稲田朋美(衆議院議員)

 平成28年2月、当時自民党政調会長であった私は、LGBTの当事者の方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、自民党の正式な会議体として「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設置した。

 特命委員会の委員長には、古屋圭司元拉致問題担当大臣に就任いただいた。古屋委員長とは思想信条、歴史認識も近く、私は古屋委員長を、柔軟な中に信念を貫く、そして人権感覚も優れたベテラン政治家だと尊敬している。 

 かつて私と古屋委員長は人権擁護法案反対の論陣を党内でリードした仲だが、それは人権を軽視しているということでは決してない。何が「人権」なのか、という定義は難しく、「人権擁護」の名の下に他者の人権を侵害するということもある。むしろ、個別法で人権を守っていくことの方が現実的だという考えからの行動だった。

 政調会長時代には、二階俊博総務会長(当時)のご指導の下、「部落差別の解消の推進のための法律」も議員立法で成立させた。

 さかのぼると平成27年秋、自民党政調会長としてワシントンで講演した際に、LGBTのことを言及した。LGBTについて考えるきっかけは、息子の友人に当事者がいたという極めて個人的なことだが、ワシントンでLGBTの人権について言及した日本の政治家は私が初めてだろうと言われた。

 また、講演直前のことだが、サンフランシスコの慰安婦像設置にいち早く反対してくれたのは、実はLGBT団体だった。この問題が歴史認識やイデオロギー論争とは「無縁」と実感する良いきっかけとなった。

 私のことを「歴史修正主義者」「右翼」という人もいるが、まっとうな保守政治家でありたいと思っている。保守の政治というのは、個人の自由を大事にすることだ。それは当然、自分勝手を認めることではない。自分が自分らしく生きたいと思うように、他者もそのように思っている。そういった他者への思いやりや尊重を大切にしたい。

自民党の稲田朋美衆院議員(斎藤良雄撮影)
 その上で、人生100年時代の家族の在り方については、時代の変化とともにもっと柔軟なものであってよいのではないか。人々が自由にのびのびと生きられる社会、寛容な社会を実現したい。そうした風通しのよい社会こそがさまざまなイノベーションを生み、経済も成長させられるはずである。

 そのような思いから、講演では次のように述べた。

 「すべての人が平等に尊重され、自分の生き方を決めることができる社会をつくるために取り組みます。人は生まれつきさまざまな特徴を備えています。そのことを理由として、その人が社会的不利益や差別を受けることがあってはなりません。保守政治家と位置づけられる私ですが、LGBTへの偏見をなくす政策等をとるべきです」

 「自民党は日本における保守政党ですが、その思想は多様です。大切なことは、人それぞれの個性を評価し、人々がその潜在能力を完全に発揮できるように支援する社会をつくること、また一生懸命努力し成功する人を評価し、一生懸命努力しても成功しない、または成功できない人を支援する社会をつくることです」