かるように、所有権の行使が所有権者以外の人々に深刻な被害を及ぼすようになったのである。そこから所有権の絶対性に対して批判や反省がなされ、所有権も公共の福祉の範囲内であれば認めることにし、それに反するような行使は許されず(民法第1条)、国民は自由及び権利は公共福祉のために利用する責任を負う(憲法第12条)ものとし、財政権は公共福祉に適合するように法律で定める(憲法第29条1項)という考え方に修正された。もともと民法第206条で、所有者の自由は「法令の制限内において」であったが、近代法初期の考えでは、あくまでも自由が原則であって制限は例外的に「法律」または「命令」によってのみ課することができると考えられていた。しかし、現在では、所有権とははじめから社会公共の立場からの制限があり、その枠内においてのみ僅かな自由が認められるのである。
§2 契約自由の原則
契約するかしないか、誰を相手とするか、いかなる内容とするか、どのような契約方式とするか等について、当事者間で自由に定めることができるとし、経済上の自由競争主義に国家は介入すべきではないという考えが契約自由の原則である。法律行為の中で契約が最重要の役割を果たすことから、法律行為自由の原則ともいえる。この考え方は、人は皆等しく合理的な判断をもっているということを前提にしているので、そのような人間を自由に放任しておけば、社会は調和あるものになると考えられた。その結果、原則のもとで自由に経済活動をしたことにより、資本主義社会は異常な進展をみせたが、どんな競争にも勝つ人は少なく、社会に富める者と貧しき者との対立を生むに至り、貧しき者は富める者の意図するところに従うか拒否するかという意味の自由しかない状態陥ったのである。そこで、国家は社会不安を取り除き、人間の実質的平等をはかるために契約の自由に干渉し、当事者間の交渉力を対等にする方策である団体交渉権(憲法第28条、労働組合法第1・6・7条)、労働基準法、借地法・借家法など、契約内容が他方の犠牲において一方のみに有利にならないように多くの制約を加えた。
§3 過失責任の原則
経済上の自由競争や所有権の自由な行使は、必然的に人に損害を与える。この損害をすべて賠償させたのではこれらの原則は無意味になるので、加害者に何らかの責められるべき事情、つまり過失がなければ損害賠償を負わなくてよいという考えが過失責任の原則である。換言すれば、自分が万全の注意を尽くして活動していれば、いくら他人に損害を与えたとしても損害賠償責任を負わされることはないのである。しかし過失責任の原則は近代の資本主義経済活動の発展には大いに貢献したが、高速度交通機関や危険な機械・企業設備の発展に伴い、経済的強者の弱者に対する優位を助長し、被害者の保護に欠けるものとなった。なぜなら、このような事業活動は過失がなくともある程度まで必然的に過失が発生するものであり、被害者が損害賠償を求めようとしても過失を立証することが難易だからである。このような状態の打開策として、法律上責任が認められる場合には、被害者は責任者に対して損害賠償を請求することができる無過失責任の理論が展開された。例えば、特別法では自動車による人身事故被害者の救済ための自動車損害賠償保障法、民法では責任無能力者の監督義務者および代理監督者の責任(714条)、被用者に対する使用者および監督者の責任(715条)、動物の所有者の責任(718条の)、工作物の所有者の責任(718条)など、過失の要件を緩和し無過失責任論を強化することにより、被害者保護に努めた。
最後に、上記で述べた近代法の三原則、所有権絶対の原則・契約自由の原則・過失責任の原則はいずれも後に修正されているが、この修正を反省と言うのではなく、新しい時代の原則と称するべきである。
参考文献
幾代通・遠藤浩・奥田昌道(補訂)(2006)『民法入門〔第5版〕』、有斐閣。
遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一(2002)
『民法(1)総則〔第4版増補補訂2版〕』、有斐閣。
山田卓生・河内宏・安永正昭・松久三四彦(2007)
『民法Ⅰ-総則〔第3版補訂〕』、有斐閣