小学四年くらいの頃か、母におつかいを頼まれた。
「焼きそばのそばを買ってこい」と言われた。

で、はっきり覚えていないが、どこそこの麺がいい、と言われて、スーパーで探してみた。
それがない。
ないからしょうがなく、何も買わずに帰った。
わが家は山の上にあって、近くのスーパーやコンビニに行くのでも歩いて15分くらいかかる。
(因みに今もそうだ)
結構な時間と距離を、なしのつぶてで往復した。

「何も買ってこんかったの!?」
母にえらく怒られた。
まぁ、そのメーカーの麺がなければ、他の麺を買って帰るのが普通だろう。
だって焼きそばを作るのだから。

母は呆れて、それ以外の食材を野菜炒めのようにして、しょうがなくそれを昼食にした。


今も鮮明に覚えている記憶だが、僕はこの頃から、お使いが大の苦手だった。
所謂「ガキの使いやあらへんで!」になってしまうのだ。

その方面についての思考力が絶望的にない。
どう言えばいいのか、命令や指示の言外の意味というのか、そういうのがどうしても発想できない。
気が利かない、と言ってもいいのかも知れない。


そんな僕がアニメ業界とは言え、会社員を始めたものだから、非常に苦労した。
言われたことがこなせない。ちょっとした状況の変化に対応できない。すぐパニクった。
上司もさぞ苦労しただろう。

僕がようやく活躍するようになったのは、「もう好きにしろ」と演出にポンと放り込まれてからだ。
俺の自由にできる!となってから、やっと仕事的にも売上的にも、会社に貢献できるようになった。
しかしアニメ業界だからなし崩し的に上手くいったのであって、一般企業では絶対出世できなかったろう。

思えば吹奏楽部のいち部員として参加していた時もそうだったように思う。
指揮者や先輩の指示がどうにも解らなくて、最終的に言うこと聞かずに自由にやって、「あいつには何言っても無駄」みたいに扱われていたように思う。
僕がようやく部の一員として機能し出すのは、指揮者をやってからだ。

僕は「リーダー気質」と言えば聞こえはいいが、要は「リーダーしかできない」性分なのだろう。

過去散々揉めたのも、原因のひとつはここにあるのだろうね。
むしろ今になってようやく人の言うことが聞けるようになったかも知れない。知らんけど。