東京ビックサイトで開催されている『コミックマーケット94』。今年もコスプレイヤーによるクオリティの高いコスプレや、時事ネタ・おもしろネタに特化した“ネタコス”が披露され賑わっているが、一方で話題に上がるのはコスプレにおける“表現の規制”である。コスプレエリアを歩いていると、過度な露出により注意を受けている人の姿も見受けられた。表現の自由に関する議論が広がりを見せるなかで、コスプレをする側の人々は事態をどう受け止めているのか。参加者たちの声を聞いてみた。
■参加者の表現を尊重するコミケ運営、しかし一部ではマナー違反も
コスプレにおいて“表現の規制”が表面化したのは、昨年夏に開催したコミケ92のとき。会場入り口付近に広がるコスプレエリアで、自転車での走行や騒音が発生し、卑わいな単語の表示を伴ったコスプレ、いわゆる“ネタコス”が行われ、会場側から注意があったのだという。
これを受けてコミケを運営するコミックマーケット準備会は「表現を守る立場を貫くコミケットとして、過度の自粛・萎縮は絶対にしてほしくない」「コスプレを“同人文化”の根幹の一つとみなし、参加者による『身体表現』として自由を尊重し、発展させていきたい」と参加者の表現を尊重することを強調したうえで、「コスプレを表現文化として発展させていく上で、見る人によって様々な解釈を伴い、異なる感情を呼び起こすことには、基本に立ち返って考えるべき時期にきている」とも表明。昨年冬のコミケ93以降は制限事項として、コスプレエリアにおいて「『下着と思われる可能性がある衣装』『公共の場所を通行する一般の方が、卑わいに感じるような言葉を掲示したり大きな音で発すること』を制限します」と宣言している。
現在開催中のコミケ94でも、下着・水着・レオタード等の衣装を着用して移動する際は、上着やマントの着用を徹底する呼び掛けがされた。しかし、なかにはルールを守らず撮影を続ける参加者たちも。過度な露出をする参加者に対し、露出部を布で覆い隠し対応する運営の姿が見られた。
■コスプレ参加者は「原作キャラに忠実でありたい」
“表現の規制”に対する参加者たちの反応は様々だ。「規制を緩めてほしい」「露出系のコスプレイヤーとそれ以外のレイヤーが一緒の場所になるのはイヤだ」などの意見もあったが、印象的だったのは「一番は皆が楽しめるコミケであってほしい」と話す20代の女性コスプレイヤーの声。「規制があるからといって、露出を減らしはしたくありません。あくまで原作のキャラに忠実でありたい。だからこそ、ルールは十分理解しています。移動時は露出部を隠す、上着を羽織るなど、各々がモラルを守る姿勢を持てれば」と話してくれた。
露出の制限がかかっている会場入り口には、元ネタが際どい露出キャラであるがゆえに「『これ本当に下着じゃないんですよね?』と運営スタッフから衣装について何度も確認され、きちんとルールに則っていると説明してきた」と話す男性がいた。男性レイヤーの露出についてはTwitterでも話題になっており、男子更衣室内にてスタッフから「男性も露出対策はキチンとしてくださいね~チェックしますから~」「最近は男性のソレ目的な不審者も居ますので~」という声掛けがあったというツイートは13000を超えるリツイートがなされている。どうやら露出に対する問題は女性に限ったことではなくなってきているようだ。
一方で数えきれないほどのコミケ参戦数を誇るという40代男性は「ルールに合わせて自分の表現を擦り合わせ、できる限りのことをやって楽しめばいい」と話す。「ネタコスは時代によって傾向が変わるもの。それに伴ってルールも変わっているんです」と男性。特に覚えていると話すのが、『キャプテン翼』が流行ったときのコミケだという。「会場内で参加者たちがポンポンとサッカーボールを蹴るので、ボールが色々なところに飛んでいってしまって。その時のコミケではサッカーボールの持ち込みが禁止されてしまったんです」と回顧。最近では、イスラム女性のコスプレも話題になっている。宗教上髪を隠さなければならないイスラム女性は、頭髪のように見えるスカーフでキャラの特徴となる髪型を作り、ルールを守りながらも工夫してコスプレを楽しんでいるという例もある。
“ルール”や“規制”と聞くと身動きが取れない印象を覚えるが、これからのコスプレにおいて大事になってくるのは、ルールのなかでどのように魅せられるかを考えることなのかもしれない。
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