問題多いサマータイム
今から腹時計がおかしくなりそうな議論が持ち上がっている。サマータイム導入の是非。2年後の東京五輪の暑さ対策で浮上した。ヒートアイランドの大都市で行うマラソンの過酷さを緩和する切り札として組織委員会が申し入れ、首相が検討を指示した▼各地の気温40度超えに「深刻度を認識した」と組織委。要望は2時間とされ、午前7時のスタートが実時間で午前5時に切れる。酷暑でも気温30度以下の時間帯。選手優先のアスリート・ファーストを地でいくと関係者は胸を張るのだろう▼ことはそう簡単ではない。五輪運営に利があっても、国民生活には多大な影響を及ぼす。サラリーマンなら実時間で朝の6~7時出勤ということになりかねない。睡眠時間が短くなって体に変調をきたす人が出るだろうし、システム改修に充てる費用も膨大だろう▼国民を巻き込む以上はデメリットも考慮して導入に慎重であるべきだ。そもそも夏に長い日照時間を有効活用するためサマータイムを取り入れている欧米に比べて、緯度の低い日本では夏時間がなじまないとの意見は以前からあった▼暑さ対策では見習いたい運営がある。高校野球の京都大会で、長い昼休憩を取るスペインのシエスタ文化のごとく、午前の試合後に暑さを避けて中断し、夕方から再開してナイターを含めて2試合を行った▼時計の針を早めるよりも、まずは競技時間の見直しを検討するのが筋ではないか。観戦する側が寝不足では、スポーツの祭典を楽しむどころではなくなる。(泰)
2018年8月13日 無断転載禁止